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116 検査結果!!


 百十六話  検査結果!!



 いきなりのヤンキー女子の登場で、オレの脳は完全に真っ白に。

 しかしそれもすぐに陽キャ・佐々木さんの一言でオレは当初の目的を思い出す。



「ん、てかなんか生臭くね?」



 ーー……ハッ!!

 


「ああああ!! そうだったトイレえええええええ!!!!」



 オレはヤンキー女子三人の隙間を割って入り、少し離れたところにある男子用トイレへと全力ダッシュ。 使えなくなった下着をゴミ箱にシュートし、拭くべき箇所を拭いてスッキリした状態で病室へと戻った。



 ◆◇



「いやアタシら来た途端にトイレとかなに? 心配して損したんだけど!?」



 部屋に戻ると、いきなり陽キャ・佐々木さんがオレのお尻に軽い蹴りを入れてくる。



「あいたっ!」



 聖・進藤さんが「ちょっと楓、それは流石に退院してからにしてよ」と止めに入ろうとするも、陽キャは止まらず。 少し離れたところから眺めていた石井さんを振り返り、「ほら、石井も一緒に蹴らん!?」と、あらぬ誘いを石井さんにかける。



「え、ええ!? なんで私まで!?」


「だって石井もほら、昨日の夜寝れんかったでしょ」



 佐々木さんの言葉に石井さんは体をピクっと反応。「なんでそれを……」と自身のスマートフォンを強く握りしめながら尋ね返す。



「んなもんさ、いつもより顔が疲れてるからに決まってんじゃん。 さしづめ加藤と遅くまでメールでもしてて……嬉しくて止まらなかったってオチなんじゃないのー?」


「!」



 いやいやそんなことあるわけ……とツッコミかけたオレだったのだが、石井さんの反応はオレの想定していたものにあらず。

 目を大きく見開いたままオレへと視線を移し、目が合うや否やすぐにその視線を逸らした。



「え」

「「「え」」」



 オレとヤンキー女子三人の声が綺麗に重なる。

 


「い、石井さん?」



 もしかして今の反応……照れてるのか?



 オレの鼓動が徐々に恋愛のビートを刻んでいく。

 まさかこれってあれか? オレの事故が起爆剤になって、恋に発展したやつじゃないかアアアアア!!!!


 

 オレは勇気を出してその件を聞いてみようとしたのだが、やはりそこは『後のお楽しみ』ということなんだろうな。 検査の時間になったらしく、部屋に看護師さんが登場。 石井さん・ヤンキー女子三人に見送られながら、病室を出た。



「加藤さんのお部屋、女の子ばかり。 モテるんですねー」


「だと嬉しいんですけどね、ほんと」



 仮にそうならどれだけ幸せな毎日なのだろう。

 家では愛ちゃんにマリア、高槻さんがいて、学校では石井さんや、なんだかんだで美人のヤンキー女子。 そんなハーレムがあったなら、オレは一気にリア充街道まっしぐら間違いなしだぜ。



「うへへ」


「うん? 加藤さん? どうしたんですかニヤけちゃって」


「ああああ、なんでもないですすみません!!」



 妄想だけで興奮しかけたオレは、冷静になるべく大きく深呼吸。

 脳内をリセットさせるため、隣を歩いてくれている看護師さんや、視界に入った他の看護師さんたちに憑いていた死者の霊を強制除霊させておいた。



「今頃あの子たち、どんな話してるんでしょうね」


「ーー……」



 ぬわああああああああ!!!!

 気になるうううううう!!!!



 ◆◇



 検査の結果、オレの普段の行いが素晴らしすぎたせいか、どこも異常なし。

 医師たちから『一時は命も危うかったのに奇跡だ』と言われ、退院が確定したオレは足取り軽く病室へと戻る。



『良樹、よかったな!!』

『愛ちゃんもマリアちゃんも、お前のこと気にしてたぞ。 早く連絡してやれ!』



 嬉しい結果に浮遊霊たちも大歓喜。

 オレはいつもよりもテンション高く、「あぁそうだな! とりあえずまずは、石井さんたちに退院報告サプライズだな!」などと返しながら病室の扉を開いた。



「検査終わりました!! 結果は異常なし、今日で退院確定でーーーす!!! って……あれ?」



 結構頑張ってキャラを作ったにも関わらず、石井さんたちの反応は思っていたよりも薄め。

 思っていた反応とは違っていたため困惑していると、いきなり隣から「おい加藤」とオレを呼ぶ男性の声がした。



「ん?」



 反射的に視線を向けると、そこにいたのはまさかの担任。

 担任が腕を組みながら。オレに不気味な笑みを浮かべている。



「あれ、先生……なんで?」


「なんだ? 俺がここにいたらおかしいか?」


「そりゃあもう……だってまだこの時間、授業中ですし」


「だよな、なのにどうして石井たちはここにいるんだ?」


「え」


「聞くところによると、なんだ? 加藤、お前が寂しいから来てくれって頼んだそうじゃないか」


「ーー……は?」



 はあああああああああああああああ!?!?!?



 慌てて女子勢に視線を移すと、石井さんは小さく手を合わせ、陽キャ・佐々木さんはわざとらしく口笛を吹いている。



 犯人は……お前か佐々木いいいいいいい!!!!!



 すぐに事実を訂正しようかと口を開きかけたオレだったのだが、ここで少し前の看護師さんの言葉を思い出した。



『加藤さんのお部屋、女の子ばかり。 モテるんですねー』



 ーー……はっ!!

 そうだ、そうじゃないか!!!



 もしかしたら本当にオレは今モテていて……ここで四人を庇うことによって、更に好感度が上がっちゃうやつなんじゃないのか!?!?!



 オレが口を開きかけたことにより、女子たちの顔に若干焦りの色が浮かび上がる。 だがな、安心してくれ。 オレは今からキミたちを庇う。 だから遠慮なくオレに惚れてくれ。



 オレは胸を張り、堂々と担任に告げた。



「はい! オレが呼びました!!!」



 オレの勇姿のおかげもあり、女子四人は今回のことはお咎めなしに。

 逆にオレは後日、反省文を書かされることが確定。

 


「反省文……ですか」


「ちなみにあれだぞ。 高槻先生とのご飯を計画してくれたら、反省文はチャラにしてやるぞ」


「いや先生、既婚ですやん……」


「ただの意見交換会だ。 やましいことはないだろう」


「ーー……反省文書きます」


「え」



 うむ、反省文くらい書いてやるさ。

 目の前ではまさかのオレが庇ったことで説教を間逃れた女子たちの嬉しそうな顔。 そして帰ったら……愛ちゃんやマリアが待ってるんだ!! 文章を書くくらい、なんの苦でもねぇ!!!



「じゃあオレ、退院確定したんで今から制服に着替えます!! なのでみんな一旦ここから出ていってもらって!!」



 そう声をかけるとどうだろう、担任は「あー、まぁ分かった。 とりあえず全員家まで送ってやるから病院の外で待ってるわ」と先に部屋を出ていく。

 それに続いて石井さんたちも出ていくかと思ったのだが……なぜだろう。 四人は揃って顔を合わせており、ニヤリと微笑んだ陽キャ・佐々木さんが一歩前に出た。



「いや、別に恥ずかしくないっしょ着替えくらい。 荷物持ってやるからさっさと着替えなよ」



 黒沢さんがベッドの近くに畳んであった制服を見つけると、それを手に取り「ほい」とベッドの上に広げる。



「え」


「なに? もしかして恥ずかしいん?」


「そ、それはもちろん……」


「冗談はいいって。 加藤はブラとかしてないっしょー? ほら、急げー」


「ーー……」



 そういうことか。 みんなオレに惚れてるから、オレの着替え姿が見たいってことだな。

 


 オレは黒沢さんの言葉の裏の意味を理解。

 じゃあ満足いくまで見せてやるぜと、勢いよく入院着をパージした……のだが。



「「え」」

「ぶふっ」

「ひゃあっ!」



 そう、オレは完全に忘れていたのだ。

 クシャミをして、下着を捨ててしまっていたことを。



 女子勢の瞳に、元気よく鼻を左右に振る動物が映る。

 そいつは自身を認知してもらえて嬉しかったのだろうな。 鼻を高く上げて喜びを表現していた。



お読みいただきましてありがとうございます!!

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[一言] そこでそそりたってくしゃみしないと・・・(
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