101 朝から衝撃!!
百一話 朝から衝撃!!
その日の朝、クラスメイト全員に衝撃が走った。
「お、はよ」
教室に入ってきたのは金色の……若干コケシのような髪型をした色白美人。
皆、下級生か上級生が教室を間違えて入ってきたものだと思い込んでいたのだが、ヤンキー女子の陽キャ・佐々木さんと黒沢さんの行動・発言により、全てを理解することとなる。
「うへー!! ゆりか、マジで髪切ったん!?」
「うわ! 楓が昨日見せてくれた、中学ん時のゆりか、そのまんまじゃん!!」
ーー……え?
「「「「ええええええええええええええ!?!?!?!?」」」」
その場にいた全員が思わず声を上げる。
進藤さんはそんな皆の反応にキレることもなく、まるで女の子……突然の声に驚いて、小さく跳ねた。
おいおいなんてことだ、学校復帰早々とんだサプライズじゃねーか。
てか闇・進藤さんがいないだけで、こんなにも性格が変わるのかよ。
姉・すみれさんの霊も隣にいることから、あれは進藤さんで間違いない。
しかしなんていうか……本当にヤンキーっぽさが無くなったな!!!
あまりの清潔感に驚いていると、オレの視線に気付いたのか進藤さんと目が合う。
そしてここからも衝撃的だったのだが……今までならほぼ確実に『何見てんの?』などと圧をかけられていたはず。 しかし目の前の……清楚系に覚醒した進藤さんは微塵もヤンキー圧を出すこともなく、そのままニコリと微笑みながらオレの前に近づいてきた。
「加藤」
「あ、はい」
今まで以上にすみれさんを供養しているのだろう。
微かに線香の香りが漂ってくる。
「昨日とか一昨日、ほんとありがとね」
「あ、うん、別に……」
「薬は? 今朝も飲んだ?」
「一応整腸剤は処方された分は全部飲もうかと」
「そっか」
「はい」
まぁ……こんなこと、皆の前で言われたらこうなるわな。
進藤さんの先の発言に教室中が大混乱。 オレも進藤さんも休んでいた時期が重なっていたこともあり、いろんな想像話が飛び交い出したのだった。
「えっ……、ね、ねぇ、加藤くん」
後ろの席から石井さんが大きく瞬きをしながら肩を叩いてくる。
「ん、なに?」
「進藤さんと……あれから何かあったの?」
「あー、まぁうん」
「何があったの?」
「なんで?」
「だって……いや、ううんごめん、なんでもない」
石井さんは若干頬を膨らませながら、少し不貞腐れた表情で視線を逸らす。
「い、石井さん?」
「すごいね加藤くん。 女の子の扱い、上手いんだ」
「はあ?」
どうしたんだ急に。 一体何がどうなったらオレが女の子の扱いが上手いと……いや、オレが気付いていないだけで、本当に上手くなっているのかもしれないぞ?
「ねぇ石井さん、ちなみにどんなところが……って、え」
詳しく教えてもらおうとしたのだが、すでに石井さんは他の人とおしゃべり中。
女子にそう言ってもらえたってことは、結構ガチだよな? 自信持っていいんだよな?
女子力の高い石井さんに言ってもらえたんだから、かなり嬉しいぜ!!!
これは念願の彼女が出来る日も、そう遠くはないのかもしれない。
その日オレは今日一日、充実した学校生活を過ごせるものだと思い込んでいたのだが……。
それは昼休み、オレがトイレから教室へと戻っている時だった。
◆◇
『ほんとにありがとう!! 新しいエロ漫画を待ってたんだ!』
『ワタチも香水嬉ちいわ!! これでワタチ、もっと可愛くなっちゃう!!』
金次郎像や日本人形たちといった学校の怪談オールスターズにプレゼントを渡し終えて教室へと戻っていると、何やら正面玄関の反対側……中庭の方から、男の怒声が聞こえてくる。
「ん、なんだ喧嘩か? 実にやかましいな」
こういうことには、無闇に顔を突っ込まないのが巻き込まれないための鉄則だ。
オレはすぐに体の向きを変えて、遠回りして戻ることを選択。 しかしその直後、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「はぁ!? 何それ脅してるわけ!?」
ん、この声は……。
物陰に隠れて耳を澄ましてみると、先ほどの叫び声はヤンキー女子・陽キャの佐々木さん。 それに続いて「ほんとそれ! マジでキモいんだけど!」と、どうやら黒沢さんもいるようだ。
おいおいなんだ、今度は何が原因で喧嘩……恋愛沙汰か?
もしそうなら今後、オレに彼女ができた際の参考になることがあるかもしれない。
「今までオレに迷惑をかけてきたぶん、相応の知識をもらうとしよう」
中庭を覗き込んでみると、そこにいたのは聖・進藤さんを含めたヤンキー女子三人と、ヤンキー男子複数名。 正直恋愛沙汰だとありがたかったのだが……一番見た目が派手なヤンキーが、進藤さんに詰め寄っていた。
「だから意味わからないって言ってんだろ!! なんでわざわざグループから抜けんだよ!!!」
グループから抜ける……仲間割れか?
ヤンキーの怒号に進藤さんは涙目。
完全に怯えてしまっているのか、体を震わせながら佐々木さんの腕を強く掴んでいる。
「だからうっさいって!! ゆりかが抜けたいって言ってんだからいいじゃん!!」
「それでなんで楓や奈々まで抜けんだよ!!」
「んなもん決まってんじゃん!! ゆりかがいたから入ってただけで、別にあんたらのこと何とも思ってなかったし!!」
「はあ!? それが仲間に言う言葉かよ!!!」
「マジでキショい!! アタシらをエロい目で見てただけの猿が何言ってんの!?」
進藤さんを守るように、佐々木さんと黒沢さんがヤンキーに立ち向かっている。
おお、これぞ絆。 友情の証かな。
オレは友達を守る二人の姿に感動。
いいものを見せてもらった……と、その場を去ろうとしたのだが。
「あれ、加藤くんどうしたのこんなところで」
「え」
振り返った先には何故か石井さん。
どう返答しようか迷っていると、それよりも先に石井さんも中庭から聞こえてくる声に気付いてしまう。
「この声って……佐々木さん?」
「ーー……」
「あ、やっぱり佐々木さんたちだ。 どうしたんだろ、言い合いしてるけど……」
「ーー……」
「もしかして加藤くん、あれに気付いて?」
うわあああああああああ!!!! バッドタイミングすぎるだろおおおおおおお!!!!!
後ろからはヤンキー女子たちの修羅場。 そして目の前からは石井さんからの視線。
『もしかして、三人を助けようとしてここに来たの?』的な感情がビンビン伝わってくるぜ。
ーー……いや、オレにどうしろと?
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