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104 覚醒①


 百四話  覚醒①



 おいおいおい、とんでもないことになっちまったぞ。



 校門へ向かって突っ込んでくる車からヤンキー女子の二人を守ろうとした結果、オレは体の中から響き渡る衝撃音とともに意識が消える。

 


 これは……やっちまったか?



 意識が戻ったと思ったら何故かオレはふわふわと風船のように宙に浮いていて、下には意識を失ったオレが力なく地面に横たわっていた。



「か、加藤!?」

「ちょっと……ウチ先生呼んでくる!! い、いや、救急車に電話が先か!!」



 地面に横たわっているオレに群がる生徒たち。 飛び交う悲鳴。

 オレはそんな光景を上から見下ろしながら、こう叫んだ。



『お、オレ……死んじゃったああああああ!?!?!?』



 ◆◇



 あれからすぐに教師陣がオレのもとへ駆けつけ、少し差をあけて救急隊が到着。

 


 ていうかオレ、魂が離れちゃってるんだけど助かるのか?



 冷静にツッコミを入れていると騒ぎを聞いて駆けつけた石井さんがその場で泣き始め、進藤さんは……そういえばお札の効果で霊が視えるんだったな。 宙に浮かんでいるオレの姿を見つけるなり、力なく足下から崩れ落ちる。



『ちょ、ちょっと良樹くん!? どうするの!?』



 すみれさんが慌てて飛んでくるも、オレはどうすれば良いのか分からず答えられず。 するとそんな中、オレの古くからの友人……浮遊霊たちが血相を変えて近寄ってきた。



『おー、みんな。 まさかこうして会うことになるとはな』



 呑気に挨拶をするオレに向かって、浮遊霊たちが焦りながらオレの身体を乗せて走り出していた救急車を指差す。



『バカ良樹!! 早くあれについていけって!!』


『なんで』


『せっかく身体が助かるかもってなっても、肝心の魂がそこに無ければ意味ないだろ!!!』


『ーー……そうなのか?』


『そうなんだよ!!! 俺たちが何年……いや、何十年霊をやってると思ってんだ!!』

『だから急げって!!』


『お、おう!!』



 浮遊霊たちに言われるがまま、オレは急いで救急車を目指す。


 常識的に考えると走っている車に追いつくことなど到底出来ないものなのだが、霊って本当に凄いんだな。 移動自体もスムーズで壁などの障害物もすり抜けられるため、物の数分で走行中の救急車に追いつくことが出来たのだった。



「×××どうだ!?」

「×××です!!」

「じゃあ×××だ!」



 言ってる意味こそ分からないが、救急隊員たちの必死の処置を目の当たりにして、ようやくオレの中で焦りが少しずつ大きくなっていく。

 そこでふと思い浮かんだのは愛ちゃんやマリアのこと。



『もしオレがこのまま最悪の事態を迎えてしまったら、愛ちゃんはどうなってしまうんだ? それにマリアも……強制的に国に帰らされることになるんじゃ……』



 オレ、助かる……のか?



 不安になりながら見守っていると、しばらくして眷属から報告を受けたのか、どこからともなく御白が参上。 オレの不安そうな顔を見るなり、思い切り飛び蹴りをお見舞いしてきた。



『お主は……何やっとるんじゃあああああああ!!!!』


『ぐえええええ!!!!!』



 オレが覚えている限り説明するも、どうやら御白には眷属からの情報が耳に入っているようで『そんなの知っとるわ!!』と二度目の飛び蹴りを喰らう。

 その後、少しだけオレが期待を持てるような言葉を発しながら、気合を入れるよう背中を叩いてきた。



『気をしっかり持てい!! 通常、霊能力のある人間が死にかけている場合は、その溢れ出る力に惹かれて良からぬ霊どもが近づいてくる。 しかし今のお主にはまだそういった輩が来ていない……ということはまだ、希望があるということじゃ』


『ま、マジか』


『あぁ。 とりあえず念の為、妾の眷属とメリッサに、お主の身体周辺を外敵から守るよう命じておく。 じゃから良樹、お主はただその身体が助かることだけを祈っておれ』


『い、祈る?』


『あぁ。 しっかりと声に出してな。 言霊ことだまには力がある……少しでも可能性を上げるべく、お主はそのことだけに努めよ!!』


『わ、わかった!!!』



 それからオレは、声に出して祈ることに集中。

 病室に運ばれ、いろんな管やら何やらが繋がれた自身の身体の近くで、ひたすらに言霊で助かる可能性を上げることにした。



『ネコちゃんの眷属ちゃん!! 今回だけは共闘だねー!! もし何かあっても、絶対ヨッシーを守るよー!!』

『コーーン!!!』

『ヨッシー、安心しててねー!!!』


『すまん、助かる』



 病室に運ばれてからどのくらい経っただろう。

 まだ外が明るい時間……その時はいきなり起きた。



『ーー……っ!! 眷属ちゃん!!』

『コーーン!!』



 突然何かを感じ取ったのか、メリッサと眷属の顔つきが変わる。



『お、おい何があっ……』


『ヨッシーはそこから動かないでね!』



 そうメリッサが声をかけたと同時……病室の至る所から、霊の群れがどっと押し寄せてきた。



 え、これって……ヤバくねーかオレ。


 

お読みいただきましてありがとうございます!!

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