スライムしか使役できなかった僕
”かつて、この世界では魔物が跋扈していた。人間は洞穴などに隠れて暮らしていた。
ある日、魔物をを従える事が出来る者が現れた。
******
最初は小さな弱い魔物だけだったが、それが徐々に強くなり。
人間は、住める土地※増やしていった。
それがこの国の始まり。”
ぼんやりと、破れた教科書を眺める。
また誰かが破ったのだろう。
ほとんど残っていない。
丁寧な仕事に呆れてしまう。
顔を上げればニヤニヤ笑っているクラスメイトの顔が、あちこちにあった。
「いやだ。」
「こっち見たわ。」
「汚いのがうつる。」
「イヤらしい目で見られたわ。」
そんな事をヒソヒソと話している。
汚いと僕を蔑むけども、僕の私物を態々壊すのは平気なんだな。
内心呆れる。
立ちあがると、
「キャア。」
わざとらしい悲鳴が上がった。
危害を与える方が被害者意識持っているってどういうことだよ。
おかしいだろ。
内心で溢れんばかりに湧き出る怒りを何とか抑え足を進める。
出来るだけ、視界に入れないように足先だけを見て移動する。
教室を出て、図書室に向かった。
誰もいない事に安心して席に座る。
予鈴が聞こえた。
サボリ。
それは良くないことだ。
だけど、あそこにはいない方が良い。
僕の居場所では無い。
破れた教科書を鞄から取り出して見る。
ノエル・ツール。
名前が書いてある所が態々塗りつぶされている。
僕の名前が書いてあるものは大抵黒く塗りつぶされている。
ここには僕の存在を認めたくない人ばかりがいる。
そういう人しかいない。
僕は帰りたい。
こんな王都にある、高位貴族が通う学園なんて来たくなかったし、いたくない。
だけど、僕にはそれが許されない。
だって、僕は王子様の婚約者なのだから。
愛されもせず、庇っても貰えない。
なのに、婚約者なのだ。
何で、こんな事になったのか。
僕は、貧乏辺境伯の三男坊だ。
辺境伯と言っても力も無い。
名前も無い。
かつては力を持っていたようだが、隣国の国力が弱り、ほぼ属国と成り下がって早数十年。
国境の守りを重視する必要は無くなった。
人が配備されなくなり、どんどん寂れていき、今となっては、ただの寂れた田舎となっている。
街が寂れて、税収も落ち、財力も無くなった。
不思議な事に、領地の力がなくなって行くと貴族としての力も落ちていく。
貴族としての力。
それは、魔物を従わせることの出来る力だ。
教科書にも書いてある、この世界の常識。
高位貴族なら、より高位の魔物を従わせられる。
下位なら、下位の魔物を。
一体だけ従属させる事が出来るのだ。
力が落ちた名ばかり辺境伯の三男の僕が従属させる事が出来たのは、スライムだった。
5才の時、従属魔物を召喚する儀式に参加させられて、出てきた魔物がスライムだったことに、父も、兄も呆れていた。
召喚の儀は普通10才前後でする。
貧乏辺境伯のツール家では、召喚の儀をするお金をケチって、三兄弟一斉にやった。
僕は幼すぎてスライムしか召喚できなかったのだろうと言われた。
幼いなりに周りががっかりしているのがわかったけど、僕自身はスライムを気に入っていた。
だって、強い魔物は怖い。
スライムは弱いけど、僕に恐怖を与えない。
僕は従属させたスライムに愛情を注いだ。
ぽよん。
ぽよん。
いつも僕の横でバウンドしている。
その姿を見ているだけで癒やされた。
疲れて横になろうとしたら、僕の身体を受け止めてくれる。
冷たくて心地よい。
透明できれい。
一緒に過ごして見ると良いところばかりだ。
いつも一緒に居て、いっぱい愛情を注いでいったらスライムは少しずつ大きくなった。
そして分裂して仲間を増やしていった。
普通、従属させる事が出来るのは一体だけ。
だけど、スライムは分裂して増える性質がある。
両親家族は不思議がっていたけど、田舎には何の情報も入ってこない。
だから、ただ見守ることしか出来なかった。
僕は何も気にせずに、スライムが分裂したり、時々固まって大きなスライムになったりしているのを、のんきに眺めていた。
大きくなってもスライムはスライムで、余り強くは無い。
何も出来ない。
そう思っていたけど、僕の身体くらいの大きさになった時に何となく気づいた。
家が綺麗になっていることに。
貧乏とは言え、辺境伯。
元は、要塞だった我が城。
異様に広い。
使っていない所だらけで、掃除も行き届かず、薄汚れていたのだが、スライム達が、ウゾウゾと動き、汚れをこそげ取ってくれた。
どこか煤けた建物がどこから見ても綺麗になった。
大きいだけに、違いがすぐわかる。
白く輝く要塞は評判になった。
街を綺麗にして欲しい。
領民から要望が上がった。
かつては華やいでいた街も同様、薄汚れていた。
僕は、自分の可愛いスライムが街の役に立つと喜んで要望を受け入れた。
僕が張り切るとスライムも張り切る。
町中に分裂して、ウゾウゾ動き回り、汚れをこそげ取っていってくれた。
苔むしてヌルヌル滑るようになっていた石畳。
外壁。
設備は直せないが、汚れは取れるだろう。
と、思っていたがスライム達は思っていた以上に優秀だった。
汚れを取り、詰まっていた排水機能を復活させた。
お陰で、雨が降っても水浸しになることがなくなった。
欠けていた石畳に同化して凹みを無くしてくれた。
馬車や荷車、人が嵌まることが無くなった。
更に更に喜ばれた事には、トイレを綺麗にしたことだ。
スライム達は、単純に汚れを取っていっているだけなんだろう。
だけど、排泄は誰しもがする。
必ず必要な場所で、そして、汚れやすい場所だ。
曾ては、くみ取り業者なども来ていたが、今は来なくなった。
だから、街の公衆トイレ事情は最悪だった。
そこを綺麗にしたのだ。
不衛生な所だった、トイレの汚れが完全に無くなり領民が口々に感謝の言葉をくれる。
僕は分裂させたスライムを、そこに常駐させる事にした。
トイレは常に綺麗になった。
街に遅れを取る形になったが、僕の家も同じようにした。
使用人がとっても喜んだ。
トイレ事情が改善するとこんなに人は喜ぶんだ。
僕はスライムにお前のお陰だと感謝した。
あんまりにも僕が喜んだからか、何故か、スライムは僕の身体に纏わり付き、僕の服の隙間から入り込み、あろうことか僕の身体のナカに入ってきた。
小さなスライムが形を変えて中に入る。
焦ったけども、出てこいと命令しても出てこない。
身体に異変は無いし、いつも一緒にいるのは、ちょっとだけ嬉しかった。
それでそのままにしてしまった。
すると、異変が起きた。
僕はトイレに行かなくても良い身体になったのだ。
どうやら、身体のナカのスライムが分解、綺麗にしてくれているらしい。
それを知った、使用人が自分たちもして欲しいと言うようになった。
門番など、常に決まった時間立っている仕事などは、途中でトイレに行きたくなるのは本当に耐えがたいことらしい。
小ならちょっと影に隠れてと出来るが、大きい方だと本当に困ってしまう。
すぐ出るならまだしも、お腹を壊していると職務を全うできない。
そうするとお給料が貰えない。
貧しい領では日当みたいな感じでしかお給料が出ない。
休業補償などはないのだ。
だから、僕はお願いを聞いてあげた。
汚い物を綺麗にしたスライムは何故かどんどん成長して、僕の背丈を超え、一部屋に収まらない程にまでなっていたのだ。
小さく分裂するのは全く問題が無かった。
使用人は喜んだ。
僕も嬉しかった。
次に噂を聞いた、領の人々が僕の元に現れた。
狩人とか冒険者とか、急のトイレが困る人々。
僕はその人達にスライムを分けてあげた。
その噂を聞いて、辺境伯領に形ばかり残っていた、王都からの駐屯部隊までやってきた。
王都までの旅路がトイレの問題が解決すれば非情に楽になる。
僕は人の役に立つのならとスライムを分けてあげた。
彼らが王都に戻り、次の部隊がやってくる。
交代した部隊も僕にスライムを分けてくれと言ってくる。
それが数ヶ月毎に続き、ある日僕は王都に呼び出された。
王都の偉い人からの招集だった。
怯えながら父親に連れられて、何かお役人の偉い人に会った。
それで、スラム街に連れて行かれて綺麗にして見せてくれって言われた。
街をきれいにした時みたいに、スライムにお願いする。
僕にとってはいつもの事だ。
それを見て偉い人は頷いた。
これからも頼むと言って父親に金子を渡しているのを見た。
次に、軍の偉い人に会った。
騎士団全員分のスライムを分けて欲しいと言われた。
僕はいつもやっていることだから、スライムを分けてあげた。
騎士団長は、僕の能力が他に取られると危険だから身柄を預かると言った。
それで、僕一人王都に残る事になってしまった。
騎士団の一室に部屋を宛がわれ、スライムを分ける日々。
言われて街も綺麗にする。
後、時々高位貴族と思われる人、女性も訪ねてくるようになった。
女性にとってもトイレ事情は問題で、パーティなどでお腹を壊さないというのは本当に助かるらしい。
ただ、理由をつけてトイレに避難したいこともあるから、スライムを胎内に入れるのは内緒にしたい。外聞もあるし、と言うことで、来る人は皆、顔を隠していた。
僕は誰が来てもやることは一緒だから、分けてあげた。
この頃には、僕がやることで、家族に多大な謝礼が入っていること。
そのお陰で領内が潤っていること。
兄が学校に行けるようになったこと。
色んな大人の事情が分かるようになっていた。
それからしばらくして、僕が15才くらいになった頃、今度は王宮に呼ばれた。
大広間で、王に謁見して、第三王子様の婚約者として、この国に貢献して欲しいと言われた。
既に、両親からは承諾を得ているとまで言われて、僕はただ突っ立っている事しかできなかった。
僕は貧乏貴族の三男だ。
碌な教育も受けていない。
ただ、言われるままに出向いてスライムを働かせて、請われたらスライムを分けただけ。
最弱な魔物を従属させるだけで、何の力も無い。
容姿もそんなに優れている訳では無い。
そんな僕を王子の婚約者にするなんて訳がわからなかった。
だからと言って断ることもできない。
訳も分からずサインさせられた後、王子と面会させられた。
王子は僕を冷たい目で見た。
「お前みたいな奴と婚約しなければならないとは!」
なんて言われた後は、無視された。
居ても居ない物として扱われる。
困って、僕の身柄を預かってくれていた騎士団の人に相談した。
だけど、
「そんな風には見えない。恥ずかしがっているだけ。気にしすぎ。」
と、言われた。
僕の意見は通らなかった。
いや、どう考えても無視されているし、僕の姿見ると進路変えるし、どうしても一緒にいなくて行けない場合は背中を向けられる。
全身で僕を嫌いだと、拒否しているのに、誰も認めない。
言っても分かって貰えない。
それは、本当に苦痛だった。
だけど、僕の立場ではどうしようも無い。
耐えるしかない。
気にしないようにするしかない。
そう思っていたんだけど、王子の婚約者として騎士団預かりはおかしいと言うことで王宮に移り、本格的な無視が始まると本当に辛くなった。
だって、肝心の王子様が僕を嫌っているんだ。
周りはそれを分かって僕を軽んじる。
僕が最低級のスライムしか従属させられてないこと。
スラム街に行って、街を綺麗にしていること。
スライムを分けて、トイレに行かなくて良くしていること。
全てが、貴族からしたら汚くて信じられないことらしい。
皆にバカにされて、バカにしてくる人間の為に働かざるを得ない。
僕の気持ちは病んだ。
なのに、今度は学校に通えと言われた。
王子様と一緒に高位貴族が通う学校に無理矢理押し込まれた。
婚約者なのに、王宮の一室から追い出されて寮の一般室を用意された。
王子様は特別室に入った。
その隣は王子様の元婚約者の公爵令嬢の部屋らしい。
二人は本当に小さい時からの婚約者で思い合っていたらしい。
それを国王陛下の命令一つで別れさせられたんだって。
王子は汚い下の処理ばかりしている僕が気に入らない。
だけど、今は力が無いから言うことを聞いておいて、その内僕を追放する計画らしい。
学校で数年過ごして、僕の耳にもそんな話が入ってきた。
その上、最終学年で、数ヶ月で卒業だとなった今、新たな話が入ってきた。
地盤が整ったから、卒業パーティで僕を断罪、婚約破棄する計画を立てていると。
問題だった、辺境伯も掌握済み。
僕は罪人として奴隷紋でも刻んで、働かせ続ける予定らしい。
なんだ。それ。
って感じだ。
全くもって皆勝手だ。
しかも杜撰な計画。
あくまで噂だから、何処まで本当かわからない。
ただ、王子様は僕の事、本当に嫌いなんだろう。
それだけは確かだ。
僕はこれ以上無いほどやさぐれていた。
もう、どうでも良い。
だから、学校の授業もどうだって良いのだ。
もともと素養が足らなかったから、授業についていけなかった。
少しでも認めてもらおうと、頑張った事もあったが、嫌いな感情が勝って認めてくれない人には、何をやっても無駄な努力と言う物だ。
数ヶ月、僕は授業をサボり、ボンヤリと過ごした。
その間、スライムだけが僕の傍らにいてくれた。
いつだって、ぽよぽよ。
ふよふよ漂って僕を癒やしてくれた君。
いざと言うときも、スライムさえいれば僕は生きていける。
人から離れて過ごしている間に、僕の気持ちは少し持ち直した。
無事卒業の日を迎え、やれやれと思っていたら、最後だから、義務だからと言われて、強制的に卒業パーティに出させられた。
自分の実力を見せる為か、皆、従属させた魔物を傍らに従えている。
小さなスライムを抱え込んでいる僕はとてもみすぼらしく見えただろう。
実際、みすぼらしかった。
皆が着飾っている中、制服なのは僕だけだ。
しかも、嫌がらせでボロボロになっている制服だ。
何を仕掛けてくるのかな。
半ば、楽しみになりながら壁に陣取った。
けど、相手は僕を甚振りたくて仕方がないらしい。
パーティが始まって早々に僕のいる端っこにやってきて、皆に聞こえるように大きな声で
「穢らわしいお前と、婚約者でいた、この数年は耐えがたい苦痛だった。」
等と話し始めた。
周りは王子様の話に頷いている。
向こうにしてみれば僕は、彼らの仲を引き裂いた悪者なんだろう。
貴族の常識からしてみればそうなんだろう。
だけど、僕は、王子様の事好きでは無い。
どちらかと言えば嫌いだ。
そんな王子を放置している周りも、この国も大嫌いだ。
「よって、お前を捌きを与える。ただ命だけは取らん。働きを持って、その罪を購え!」
全くもって言っている意味がわからない。
本当にわからない。
僕は黙っていた。
黙って、スライムを解き放った。
ぼよん。
色んな所に常駐させ、働いていたスライム達が一斉に僕の元に集まってくる。
「はっ。スライムごとき集めたからと言って、何になる。」
それぞれが従属させている魔物を使い、僕の元に集まってくるスライムをドンドン撃退していく。消滅していくスライム達。
だけど、数が異様にある。
だって、僕のスライムは、街や、他の領でも働いている。
本当に、本当に沢山に育ったんだ。
倒しても倒しても集まるスライム達に高位魔物達も疲れを見せた。
素振りを、千回くらいやれば誰だってちょっとは疲れるだろう。
その隙を待っていた僕は、本当の目的を解放した。
「ひっ・・ひぃぃぃtっ。」
絶叫が会場のあちこちで聞こえる。
「なっ・・何した?」
「何をしたんだ。」
王子以外の人達がバタバタと倒れていく。
倒れた後、白目を剥いてビクビク痙攣している。
使役している主人の意識が途絶えたことで、魔物もどう動いていいのか止まってしまう。
止まった所で、結合し大きくなったスライムに身体をおさえこまれている。
もう、攻撃もできないだろう。
味方がどんどんいなくなった現状に蒼白になりながら王子と元婚約者の公爵令嬢は僕に聞いてきた。
全く下らない。
敵かもしれない人間に話しかける暇があるなら逃げれば良いのに。
「薬をもったのか?」
そんな事まで聞いてどうすんだよ。
僕は黙っていた。
黙って、二人を見ていた。
「ひっああああああああああああああああっ。」
公爵令嬢が淑女らしからぬ、声を上げた。
「なっ。何をした。私の婚約者たる。高貴なる・・ぐぅううううううぁあああああああああああっ。」
王子様も絶叫した。
そして、そこに倒れ伏した。
皆皆倒れて、立っているのは僕だけだ。
ピクピク白目を剥いている。
そして失禁した。
腹の中のスライムが吸収してたのを体に戻したのだ。
あちこちで匂いがする。
皆失禁してるのだろう。
僕は笑いたいが我慢した。
ここでは感情を出さない。
そう教えられたからだ。
でも鼻で笑いたいくらいおかしな人達であることは間違いない。
腹の中に、弱みを握られているっていうのに、そのマスターに危害を加えるって言うんだから本当に、頭がどうかしている。
僕は知っていた。
皆、僕をバカにしていた事を。
その癖、僕のスライムを利用していることを。
会えば、その胎内に僕のスライムがいるかなんて何となくわかる。
だって僕の従属魔物だもの。
その気配を感じることが出来るんだ。
だから、この学園、ほぼ全員が腹の中にスライムを入れていた。
そりゃ楽だよね。
トイレに行かなくて良いんだから。
だけど、どんなに弱くても魔物は魔物。
腹の中から暴れられたら、人間は弱い。
腹の中を溶かしたり、食いちぎったり出来たかもしれないけど、僕は親切だからそんな事をしなかった。
したのは排泄物を戻しただけ。
だって、腹の中にいるんだから、返すのだって簡単だ。
苦痛だけが拷問じゃ無い。
羞恥心を刺激する事だって拷問になる。
少し親切にしてくれた騎士団の人が教えてくれたことだ。
その時は牢獄の掃除をしてあげたんだっけ。
騎士団員の話を参考にしてスライムに命令を下してしまったけど、皆が汚らしいって僕の事を蔑むから、ちゃんと期待に答えてイヤらしい仕返しをしただけだ。
生涯奴隷にしようとしていた相手に対しては、優しいくらいじゃないだろうか。
僕はスライムを呼んだ。
スライムは集まり、大きな固まりになった。
僕が乗りたいと心で願えば形を変えて乗せてくれる。
「行こっか。」
口に出すと、ボヨンボヨンとスライムは揺れて、大きくジャンプした。
ボヨン・ボヨン・ボヨン・ボヨン。
大きくジャンプして移動する。
振動はスライムが吸収してくれるから全然無い。
後ろから、この国で働いてくれていたスライム達がついてくる。
最後の奉公とばかりにウゾウゾ道を這うスライム達が王都を綺麗にしていってくれる。
普通行く先を綺麗に輝かせるもんじゃないかな。
なんて、思うけど、もうどうでも良い。
だって、遠い国の言葉で”立つ鳥後を濁さず”って言うじゃないか。
そうとなったら、これ以上無く綺麗にしていってやろう。
未練なんて全部消え去って。
しがらみも全部全部、消し去ってしまおう。
ナメクジが這った後みたいに、キラキラ輝いた道が残るなんて。
汚いって言われていた僕の通った道に相応しい痕跡だ。
まぁ、王都を過ぎて、農地を通ったら作物も消えちゃうかもしれないけど。
それは仕方がないよね。
僕はこみ上げてくる喜びを我慢すること無く一人大笑いした。
これで、自由だ!
と。
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2025/7/7修正