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118 波乱の授業参観①


 百十八話  波乱の授業参観!?①



 とうとうやってきたぜ、この時が。



 平日の午前中。

 オレの隣には石井さん。 二人は並んで愛ちゃんたちの通う小学校の前に立っていた。



 理由はもちろんあれだ、今日は楽しみにしていた授業参観日なのだ。



「まさか本当に学校休めて、こうして来られるなんてな」


「だね。 私がこうして来られたのも加藤くんが先に動いてくれたおかげ。 ありがとね」



 石井さんの感謝の言葉に若干照れながら視線を泳がせていると、正面玄関付近に案内地図があるのを発見。

 確かにこういうのないと学校内で迷子になっちゃうよな。 オレは石井さんと共に地図を見に向かった。

 


「愛ちゃんたちは三年生……教室、二階らしいよ。 私の弟は二年生だから……一階だ。 じゃあ加藤くん、ここから別行動だね」



 ホワイトボードに貼られた案内表を確認した石井さんは、オレに小さく手を振りながら「またね」と自身の目的の教室へと向かっていく。



「うん。 じゃあまた」



 うっし、じゃあオレも行くとするか。

 それで場所は……二階だったな。



 ぶっちゃけ愛ちゃんやマリアのクラスが何組かは調べるのを忘れていたが、見つけるのは多分簡単だろうよ。



「なんたって愛ちゃんたちの近くには確実にメリッサがいるはずだし、仮にどこかへ悪魔狩りに出かけてたとしても、愛ちゃんやマリアのような顔面偏差値の高い女の子はいないだろ」



 オレは絶対的な自信を持ちながら三年生のクラスが固まっているエリアへ。

 各教室内へ視線を向けながら歩いていると、やはりオレの想像通りだったようだ。


 すぐに有象無象の中で眩く光る『可愛いの原石』を発見。 その正体はもちろん愛ちゃんとマリアで、教壇の方へと視線を移してみると、そこには担任の高槻さんの姿もあった。



 さてと、じゃあ愛ちゃんにマリア、頑張れよ!!!



 オレが教室に足を踏み入れたと同時に授業開始のチャイムが鳴り響く。

 高槻さんは授業が始まるや否や、教室後方にいる保護者たちに視線を向けて口を開いた。



「担任の高槻ですよろしくお願い致します。 先に申し上げておくんですけど、本日数人の高校生の子が保護者としてこの小学校に来られています。 ただそこは双方の学校間で話し合いを済ませておりますので、ご理解頂きますようお願いいたします」



 おお、高槻さん。 あなたは神か?



 周囲の保護者たちが一瞬オレの方へ視線を向けたのだが、すぐに納得したかのようにその視線は再び当初向けられていた各家庭の子の方へ。 

 オレは高槻さんに小さく会釈をして、心おきなく授業参観を楽しむことにした。



 ◆◇



 授業内容は生徒が二人一組のペアを作り、粘土工作をするという何とも低学年がやりそうなもの。

 もちろん愛ちゃんとマリアはすぐに二人でペアを作り、机を正面同士合わせて工作をはじめだした。



「保護者の皆さんも、自由に回って工作過程を楽しんでくださいね」



 高槻さんの一言で、後方腕組み勢だった保護者たちが一斉に我が子の席付近へ。

 オレもすぐに愛ちゃんたちの席へと向かうと、愛ちゃんもマリアも嬉しさ半分、恥ずかしさ半分な表情でオレを見上げてきた。



「えへへ、お兄ちゃーん」


 

 愛ちゃんが緩み切った笑顔でオレに手を振る。

 そしてそんな愛ちゃんの甘えきった笑顔を皆見慣れていないのだろう。 一部の男子の顔が赤くなっていることをオレはすぐに察知した。



 なんだ小童ども。 うちの愛ちゃんは、やらんぞ。

 


 オレは特に視線の熱かった男子を見つけたので、そいつと愛ちゃんの間にあえて立つ。

 そこで愛ちゃんにもその視線を気づかれたくなかったため、愛ちゃんの注意を完璧にオレに向けることにした。

 


「きたよ愛ちゃん。 愛ちゃんは粘土で何作るの?」


「うーん、まだ決めてない。 マリアちゃんは?」


「マリアもまだ。 それよりもマリア、粘土よりも他に心配なことがある」



 マリアは粘土を無意味に丸めながら一旦周囲を見渡し、その後またオレへと視線を戻す。



「ん、どうしたマリア。 心配事ってなんだ?」



 もしかして、マリアもオレと一緒でそこらへんの男子が愛ちゃんに好意の視線を向けていることに気づいて……



「良樹が他の女の子に目がいかないかってこと」


「いかねーよ」



 あまりに愚問な質問だったためすぐに否定する。

 まぁでもあれだ、確かにオレは最近自称モテだした青春ボーイってことは理解しているぞ? でもな、流石のオレでも低学年女子……ロリに熱烈な視線を向けることはねぇよ。 



 ーー……愛ちゃんとマリア以外にはな。



 オレが全力即否定したことで安心したのか、マリアは「そう」とだけ呟き制作を再開。 丸めた粘土を小さくちぎってそれをまた丸めて……を繰り返し、マリアの目の前にはビー玉ほどの小さな粒が数個出来上がっていた。


 

「できた」


「え」



 早すぎるだろ。



 マリアの自信満々な声を聞いて、オレは粒を見ながら大きく瞬きをする。



「え、マリア……それで完成か」


「完成」


「いや、オレにはただ粘土を小さくちぎって丸めただけのものにしか見えないんだが……」



 そう言うとマリアは頬を膨らませ、一粒掴んでオレに差し出すようにして見せる。



「わからない?」


「は?」



 一体マリアのやつ……何を言ってるんだ?



 オレが力なく首を左右に振るとマリアは大きくため息。 掴んでいた粒を元の位置に戻し、それらを指差しながらこう答えたのだった。



「グミ」


「いや、分かるか!!!」



お読み頂きましてありがとうございます!!

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