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103 ラッキー時々アンラッキー?


 百三話  ラッキー時々アンラッキー?



 翌日。 オレは愛ちゃんマリアの授業参観への出席許可をもらうべく、職員室に赴いていた。



「授業参観? 家庭訪問じゃなくてか? 珍しいな、もうすぐ夏休みなのに」



 愛ちゃんから預かったプリントに目を通しながら、担任が「ほぉー」と声を漏らす。



「はい、それでどうしても来てほしそうだったんで、なんとかならないかなーと」


「なるほどなー。 いいぞ」


「ーー……」



 え?



 予想していなかった返答に、オレは思わず脳が固まる。



「ん、どうした加藤」


「いや、すみません驚いて。 え、いいんですか?」


「いいぞ。 別に学校は兵役へいえきとかそんなもんじゃないんだから。 周囲の目が不安だったらあちらさん……小学校の方にも連絡しといてやろうか?」



 担任は固定電話に手を掛けると、「確か……高槻先生だったよな」とオレに確認をとる。



「えええ、何もそこまで……別にいいですよ、オレが後で連絡しておくんで」


「まぁまぁ気にするな。 俺も高槻先生とはまた話したかったからな」


「は?」


「だって高槻先生、あの交流会でしかお会いしたことないけど……めちゃくちゃ美人だったじゃないか。 あんな美人とまたお話しできるんだ。 そこは加藤、先生の邪魔をしないでほしいな」


「いや先生、既婚では?」



 担任はオレのツッコミを華麗にかわして電話をかける。

 するとちょうど向こうも休み時間……高槻先生も職員室にいたらしく、すんなり話が進んでいったのだった。



「てことで、向こうの校長・教頭先生にも伝達してもらうから気にするな」



 担任がニヤけ顔で先ほどオレの渡していたプリントを返してくる。


 なんだかんだで迅速に物事を進めてくれたんだ。

 オレは担任にお礼を述べると速やかに体の向きを職員室の出入口へ。 しかしその去り際、オレは思わず担任からの言葉に足を止めてしまったのだった。



「あ、そういえば……高槻先生、どうして加藤の名前が『良樹』って知ってたんだ?」


「ーー……」



 ◆◇



 担任からの質問からなんとか逃れることに成功したオレは、ホッと胸を撫で下ろしながら教室へと戻る。

 すると教室が見えてきたあたり……オレの帰りを待っていたかのように、進藤さんが金髪おかっぱヘアーを可愛く揺らしながら小走りで駆けてきた。



「加藤。 今、楓も奈々もトイレ行ってていないから……」


「うん?」


「昨日のメールの件なんだけど」


「ーー……あ」



 進藤さんの言葉で思い出す。


 そういや昨日、愛ちゃんの授業参観のこと考えてたらあの件……愛ちゃんが学校で寂しい思いをしてることをフと思い出して、寝る前にメールを送っていたんだった。


 内容はもちろん、メリッサが教えてくれたナイスな作戦に協力してくれないかということ。


 その作戦には進藤さんの協力が必要不可欠で、作戦決行はまだ先になるとは思うが……そのことだけでも承諾をもらっておきたかったんだよな。



 オレが『そうだった』と思い返していると、進藤さんがメールを開きながら「あの子……愛のことで協力してほしいって書いてたけど、どうしたの? 詳しいこと書かれてなかったんだけど」と尋ねてくる。



「あーー、実は……」



 オレは愛ちゃんの学校生活を進藤さんに簡単に説明。 そこで、とある作戦実行の為に協力してほしいことをお願いしてみたのだが……なんだ、今日は簡単に承諾がもらえる日なのか? 

 進藤さんは「うん、いいよ」と即答。 いつでも頼っていいことを了承してくれたのだった。



「そんなにあっさり……いいの進藤さん」


「うん。 私にとって加藤くんは心の恩人だし。 それに、愛もマリアも少しの時間だったけど、優しく私を迎え入れてくれたしね」



 聖人だ。



「あ、ありがとう」



 授業参観だけでなく、進藤さんの協力までゲットできたオレは、その日の残りの学校生活を上機嫌で過ごすことに。

 


 早く帰って、愛ちゃんに授業参観に参加できることを教えたいぜ。



 放課後になるや否や、オレはダッシュで教室を出る。

 しかし物事が全て上手くいくはずもなく……



 靴に履き替え校門へ向かっていると、異様な雰囲気を漂わせた少女が、校門の外側から中を眺めているのを発見する。



 紫色の長髪で、やたら白い肌……何者だ?

 


「ーー……」



 明らかに目立つ出立いでたちをしているのにも関わらず、生徒たちは少女に見向きもせずに下校していく。 

 ということは、あいつは霊ってことでいいんだよな。



 いつもなら多少は警戒するところなのだが、この時のオレの脳には愛ちゃんマリアのことばかり。

 別に気にしない……視えていない演技をしながら、オレも他の生徒たちに混じってその少女の隣を通り過ぎようとしたのだが……。



「ーー……っ!!!」



 視界の隅で捉えていた少女が不気味に笑う。

 するとその刹那。 細い道……通りを、一台の軽自動車が結構なスピードで校門めがけて突進してきていることに気づいた。



「うぉっ!?」



 オレはすぐにバックステップで校門後方へと避難。

 しかしそんなオレと入れ違うように、陽キャ・佐々木さんと黒沢さんが「加藤、どーした? 校門前に怖い人でもいたんー?」と笑いながら前へと進んでいく。



「ちょっ、佐々木さん黒沢さん……!!」



 まったくよ。 どうしてオレは、こんな行動に出てしまったんだろうな。



 オレは慌てて二人の後ろを追い、背中を精一杯押し出す。

 それと同時……大きな衝突音が体の中で響き渡った。



「痛っ……って、え!?」

「加藤!?」



 うわ、すげぇ。 本当に車にぶつかったら、こんなにも高く飛ばされるんだ。



 不思議と痛みは何も感じなかったのだが、宙を舞っている途中でオレの意識は途絶えた。

 


お読みいただきまして、ありがとうございます!!

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