106 覚醒②
百六話 覚醒②
オレの身体が点滴やら何やらで治療を施されている病室の中、いきなり霊の大群がドッと押し寄せてくる。
そこで思い出したのは、救急車の中で聞いた御白の言葉。
『通常、霊能力のある人間が死にかけている場合は、その溢れ出る力に惹かれて良からぬ霊どもが近づいてくる』
おいおいおい勘弁してくれよ! てことは……オレ死にかけてるってことだよな!?!?
霊たちを追い払うべく強制除霊を試してみるも、今のオレは霊体……肉体の方にしか霊力は宿っていないらしくダメージは皆無。 オレは咄嗟に両手を広げて立ち塞がろうとしたのだが、それをメリッサが大鎌で制止。 『だめ! 魂が死んじゃったらもう可能性無くなっちゃうよ!?』と忠告をしてきた。
『魂が……死ぬ!?』
『そうー! ヨッシー、まだ死んでないんだよ!? なのになんで自分から可能性無くしちゃうのよー!!』
『え、でも……そうでもしないとオレの身体が……!』
『まったく困っちゃうなぁ!! そのために、私やネコちゃんの眷属ちゃんがいるんでしょー!?』
メリッサが大鎌を振り上げたと同時に、御白の眷属はオレの身体を中心に中規模の結界を展開。 それに触れた霊たちは次々と灰になって消えていく。
『コーーーン!!』
『うぉ、すげぇ』
『あーー、眷属ちゃん先手ズルいーー!! だったら私も負けてらんないもんねー!!』
メリッサは自ら結界の外へと飛び出して、その大鎌を遠心力を使って大きく円を描くように振り回す。
『グアアアアア!!!』
『ギャアアアア!!!』
普通なら大振りと言われそうなそれなのだが、敵が所狭しといったこの状況下では一番効率がいいのかもしれないな。
御白の眷属の結界と、メリッサの大胆な攻撃のおかげでその場にいた霊たちは一瞬で殲滅。 しかし……この周囲にどれだけいるんだよ。 まるでゲームでいう第二ステージのように、新たな霊の群れが壁をすり抜けて飛び掛かってきた。
『うわああああ!!! 大丈夫なのかこれえええええ!!!』
『コーーーーン!!!!』
『キリがないよおおおおお!!!』
オレの瞳に映るのは、凶悪な顔をしてオレの身体を目指す、様々な姿をした霊たち。
強制除霊ができないだけで、こんなに脅威になるなんて。
オレは少しでも霊たちから遠い場所……眠っているオレの身体に身を寄せて様子を見守ることに。
まぁなんだかんだで眷属やメリッサもいることだし、大丈夫だと思っていたのだが……
◆◇
ゲームで例えるなら第六ステージあたり。 流石に量が多すぎるのか、メリッサの顔にも疲労の色が滲み出てきており、眷属に至っては、その体が少し透けてきているように見受けられる。
『お、おい、大丈夫か?』
オレの問いかけにメリッサは小さく口角を上げて頷く。
その後大鎌の取手の位置を持ち替えて、目の前に迫り来る悪霊を上から真っ二つに切り裂いた。
『私は……大丈夫だよ。 そこの眷属ちゃんはもう限界っぽいけどね』
『え』
『眷属って、基本的に主の力を分け与えてもらって存在してるから……このまま本気を出し続けてたら、消えちゃうかも』
『ええええええ!?!?』
メリッサの言葉がまさしくその通りだっただろう、眷属は短く『コン』と鳴く。 少しでも結界を持続させることに専念したのか、眷属は結界の規模をギリギリまで縮小……まるでオレに『まかせろ』と言っているかのように、オレを見上げた。
『すまない……頼んだ』
『コーーーン!!』
『よーし!! 私も踏ん張るよーー!!!』
それからはまさに、やるかやられるかの攻防戦。
眷属もメリッサも、互いに圧倒的な力を見せつけていたものの、やはり数の暴力には抗えないのか……病室内が霊でいっぱいになっていく。
『ちょ、ちょっと待って……さすがは病院、霊集まりすぎでしょ。 そろそろ私、限界。 もう大鎌持ち上がらないって』
『コ……ン』
メリッサは四方八方からの霊の攻撃を受けてボロボロに。 御白の眷属に至ってはもう半透明な状態で、結界も維持するのに限界を迎えてしまったのか、表面には複数の大きな亀裂が走っていた。
あぁ、これはもう保たないな。
両者の雰囲気から、オレはもう助からないと予想。
だったらせめて、愛ちゃんやマリアに伝言というか……遺言を伝えたい。
『あのさ、眷属さんにメリッサ。 オレ、愛ちゃんとマリアに……』
オレは辛く張り裂けそうな想いにフタをしながら口を開く。
そして声を出しかけたと同時……これは、見覚えがあるぞ。
病室の扉が開かれたと思うと、床全体に巨大な光の円が出現。 その光を浴びた霊たちは、一瞬でその姿を消していった。
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