121 ラブブレ?
百二十一話 ラブブレ?
授業参観に参加し、高槻さんの秘密に少しだけ触れることの出来た翌日の朝。
教室で石井さんと昨日の授業参観の内容について盛り上がっていると、少し離れた席から、一際テンションの高いヤンキー女子たちの声が聞こえてきた。
「見てゆりかー! アタシもとうとうこれ買えたんだ、ほらーー!!」
ん、なんだ? やけに嬉しそうだな。
気になり視線を向けてみると、陽キャ・佐々木さんが満面の笑みで右手を進藤さんの方へ突き出しており……手首にはめられていた銀の細いブレスレットがキラリと光る。
「え、楓も買えたんだ。 ネット?」
「そーそ、ネットー。 SNSで製作者さんと繋がれて、直接やりとりして送ってもらえたんだよねーん」
佐々木さんがおっとりした表情でその腕輪に光を翳しながらを見つめる。
あんなのがいいのか? 見た感じ安っぽそうだけど。
目を細めて凝視していると、石井さんが「あ、ラブブレみんな持ってるよね」と一言。 聞いてみると、そのリングの名前が『ラブブレ』……ここ一・二週間でかなり注目を集めている恋愛成就リングとのことだった。
あ、ラブブレスレットでラブブレ……そういうことね。
「そんなの流行ってたんだね」
「流行ってたよー。 進藤さんなんか、その中でも特に早い方だったんじゃないかな」
まったく気づかなかったぜ。
改めて周囲を見渡してみると、確かに多くの女子が手首に似たようなブレスレットをはめていることに気づく。
ちなみに石井さんは……してないのか。
意外だったので聞いてみると、石井さんは「お守りとかそういう類のものって、人から貰った方がご利益あるんだって」とのこと。
その後オレに期待の眼差しを向けてきていたってことは……
買ってくれ、そう言いたいんだな?
放課後、オレは帰りながら『ラブブレ』を検索。 するとタイミングがいいことに即日発送を受け付けていたため、石井さん、愛ちゃん、マリア、高槻さんの四人分を注文し、翌日にはすぐに届けられていたのだが……
「おー、安っぽく見えてたけど、これはこれで味があるものなのか?」
中身を確認していると、メリッサが首を傾げながらオレのところへ。 首を傾げながら『ヨッシー、何それー』とラブブレの入った梱包袋を覗き込んでくる。
「これか? これはラブブレと言ってだな、今若者の間で【恋愛成就】のご利益があるからって、大流行してるらしいんだよ」
『へー、そんなものなさそうだけどねー』
「まぁそこは個人の受け取り方次第じゃないか?」
『ていうかそれもうちょっとよく見せてー。 ヨッシーが持ってる一番端っこのそれから、なんか悪魔の気配感じるんだよねー』
「ーー……」
え?
◆◇
あれからすぐにメリッサが大鎌で叩き割ろうとしたため、オレは一旦御白の見解を聞いてみることに。
メリッサの勘違いであって欲しいと願っていたオレだったのだが、そんな願いも虚しく……
『確かに悪魔……邪悪な気配がするのう。 というよりもこんな鉄の輪を身につけているだけで恋愛成就とな? 舐めておる。 そんな波動全く感じない……かなり不快じゃな』
そういや御白って縁結びの神様だったっけ。
御白は額に怒りマークを浮かばせながらラブブレを睨みつけ、何の躊躇もなくメリッサに破壊を許可したのだった。
「ま、待ってくれって!! だったら中の悪魔だけ消してくれよ!! 結構お金かかったんだぞこれ!!」
『問答無用!! 恋愛成就なぞ、妾に宣戦布告をしたようなものじゃ!! 目に入るだけでも腹立たしいわ!!!』
御白の許可を貰ったメリッサはオレの意見など無視して大鎌を縦に振り下ろす。
「あああああああ!!! 勿体ねえええええええ!!!!」
オレが絶望しているなかリングは綺麗に縦に割れ、中から米粒ほどの黒い卵が出現……それをメリッサは追撃で切り裂いたのであった。
一つ三千円のリングが四つ……合計一万二千円がああああああああ!!!!
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