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ゴブリンクロニクル Ⅰ  作者: 冨浦伝十郎
Chapter1  荒野のゴブリン
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夕照に吠える

                                   ・



 雑魚モンスター筆頭のゴブリンだがスキルの上りは箆棒に早い。

( 鍛錬に励むゴブリンなんていない訳だからな )

西に向かって走り続けたら直ぐに”疾駆”のレベルは10になっ(カンストし)た。


 全力で駆けた時のスピードは高速道路でリッターバイクと張り合える程だ。

ただ、その速度でずっと走れる訳ではない。

速度が維持できるのは2kmくらいだ。

全力ダッシュの速度は1分しない内に落ちる。

スキル獲得以前のそれに戻るのだ。

( これはFQに限らず他のゲームでもよくある一般的な現象だろう )

別に息が切れて苦しくなる訳ではない。  落ちるのは速度だけだヘロヘロになったりしない

10秒もしない内にまたダッシュできるようにはなる。


 この仕様にはマップ内移動に制限を課す、というニュアンスもあるのだろう。

でないとワールドマップのスケール感や馬宿の存在意義が危うくなるからだ。


 FQでは”飛行”するスキルや乗り物は無い。

ワイバーンやペガサス等の飛行モンスターに騎乗する事もできない。

"鉄道"や"(バイク)"も無い。

( 過去にそれらを実装したゲームもあったが不評だったらしい ) 

ドームでの転移(ワープ)を除けば最速の移動手段は”馬”だ。

馬は要所にある”馬宿”で借りることが出来る。 所有することも可能だ。

目的地を指定すれば到着まで手が離せるので近~中距離の移動では結構重宝する。


 "疾駆"スキルでの移動速度は馬のそれを遥かに凌駕するが持続時間が短い。

それに目的地や移動距離を指示して後は”お任せ”で手を抜く事ができない。

( ADプレイヤーには”手を放して”他にする事は無い訳だが )




 俺はスキル効果が切れるまで全力疾走し、切れたら”索敵”することにした。

『クーリングタイムの有効利用』 とも言える。  


 ・・・今度の群れは三匹だ。

二匹は ”撃”って仕留めた。

残りの一匹に向かって走る。 距離は200。 (もうスキルは復活している)

鼻先に立つまで三匹目は俺に気付かなかった。

( お前、それじゃイカンぞ )

ゴブリンキック!

右足で狼の顎を蹴り上げる。 仰向けに浮き上がる狼の肛門に左のトゥキック。

吹っ飛ぶ狼を追ってジャンプ。 ("ナックルボム”スタイルだ)

掲げた両手にゴブリンロックを召喚。

Y M S (バレットタイム)が発動。

接地する瞬間の狼にゴブリンロックを投下。

俺の両腕は真下に下がり両膝は胸まで引き付けられた。

Y M Sが解除され ゴブリンロックは狼の胸郭を粉砕した。

俺はそのまま狼の頭部に全体重を乗せたドロップキックで着地する。

( あの伝説のカンフースターのフィニッシュブローだ )




 現状での 1on1 の対狼格闘ルーチン。 


 胸郭と頭を潰された狼の躯の上で俺は身を震わせて(あのスターの様に)勝鬨を上げた。




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