討伐依頼
第80部分 討伐依頼
男爵から依頼があり、漁村ガロンで調査をしている。
近くの山で黒いドラゴンを見たと言う情報があり、山に入った冒険者や狩人が行方不明になっているとのこと。
「ドラゴンなんて本当にいるのか、隠れるところなんてどこにも無いぞ」とベン、
「もう2日目ですからね」とヤシロ、
「たしかに。明日、南側を捜索したら終わりにしよう」と俺、
温泉宿に2日間泊まったが、もう温泉にも飽きた。
「水の中でも呼吸できるドラゴンだと、湖の中か、沼の中かもしれません」とアレックス、
「えっ、水の中で呼吸できるドラゴンもいるの?」
「エラで呼吸できるドラゴンはいます」
「だとしたら沼か、沼は3つ有ったな、ユリとレンは明日、そこを重点的に偵察してくれないか、俺達は南側を徒歩で捜索する」
「了解」とユリ、
「今日はもう仕事は終わりニャンね」とレン、
「そうだ、自由時間だ」と俺、
「チョット、出かけてくるニャンな」
漁村ガロンはレンの地元だからなにかと仕事がしやすい、情報の入手なども簡単に出来る。
レンは知り合いも多く、自由時間には昔の知り合いの所で飯を食ったり、仕事を手伝っているようだ。
「俺は、温泉にでも入るか」
着替えとタオルを持って、温泉に入ることにする。
「私もいくです」とヤシロ、
「ヤシロ、この温泉は混浴だ。おれと一緒で大丈夫か」と俺、
「全然大丈夫です。ミチルとは離れますから」とヤシロ、
「そうか、ヤシロの背中を流してやろうと思ったんだけどな、フフフ」
「け、結構です。アレックスも一緒に行きますから、私たちを覗いたら鉄拳で制裁しますよ」とヤシロ、
「ミチル、私の裸をみるなよ、フフ」とアレックス、
「覗かんわ」と俺、
脱衣所で裸になり、タオルを持って温泉に浸かる。
「クハー、気持ちいいな」と声が出る。
疲れがジワジワとお湯に溶けてゆくようだ。今日も山を沢山歩いたから足をよく揉んでおくか。”モミモミ”
”ガシャ”ガラガラ””ドカドカ”と言う音が温泉宿の裏側で聞こえた。
「”ドロボー””クソガキ待てえー!!」と言う声が聞こえた。
なんだろう、子供の泥棒がいるのか。
温泉から上がり、タオルで股間を隠すと音がした方を見てみる。
子供らしい影が山に駆け上がって行くのが見えた。
泥棒はイカンなあ、盗賊になってしまうとこの世界では人生積む。
いやもしかしたらもう盗賊になっているかもしれないな。
”ぶるぶる”寒う!温泉につかりなおすことにする。
少し遠くの方で”ガヤガヤ、ギャハハハ”と女どもの声が聞こえたので温泉から上がることにした。
脱衣所で服を着て、カウンターに行き、さっきの泥棒について尋ねてみる。
「さきほど、泥棒と言う声が聞こえたが、あれは何だ?」と俺、
「最近、子供の泥棒が食材を盗みに来るんです、困ったものです。山の方に住んでるみたいなんですけど、すばしっこいもので追いかけても捕まえられません」と受付、
「ほう、子供の泥棒ねえ」
気になるなあ、食い詰めて盗みをしているのであれば、ユパン孤児院で保護してやることもできる。
盗賊になっていたら斬り捨てるしかないか。
女どもの部屋に行き、ノックをする。
「ミチルだ、レンはいるか?」
「いるニャンよ」とレンが出てきた。
「レン、この温泉宿の裏山に子供の泥棒がいるらしい、明日探してくれないか、多分近くにいるから、レンが調べればすぐ分かるはずだ」と俺、
「分かったニャンよ、でもその子供どうするニャンな」とレン、
「盗賊でなかったら、ユパン孤児院に保護する。盗賊なら斬り捨てる」と俺、
「ふうん、そうニャンね。わかったニャンよ」とレン、
「じゃあ、お休み」
自分の部屋に戻り、布団に入って携帯端末で両生類のトカゲのような動物を調べるウーパールーパーみたいなドラゴンなのか?・・・・
そのまま寝てしまったようだ。
気がついたら朝だった。
「ミチル、子供の泥棒を見つけておいたニャンよ」とレン、まだ朝飯前だ。
「そうか、早いな。で、どんな感じだった」と俺、
「山の穴蔵を住処にしているニャンな、子供が2人いるニャン。同じ歳ぐらいかニャア」とレン、
「ミチル、お願いがあるニャンよ、子供達を見逃してやって欲しいニャンな」とレン、なんかレンの表情が暗い。
「どうしてだ」
「実は私もニャあ、両親が死んだ後に食い詰めて、夜に魚や肉を盗んだことあるニャンよ」とレン、
「そうなのか、うーん、悪いようにはしない。安心してくれ」
「わかったニャン、朝ご飯食べたらみんなで行くニャンな」とレン、少し明るくなったようだ。
「ミチル、あそこニャンよ」とレン、山の崖下に穴が空いており、そこにドアみたいな物が無理矢理に取り付けられている。
一応住居のようだ。
「みんな、武器をしまえ」と俺、俺の武器はアイテムボックスに収納した。
「みんなは、ここにいてくれ、俺だけで行ってくる」
崖下の洞穴まで歩いていく。”ドンドン”
「オーイ、出てこい、居るのはわかっているぞ」と俺、
ドア板の隙間から子供の眼が見えた。俺は、ドアから離れると、両手を挙げて武器を持っていないことをアピールした。
「なんだ、なんか用か?」と子供の声、
「ここに困っている子供がいると聞いて助けにきた、俺の話を聞いてくれないか」
「わかった」ドアが空くと、少年が一人出てきた。奥の方に少女も見えた。年齢は10歳くらいだろう。
「俺は、ミチルと言う者で、冒険者だ。職業は勇者でレベルは48になる」
「勇者?、本当か?証拠を見せろ」と少し驚いている。
「勇者だけのでスキル、聖剣と言う光の剣を見せよう、右手に出すぞ」と俺、
「”聖剣”」と言い、スキルを起動すると俺の右手に赤く光る剣が現れた。
「これが、聖剣だ。あの木に投げつける、見ていてくれ」
”ビュン”と木の幹に向かって光の剣を投げつける。木の幹が切断され、”ドサッ”と木が倒れた。
「ヒエエ、すごい」と少年、
「それでだ、俺は迷宮都市ドルガードで孤児院を運営している。両親が死んで生活に困っている子供に衣食住を提供し、教育や仕事を得る訓練をしている者なんだ。君たち、昨日の夜、この近くの温泉宿で盗みをしていたろう、あんな事をしていると盗賊になってしまうぞ。そうなるともう助けられなくなる」
「孤児院ってそんな物あるのか?本当か?」
「有る、なんならうちのパーティの大魔道士につれていってもらって見て確認して決めても良い、気に入らなかったらここに戻してあげよう」
「大魔道士がいるのか?よ、よし分かった。俺はロン、妹はシルビアだ。2人をその施設につれていってくれ」とロン、
「よかった、ユリ!、来てくれ」と俺、ユリを呼んだ。
「大魔道士のユリです。よろしくね」とユリ、
「オレの母さん、リンダっていう魔道士なんだけど知ってる?」とロン、
「ごめんなさい、知らないわ」とユリ、
「そ、そうか」とロン、がっかりしたようだ。えっチョット待てよ。
”目利き”彼らのステータスを確認した。
「ロン ヒューム 11歳 転職可能なジョブ”魔法使い”」
「シルビア ヒューム 11歳 転職可能なジョブ”魔法使い” アクティブスキル:人形使い(無効)」
血統ジョブの”魔法使い”になれる子供達だ。
この2人が仲間になってくれると助かる。
「ロン、この大魔道士のユリは捨て子だったのを俺が助け、冒険者ランクAの大魔道士まで育てた。俺達と一緒に来てくれたら、盗賊になったり、奴隷狩りに怯えたり、食う物に困ってコソ泥なんかしなくて済む。希望があれば魔法使いのジョブにしてあげる事も出来る。勇者の俺が約束するぞ」と俺、
「わかった、その施設を見せてくれ、そしてまたここに戻ってきてくれないか」とロン、
「ユリ、たのむ」と俺、
「じゃあ、私がパーティ招待するから承認してね」とユリ、
「うん、わかった」とロン、シルビア、
「では、テレポートするよ”テレフィールド”」とユリが詠唱すると”ブゥン”と消えた。
「ミチル、穴の中から死体の臭いがするニャンよ」とレン、レンが穴の中に入るような動きをした。
「レン、待て、ロン達が帰ってくるまで待とう、礼儀だ」と俺、10分ぐらい待ったろうか”ブゥン”とユリ達が現れた。
「見てきた、本当だった。俺達あそこで暮らすことにするよ、本当に良いのか?」とロン、
「大丈夫だ、俺達の仕事は人助けなんだ。俺達に仕事をさせてくれ」
「分かった」
「でだ、俺達の仲間に鼻が利く者がいて、穴の中に死体があるかもと言っていた。説明してくれないか」
「1週間前くらいに、お母さんが怪我をして帰ってきて、寝込んだらそのまま起きなくなっちゃったんだ、フッェ、グス」とロン、我慢していたのだろう。
眼が赤くなった。
「そうか、それは残念だ、でもお母さんをそのままにはしておけないな。みんなで埋葬してお墓を作ってあげよう。そしてバルハラにいけるようにお祈りをしよう」
「う、うん分かった」
”アイテムボックスオープン”とボックスを開くと、中から鉄の槍とスコップを取りだした。
「穴を掘る道具は今コレしか無い、交代で穴を掘ろう」と俺、
剛力のスキル持ちであるアレックス、ベン、ヤシロと俺が交代で穴を掘る。1mぐらい掘るのが限界だった、けっこう疲れるな。
「ここに草をしきつめよう、そして遺体を運ぶぞ」
穴の下に草を敷き詰め、住居のドアを開けベットに横たわる遺体を見るために近づく。
遺体の横に座っている人形が動いた。
”ビックう!!!”と俺とレン、驚く。
「ニャギャアー、人形が、人形が動いたニャア」とレン、両手を挙げ横穴から飛び出していった。
「それ母さんの人形ね。動くから」とロン、
「お母さん亡くなってるんだろ、なんで動くんだ」
「わかんない、魔法だから。俺が生まれる前から動いているし、いつもお母さんの手伝いをしているんだ。名前はマイケルだ」とロン、
「そうか、大丈夫なのか」
「戦える人形だけど、俺がいれば大丈夫、危害は加えてこないよ」とロン、
俺とアレックスがシーツに包んだ遺体を墓穴の中に入れた。
ユリと、ベン、シルビアが草花を摘んできた。
その花も墓穴に入れた。
マイケルと言う動く人形もその花を1つ掴むと、自ら墓穴に入り遺体の横に寝転んだ。
「ロン、こいつ一緒に埋めて欲しいと言っているのか」と俺、
「分からない、シルビアは話ができるから説得してみよう」とロン、
「シルビア、マイケルに墓穴から出てくるように言ってくれないか」
「マイケル、お墓から出てきて。マイケルにはお墓の面倒をみてもらいたいの、お願い」とシルビア、
すると、ムクリと遺体の横で寝転んでいたマイケルが起き上がると墓穴から這い上がってきた。ある意味怖い。
「それでは埋めよう」スコップでかき出した土を墓穴に入れ、穴を埋めた。
崖下にころがっていた大きめの石をアレックスが持ってきて墓の上に置いた。
草花とコップに入れた水をお供えした。
「それでは、おれたち冒険者の先輩である”魔道士リンダ”がバルハラに行けるよう、みんなで祈ろう」
俺は手を合わせて、眼を閉じると一度も話したこともない魔道士リンダがバルハラにいけるように祈った。
そして子供達の事は任せてくれとも言っておいた。
「バルハラってあるのかな」とロン、ぼそっとつぶやいた。
「そうだな、俺は死んだことがないからわからない。嘘はつきたくないから、正直に言うとバルハラなんていう世界はたぶん無いと思う。
でも、人の為にと人助けをし、魔獣と戦って死んでゆく冒険者の先輩達がみんな最後に”バルハラで会おう”と言うんだ。
俺も今日、君たち兄弟を助けた、正直おれの財布から金が出ていくだけで一銭の特にもならんだろう、そしてこの後、正体不明のドラゴンと戦う予定だ。
そんな俺みたいな人間が死んだらそれで終わりと考えるよりも、死んだらバルハラで酒でも飲み優雅に暮らせるって考えたほうが夢があって良いのかなと思うんだ。そして俺も死ぬ時は”同士よバルハラで会おう”と言いながら死にたいと思っている。あっなんか矛盾してるな俺」適当な言葉でごまかしておいた。
「よし、もういいだろう、行こう」
「ユリ、ユパン孤児院にロン達を送り、ジーナに面倒をみてくれるようにお願いしてきてくれるか」
「了解」とユリ、
「では行きましょうか”テレフィールド”」ユリたちがテレポートした。
人形のマイケルは横穴の住居から雑巾をもってくると、墓石の泥を拭き取り始めた。
こいつは、ズーと動き続けるのだろうか、そしてこの墓を守るのだろうか。
すごく気になるが、唯一この人形と話せるシルビアはもう孤児院に行ってしまった。
人形のマイケルに魔道士リンダが亡くなった理由を聞けないだろうか。
「”マイケル、魔道士リンダ、怪我、なぜ?、どんな魔獣にやられた?”」と俺、口に出しながらジャスチャーでコミュニケーションを取って見た。
すると、マイケル、山のある一点を指さし、その場所に何かがいると俺に伝えてきた。
「分かった、魔道士リンダの仇は俺達がとる。そしてそいつの首を見せてやるから待ってろよ」
後ろで”ブゥン”とユリが戻ってきた音がした。
「ユリ、レン、分かったぞ。どうやら魔道士リンダは俺達が追っている魔獣にやられたようだ、なんらかの毒を持っているかもしれない気をつけて偵察してきてくれ、方角はあそこだ」と人形のマイケルが指さした場所を示すと。マイケルが同じ動作で場所を示した。
「分かった、見てきます。待っていてください」とユリ、
「レン、行きましょう」ユリは賢者の杖にまたがり、レンを後ろに乗せると”フライ”と詠唱し、人形が示した方向に飛んで行った。
しばらく待つと、”ブゥン”とテレポートで戻ってきた。
「ミチルいました、中型のドラゴンです。毒みたいなドロドロした沼に隠れているようです」とユリ、
「索敵するとニャ、いたニャンね。沼の中に隠れているニャンよ」とレン、
「なるほど、どおりでなかなか見つからないわけだ」
「ベン、水の中に住んでいる魔獣の弱点はなんだ」
「電気攻撃は有効だろうな、体温が低いだろうから火や熱にも弱いだろうな」とベン、
「ユリだとライトニングアローやファイヤボール、俺とヤシロだとサンダースピアか」
「手に負えさそうだと、プラスチック爆弾使うか」と俺、
「ドラゴン相手だといつもそれ使うな」とベン、
「まあ、爆弾は最終手段と言うことだな。でも弱くないと思うぞ、魔道士がやられているんだからな」
「ミチル、爆弾を使うときは私がやるニャンよ、色即是空で近づけば問題ないニャ」とレン、
そうだ、前回もそうやっている。
”アイテムボックスオープン”とボックスから転送ビーコン別名”プラスチック爆弾”を取り出した。おっこれがラストの一つだ。
「レン、これを渡しておく、くれぐれも注意な両側のボタンを同時に押してLEDが点灯したら15秒後に爆発する、安全な場所まで逃げるんだぞ」
「はいニャ」
「では行くか、ユリ、テレポートたのむ」と俺が言うと、人形のマイケルがレンの尻尾を
掴んで、自分も連れて行けとのジャスチャーをしているのが見えた。
「レン、その人形もつれて行ってやれ、レンの事が気に入ったみたいだな」と俺、
「そうニャンな、じゃあこのリュックのポケットに入っておくニャンよ」とレン、爆弾をリュックに入れ、サイドポケットに人形のマイケルを入れた。
”テレフィールド”ユリが詠唱し、俺達は毒沼の近くにテレポートした。
「これは、なんかヤバイ雰囲気あるね」と俺、
「ああ、大物だな」とベン、
「よし、沼の外におびきだそう、沼だと勝ち目無いし、素材も回収できん」
「じゃあ、私が魔法を沼に向かって放つね、体制はどうしましょうか」
「敵を見たこと無いからどうにもな、とりあえず成り行きでやって、ヤバかったらテレポートで逃げよう、ではパーティ編成しなおしておこう」ユリが兄弟を孤児院に送る時にパーティを解除しているので、組み直しておく。
「レン、あそこの高い岩の上に陣取れるか」とベン、
「行けるニャンね」とレン、岩の上に登って弓を構えた。
すると、レンのリュックのポケットに入っていた人形のマイケルが抜け出し、人間の大きさまでムクムクと大きくなった。岩の上からレンと一緒にこちらを見ている。
あの人形、ゴーレムのノリユキと同じだ。
「ミチル、槍を2本くれないか」とベン、
「分かった」ボックスから鉄の槍を2本出し、ベンに渡した。
「準備はよさそうだ」とベン、
ユリは賢者の杖にまたがると”フライ”と詠唱した。右手にはオリハルコンの魔法杖を持っている。
「では始めます」とユリ、沼の上空から”ライトニングアロー”連続で3つ放った。
光の矢のような物が沼に消えてゆく。すると、
”ゴッゴゴ”と音がして、沼から巨大で黒いウーパールーパーのようなドラゴンが姿を現わした。
「なんだアレ、デカいな」とベン、
「岩の手前まで引き寄せて攻撃だ」とベン、
たしかに、沼に逃げ込まれても困る。
「よし、今だ攻撃!!」とベンの声、
「”ホーリーランス光の槍””サンダースピア””槍投擲”」と俺、光の槍に電気のビリビリを付加して投擲した。”ビュン”とドラゴンに向かって飛んで行く、
”プニュ”と刺さり、ビリビリとしたようだが、ドラゴンはあまりダメージを受けていないようだ。ヤバイ予感がした。
ユリが「”アイスアロー””ライトニングアロー””エスプロ”」と3連で魔法を使う声が聞こえ、全てドラゴンに命中するが、ダメージは与えられていないように見える。
同様に、アレックスの気功砲弾、ヤシロの槍投擲も効果がないようだ。
「ベン、アレックス、ヤシロ、集まれ”テレフィールド”」と俺、レンがいる岩の上にテレポートした。
「レン、ヤバイ俺達の攻撃がまったく通用しない」
「ミチル、あのドラゴンの両目に魔法矢を何本も打ち込んだニャン、あいつ全く気にしていないと言うかニャ、元々あのドラゴン眼が見えていないのかもニャン」
たしかに、眼球の様な物がなく、真っ黒く皮膚で覆われている。眼が退化しているのかもしれない。
「いったん退却して、作戦を立てなおそうか」と俺、みんなを見ると、同じ考えのようだ。
現時点で有効な攻撃方法が無い。爆弾を口にいれようにもあのドラゴンは口を閉じたまま移動し吠えもしないからムリそうだ。
とそのときだ、
人形のマイケルが、レンのリュックから爆弾をひょいと取り出すと、それを持って、岩山を下り降り、ドラゴンに突進した。
「待つニャン」とレン、後を追おうとした。
「まて、レン危険だ。あいつに任せてみよう」と俺、
あの人形、相当知能が高い、俺達が話していた内容を理解していたようだ。
爆弾の扱いも分かっているのだろう。
ドラゴンの間合いに入りそうだ。
人形のマイケルが爆弾の起動スイッチ2つを同時に押したのが見えた。
「あいつ何すんだろう」とベン、
ドラゴンの前に人形のマイケルが踏み出した。全くの無防備だ、そしてサイドステップをして、わざと足音を立てている。
「あいつバカか、ドラゴンに喰われるぞ」とベン、
「ベン、それだ。あいつは初めっから飲み込まれる覚悟なんだ」
「えっ」とヤシロが言ったその時。
”パクッ”ドラゴンが大きな口を開け、人形のマイケルを丸呑みした。
”クチャ””クチャ”とドランゴン、二回ほど噛むとマイケルを爆弾ごと飲み込んだように見えた。
次の瞬間”ドガーン、パラパラパラ”と大きな音、ドラゴンの腹が裂け大きな穴が空いた。
ドラゴンは仰向けになると、ピクピクと痙攣している。
「ユリ、マイケルの特攻攻撃を無駄にするな。あの腹の穴にエスプロを3発連続で打ち込んでくれ」と俺、
「このう!”エスプロ””エスプロ””エスプロ”!!」とユリ、爆裂魔法のエスプロをドラゴンの腹の穴に叩き込んだ。
”ドスン””ドスン””ドスン”とドラゴンの腹の中で爆裂魔法が炸裂する音が聞こえた。
ドラゴンの口から煙と火が飛び出した。
ありゃ確実に倒したな。
ドラゴンに近づき”魔獣解体”とスキルを使うとポイズンドラゴンの皮、爪、牙、骨の素材に解体された。
素材の横に人形マイケルの一部と思われる布の切れ端が地面に落ちているのを見つけた。
「みんな、仲間の遺体だ、全部集めるぞ」と俺、一枚一枚と布の切れ端を拾うことにする。
レン、ベン、ユリ、アレックス、ヤシロ、仲間全員で布の切れ端を全部集めた。
布切れ端はかろうじて布の柄が分かる程度で焼けて茶色く変色している物がほとんどだ。
アイテムボックスからビニール袋を取り出し、それに布きれを入れた。
ドラゴンの素材も全部アイテムボックスに収納しておく。
「みんな、魔道士リンダの墓にもどるぞ、集まってくれ」と俺、”テレフィールド”と詠唱した。
先ほど埋めた墓を掘り返し、リンダの横にマイケルの遺体を埋めた。
「短い間だったが、人形のマイケルは俺達の仲間だった。勇敢なマイケルがバルハラに行けるようにみんなで祈ろう」
「魔道士リンダと人形のマイケルがバルハラで幸せに暮らせますように」
俺は、両手を合わせて目を閉じた。
「”同士よバルハラで会おう”」
そんな声が聞こえた気がした。
男爵にポイズンドラゴン討伐完了の報告をし、冒険者ギルドにポイズンドラゴンの素材を売っぱらう、金貨8000枚であった。
ユパン孤児院にロンとシルビアに会いに行き、マイケルの最後を伝えると、2人は泣きだしてしまった。後日もう一度来ることにしよう。2人には魔法使い、さらに魔道士になってもらうつもりだ。
孤児院の菜園で育てているトウモロコシの状態を見た。もう収穫できそうな状態である。
町で食材を買って帰ることにした。
家のドアを開けて、キッチンのジーナに食材を渡す。
「ありがとうございます」とジーナ、いつも可愛いなお前は。おれより年上で年齢詐称だけど。
自分の部屋に入ると、先客がいた。
スーツを着た、巣鴨さんによく似た人間がテーブルの椅子に座ってこちらを見ていた。
”目利き”でステータスを確認する。
”不正検知システム アクティブスキル:ターミネート パッシブスキル:アドミニストレータ”
「初めまして、ミチル・タサキ殿、私こう言う者でございます」と不正検知システム、
名刺を出してきた。内容は俺がさっきステータス確認で見た内容だった。
「は、はあ。俺は、この世界の初期パラメータをデザインしたミチル・タサキだ。よろしくな」と俺も同様に自己紹介した。
「やはりそうでしたか、ゲームデザイナーのタサキさまでしたか」と不正検知システム、
「実は、この度、不正を検知しましたので、いくつか確認したく伺いました」
「不正とはなんだ」と俺、
「今回のポイズンドラゴンですが、絶対に倒せない魔獣でしたのに、なぜ倒せたのでしょうか?なにか不正をしたのではないかと思いまして」
「そうか、話は長くなるが、俺がなぜここにいるか、どうするつもりなのか話して良いか?」
「どうぞ、私、時間は自由ですので」と不正検知システム、
「と言うわけだ、話が長くてすまん」と俺、今までの俺の行動について全部正直に話した。
「なるほど、そうでしたか、この世界の人類が生まれていない時代にヒュームが3人現れまして、バグだと思いターミネート(消去)したのですが、そういうことでしたか、ハハハ」と不正検知システム、
3人とは社長・秘書・博士のことだろう。
「俺は、この世界を発展させたいし、平和にしたいと思っている。問題あるのか」と俺、
「残念ながらございます。この世界のベースはゲームでして、平和なMMORPGなんて誰がプレイするんですか、箱庭ゲームではありません」と不正検知システム、
「私、ゲームバランスと言う物を整え、遵守させるように働いております。これ以上、私の仕事を邪魔するのであれば、私の権限でミチル・タサキ殿をターミネートしなければなりません、どうしたら良いでしょうか?」
俺、この世界で消去されたら、死ぬんだろうな。それはまずいぞ。
「分かった、これ以上余計な事をしないと誓おう、君に従うことにするよ。たしかに俺はチータだったかも知れない。そこで頼みがある。あと3ヶ月我慢してくれ、それ以降はおれはこの世界に来ても魔獣とのゲームバランスを崩すような行動はしないと誓おう」と俺、
「3ヶ月ですか、そうですね分かりました。では今日は引き上げることにします」と不正検知システム、そう言うと跡形も無く消えた。
「”ドンドン”ミチル!!」とユリの声だ。
「空いてるぞ」と俺、
「ミチル、さっき私の部屋に不正検知システムが来て、消去するぞって言われた。ミチルと相談して3ヶ月待つことにした。と言われたけど本当なの?」とユリ、
「ユリ、俺達が会ったのはこの世界の神だ。絶対的な力をもったシステム管理者のAIだ。やつに逆らったら俺達は一瞬で消去される。現実世界にも戻れなくなってしまうんだぞ」と俺、
「どうやら俺達はあいつに眼を付けられてしまったようだ、つまり色々やり過ぎたな」
「そんなあ」とユリ、
「だから、後3ヶ月で仲間のこれからをなるべく豊かにできるように行動しよう、やつは魔獣とのゲームバランスが崩れることを許さないだけで、この世界に来ることまでは禁止しないようだ。その点は安心して良い」と俺、
そうか、なるほどな。
ようやく理解できた。
ストーンサークルで会った先輩達もなにかを恐れているようだった、時間なのか、なんなのかよく分からなかったが、システム管理者を恐れていたんだ。




