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ゴブリンクロニクル Ⅰ  作者: 冨浦伝十郎
Chapter1  荒野のゴブリン
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聖堂再訪

                                   ・



 ・・気が付くと俺はまた ”あの”聖堂に居た。

前と同じように誰もいない。 何もない。 しん、と静まり返っている。


 今なら分かる。 

恐らくここはどこでもない(・・・・・・)。  

ワールドマップ上の何処か特定の場所(地点)にある訳じゃないんだ。

サーバー内にテンポラリ( 一時的 )に設けられたワークスペース( 作業空間 )に過ぎないのだろう。

窓や出入り口が無いのは当然だ。 ( このドームの外には何もないんだからな )

此処にいる間はFQ世界のマップ内から俺は存在しなくなる、ってことだ。

あのイヤな感じはそれだったんだ。


 通常のドームに復活させるより大幅に演算リソースが節約できる。

ADプレイヤー同士の”接触”も防げる訳だ。



 雑念を振り払い 俺は眼前にマップを展開した。

( そんなことより早くフィールドに戻らないと )


 一瞬でドームに飛ばされた。  一撃で倒された。 …クリティカルだ。

側面からの攻撃だから恐らく頭だ。 弓矢で狙撃されたんだろう。

移動速度が大幅に上がって殆ど進行方向正面しか見てなかったからな。

進路上を外れた位置にいた下手人に気付けなかった。

聞こえた ”音”の感じでは距離は50mくらい。 100は離れていない筈。

アーチャーだとしてもかなりな ”手練れ” だ。

しかし”馬”に乗ってるならハンターやアーチャーだとは考えにくい。

( 騎士、か? )


 ドームに転送されてからまだ1秒少々。 

俺はポイントを指定してフィールドにワープバックした。

戻った場所は倒された時の自分から見て左に100m地点。 

( 俺を攻撃した奴[等]のバックを取れる位置にしてみた ) 

転移して直ぐに身を低くして岩陰に隠れ、気配を消す。






「何なのだあのゴブリンは!?」

甲高い女の声。 所謂プリンセスボイス。

「姫様、落ち着かれませ」

渋い中年男性の声。 執事というよりは武人系。

「どこから湧いて出た? 私の獲物を一瞬で屠りおって」

「妙ですな。 ここら辺りからずっと東までは狼共の領分の筈」

「豹を倒したあの手際を見たか。全く驚かされたぞ」

「尋常でありませんでしたな、あのような者を目にするのは某も初めてです」

・・そうだろうとも。 俺だって(カンストした)見たことないぞ。

「かと思うとアイテムを拾った後は突っ立ってニヘラニヘラしおって」

・・・・・・・

「隙だらけでしたな」

「気色悪いので思わず撃ってしもうたわ。 獲物を横取りされたのもあるしな」

「お見事なお手前でした」

「ゴブリンなど射ても矢の穢れにしかならぬのにな」


・・・・オイ。 ( 言ってくれるじゃないの )






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