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108 覚醒④


 百八話  覚醒④



 処置の妨げになるからと、マリアは看護師さんたちにより病室の外へと出される。

 それでもマリアは部屋の外からも浄霊の力を行使。 光の円を展開させてくれていたおかげで、有象無象の霊たちはその光に飲まれて消滅……オレの周囲には強力な死霊一体のみとなっていた。



 オレはどっちに集中すればいいんだ?



 目の前では懸命にオレの命を救ってくれようと頑張ってくれている医師と看護師さんたち。 そしてその近くでは、死霊が御白の眷属が展開させた結界を本気で破壊しようとしてきている。



『なんかもう頭が混乱してるんだが……大丈夫そうか、眷属さん』


『コーーン!!』



 それからしばらくオレは医師たちの戦いと、眷属たちとの戦いを交互に見守ることに。 どちらも負けられない戦いだったのだが、先に決着がついたのは医師たちの方だった。



「先生、××……安定しました!!」

「よ、よかった。 このまま××で様子を見よう。 報告またよろしく」

「はい」



 死霊や他の霊たちの狙いはやはりオレの身体から漏れ出ていた霊力だったみたいで、オレの生命危機が一旦過ぎ去ったことを察した霊たちはすぐに興味をなくして各方面へと散らばっていく。 結果、病室内には再び霊体のオレと肉体のオレ、メリッサ、眷属、死霊だけとなった。



『ていうか何であの死霊のやつ、オレの命の危機が過ぎ去ったのにまだいるんだよ』



 オレの呟きに眷属が『コン』と鳴き、メリッサが『あー、なるほどね!』と大きく頷く。 そしてメリッサはオレに視線を向けると『私が通訳してあげるー』と大きく手を挙げた。



『あの死霊はヨッシーの身体にいっぱいの霊力があることを知っちゃったから、呪い殺してでもその力を得ようと考えてるんだろうってさー』



 メリッサの通訳を聞いた眷属が小さく頷く。



 あー、なるほどね。 呪い殺してでもオレの霊力が欲しい……って、え?



『いやめちゃくちゃ厄介じゃねーか!! 脅威全部去らないのかよ!!!』



 やはり死霊を倒すには前回のように御白に出てきてもらうより他にない。


 オレは御白の助けをもらえないか聞いてみたのだが、メリッサの通訳曰く、どうやら御白は病院周囲に多くの眷属を配置させていて、数日前に感じた違和感の存在が来る可能性を考慮して警戒してくれているとのこと。

 御白の狙いはその存在のみとのことで、他の霊はスルーして、完全に気配を消して待ち伏せしているらしい。



『それって前に愛ちゃんとマリアが帰ってきた時に感じたあの嫌な気配のことだよな。 やっぱまだ気配あるのか?』


『たまにあるよー。 まだ姿とか見せてるわけじゃないんだけどね』


『思い込み……とかじゃないんだよな』


『それは違う、確実にいるよー。 私的にはさっさと姿見せてもらってバチバチやりたいんだけど、そいつ……かなり頭がいいんだろうねー。 気配をあえて消さずに、私たちに常にプレッシャーをかけ続けて精神的疲労を狙ってるんだと思うー』


『考える能力化け物並みだな。 てことは悪霊……最悪の場合、あの死霊クラスってことか?』


『んー、考えたくはないけど、もっと上かもしれないよ。 だからネコちゃんあんなに警戒してるんじゃないかなぁ』


『なるほど』



 御白の眷属が展開してくれている結界の中で、オレはメリッサと会話を交わしながら早く目の前の死霊が諦めて消えてくれることを切に願う。



『ていうかメリッサさ、もう有象無象の霊はいないんだから、眷属さんに加勢してあげてくれないか?』


『そんなの無茶だよー。 私が倒せるのは一定クラスの悪魔か、悪霊まで。 死霊は私の手には負えないんだよねー』


『あー、そういうことな。 オレと一緒だな』


『えへへ、だねー』


『いや、「だねー」じゃねーよ、「だねー」じゃ。 眷属さんの力が切れたらどうすればいいんだ』


『わかんないよー。 私、少し前まではただのサキュバスだったんだからぁー』



 そんなやりとりを続けていたオレたちだったのだが、眷属が結界の規模を縮小し始めていることに気がつく。

 少し前に一度目にしたオレとメリッサは、眷属の力に限界が近づいてきていることを察した。



『うわーん!! どうしたらいいのー!』



 慌てふためくメリッサを見て、オレはあることを決意。



 こうなったらもう賭けに出るしか生き残る方法はない。



 オレはゆっくりと宙に浮かび上がると、メリッサと眷属に向けて、ゆっくりと口を開いた。



『二人とも聞いてくれ。 オレは今から御白神社にいるであろう龍神に助けをお願いしてくる。 ただ、その間にオレの身体があいつにやられても、オレは二人を責めないし、責めさせない。 だから、ギリギリまで粘ってくれることを望むけど、危険になったらオレの身体のことは忘れて一目散に逃げてくれ』



『ヨッシー!?』

『!!』



 二人は驚いた様子でオレを見上げるも、反対してこないということから、もはやそれしか方法はないのだろう。

 オレは覚悟を決めて視線を窓の方へ。 いざ御白神社へ向かおうと結界から出ようとした……その時だった。



 死霊の後方……突然病室の扉が静かに開く。

 それとほぼ同時に、オレの身体を狙っていた死霊がまるで最大にまで熱せられた鉄板の上に落とされた水滴のように、ブクブクと泡立ちながら蒸発して消えた。



『なっ……!?』


『えええええ!?!? 誰ええええ!?!?』



 突然の出来事にオレやメリッサ、眷属までもが困惑。

 皆揃って扉の奥へと目を凝らしたのだが、そこにいた人物に全員が驚愕することになる。



『あ……、ああああああ、愛ちゃん!?!?』



 そう、そこにいたのは愛ちゃん。

 俯いていて表情こそ確認できないのだが、愛ちゃんがゆっくりと口を開く。



「お兄ちゃんの邪魔……しないで」



 そう口にするとどうだろう。 オレもメリッサも眷属も、先ほどまでいた死霊のことでいっぱいいっぱいだったんだな。

 実は窓の外にも身を隠して漁夫の利を狙っていた悪霊・死霊が潜んでいたらしく、そんな霊たちが窓から顔を出したかと思うと、すぐに破裂して消えてしまったのだった。



 何が……、何が起こったんだ?



お読みいただきましてありがとうございます!!

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