117 どっちがサプライズ!?
百十七話 どっちがサプライズ!?
無事退院して、担任の送迎で優雅に家へと帰宅したオレ。
「一日とはいえ愛ちゃんたちには心配をかけてしまったことだし、今夜は豪勢にデリバリー祭りだ!!」
オレは愛ちゃんやマリアが学校から帰ってくるまでの間、いろいろなデリバリー商品を見ながら注文していく。
「オレが食べたいものは大体頼んだ。 あとは愛ちゃんたちにも聞いて……あ、そうだ、高槻さんにもリクエストがないか聞いておかないとな!!」
高槻さんにメールを打ち、その後はただひたすら愛ちゃんたちの帰りを待つ。
そしてようやく玄関の鍵が開けられる音が聞こえ、オレは口角を上げながら玄関の方へと近づいていった。
「結局愛ちゃんたちにはサプライズってことでメール送ってないからな。 ここでオレが登場したら、ビックリするだろうなぁ」
玄関の扉がゆっくりと開き、その奥から愛ちゃんとマリアの話し声が聞こえてくる。
オレはタイミングを見計らい、「おかえりー!!」と二人に声をかけようとしたのだが。
◆◇
十中八九、愛ちゃんたちが驚いて腰を抜かすと想定していたのだが、結果はオレが腰を抜かすことに。
それも仕方ないこと……なぜなら愛ちゃんやマリアの後ろには、先日の闇・愛ちゃんの時に出現していた巨大な白い獣……狛犬がいたのだから。
「ちょ、うええええええええええ!?!!?!? なんでいるんだああああああ!?!?!?」
いきなりの声に一瞬表情をこわばらせた愛ちゃんたちであったが、それはすぐに解けて笑顔に変わった。
「え、お兄ちゃん!?!?」
「良樹!!」
腰を抜かしたオレに向かって、愛ちゃんが両手を広げて飛び込んでくる。
「おおお、愛ちゃんいきなりだね」
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!!」
愛ちゃんは胸に顔を擦りつけながら、オレを連呼。
あまりにも照れ臭かったためマリアへと視線を移すと、マリアは静かにオレの隣へ。 その場でゆっくりとしゃがみ込み、小さく可愛い手でオレの人差し指を握った。
「良樹、おかえり」
「あ、あぁ。 ただいまマリア」
テンションや感情の表現は正反対なのだが、二人がどれだけ喜んで……オレを心待ちにしていてくれていたのかがすぐに分かる。
オレは改めて二人に「ただいま」を伝えると、早速本題に入ることにした。
「それで……なんで狛犬がいるんだ!!! 御白に消してもらったんじゃねーのかあ!?!?」
指を差しながらツッコミを入れるも、狛犬はオレのことなど眼中にないのか、完全にオレを無視。
しかし愛ちゃんが「こらダメでしょ、お兄ちゃんにはいい子でいないとダメだよ」と注意すると、その巨体からは似つかわしくない……弱々しい声で『クゥーーン』と鳴いた。
「え」
『申し訳ありませんでした。 基本私たち眷属は、主人の名のもと動いておりますので……。 主人に何か命令されない限りは、主人を護ることしか頭にないのです』
「な、なるほど」
ーー……狛犬も眷属っていうカテゴリーに属してたんだ。
でもなんつーか、御白の眷属とは違ってカッコいい……男のロマンが詰まってるよな。
続けて狛犬は、先ほどオレが投げかけた問いかけ……『どうしてここにいるのか』について答え始める。
その内容を要約すると、オレの生還をきっかけに元の愛ちゃんの心が『闇』の心を跳ね除けて、暴走していた『力』が沈静化。 時間と共に正常状態に戻ったとのことだった。
「正常状態……とは?」
『そのままの意味です。 龍神殿により与えられた【陰陽の力】……それが主人の思いのままに扱えるようになったということです』
「ーー……例えると、気性の悪かった犬を飼い慣らしたってことか?」
『ふむ、さすがは主人の兄上。 良き例え……その通りでございます』
「おお、おおおおおおおお!!!!!」
なんか昨日の一件で、すごい展開になってきたじゃないか!!!
完全にスッキリしたオレは、愛ちゃんたちと共にリビングへ。
今夜デリバリー祭りをすることを伝えると、二人とも大いに喜んでくれたのであった。
◆◇
「えへへ、どれにしよっかなー」
愛ちゃんがご機嫌でデリバリーサイトを眺めていると、マリアが静かにオレの隣へ。 服の袖を引っ張り小声で呟く。
「マリア、愛が元に戻ってよかった。 今朝はマリアもさっきの良樹みたいにビックリして、やっつけようとした」
「そうなのか」
「うん。 でもあの犬、強い。 マリアの力、まったく効いてなかった。 話ではみぃに力負けしてたらしいけど、あくまでそれは愛が暴走してた時の犬。 今の犬だと、みぃクラスかも」
「ーー……マジか」
もうそれって完全に力を持った巫女さんじゃないか。
巫女にシスター、神に、死神サキュバスに、狛犬……そして困った時の龍神。
どんだけうちの家、霊的なものに対して強くなっていくんだ?
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