復讐の準備と拳聖ユパン
第63部分 復讐の準備と拳聖ユパン
まず、大魔導師のユリと現代に戻り、半分埋められていたユリを救い出した。ユリの母親とその男は、俺がぶん殴って、警察に通報したと脅かすと化け物でも見たかのように山を下って逃げていった。
そして、俺たちが迷宮都市ドルガードの手前でキャンプしている時間と場所に、泥だらけのユリを送り届けた。
次に、俺たちが初めてストーンサークルにたどり着く時間にタイムトラベルして、過去の俺とその仲間に、俺独自に修正した攻略ノート、金貨8000枚、装備一式を渡してきた。
残りの課題は、ハイテク巨大企業の社長たちに復讐をして、ユリを元の時代に戻すことだ。
ユリを助ける時に気づいたが、耳の大きなエルフとドワーフ、猫耳族を現代につれて行くのはかなり難しいと感じた。ユリの母親と男が想像以上に驚いていたのだ。
要するに外見の問題である。
ベンの場合、エルフでなくとも金髪のモデルのような美人で非常に目立つ、その上に耳も大きく長いとなるとこれはとても無理だ。ドワーフも同様でエルフほどでは無いが耳の大きさが目立つだろう。レンは、耳を帽子で隠せばなんとかなるが、長い尻尾の問題がある。
つれて行けない理由を仲間に説明することにした。
「残念だが、俺の国は外見の偏見が強い、差別も現実的にある。本当にすまないがレン、ベン、スザンナは留守番で頼む」と俺、
「猫耳族のレン、エルフのベンは明らかにヒュームに見えませんが、私であれば、この耳を帽子と髪の毛で隠せば、ヒュームに見えると思います」とスザンナ、
「私も、ミチルの国に行きたいニャア、耳は隠すし、尻尾も隠せるニャンよ」とレン、
「私の耳は確かに大きいが、隠せばヒュームに見えないことも無いぞ」とベン、
いやー無理だって。
「うーん、スザンナがギリギリセーフの範囲だ、冷静に考えてもやはり難しい、ベンとレンを俺の国のヒュームが見るとパニックに成る可能性がある」と俺、
「今回は、俺の判断に従ってくれ、本当に大問題になるんだ、変に目立つと俺の目的を達成できなくなる。なので、今回の作戦のメンバーは俺、ユリ、スザンナ、ヤシロ、アレックスとする」
「ふん、なっとく出来ないな」とベン、
「ミチル、ひどいニャア、意地悪ニャア」とレン、
「本当に申し訳ない、不要な問題は避けたいんだ、頼む」と俺、頭をテーブルギリギリまで下げた。
「うーん、しょうがないか確かにエルフを一度もみたことないヒュームが私を見ると驚くだろう」とベン、
「そうニャンか、残念ニャア」とレン、
どうにか納得してくれたようだ。
「そして、準備だが、俺の国には武器などの装備は持って行けない。服は明日ユリと一緒に服屋に行き、俺の国でもとりあえず問題なさそうな服を選んでもらってくれ、よろしくな」
「ハーイ、質問です」とスザンナ、
「バタフライナイフは武器になるんですか?」
バナナはお菓子に含まれるのですか、みたいな質問だけど。物騒な質問だな。
「うーん、ぎりセーフかな、規制があるんだ。片刃で刃渡りの短い物で手のひらに収まる小さいナイフであれば問題はないだろう」まあ俺の基準だが。あと、お菓子は銅貨3枚以内でな。
「ふーん、そんな決まりあるんですか」とスザンナ、
「では、準備よろしく頼む。あと、スザンナは耳を隠すこと」
「スザンナ、ユリ、新しいゴーレムを作ろうぜ」と俺、
「そうでした、お願いします。今度はお願いがあります」とユリ、
「なんだ、お願いって」
「今のゴーレムなんだけど、ちょっと怖いかなあって思ってます。もう少し可愛いほうが良いんですけど…」とユリ、言いにくそうだ。
「うーん、たしかに外見が怖いな」
盗賊のアジトに殴り込みに行くには迫力があって良いのだが、まあこれからはそういうことも減るだろう、大きさとかは外見だし、強さとはあまり関係ないか。
「ああ、いいよ。可愛い女の子タイプの感じに作ってみよう。名前が男だからそこだけ気になるが、ユリの従魔なんだし、主人のユリが良いなら問題ない」
「ありがとう、そうする」
「スザンナ、新しいゴーレムの作成よろしくお願いします」とユリ、頭を下げた。
「スザンナ、今度はユリのリクエストで女の子タイプだ、ユリと同じくらいの身長で良いだろう、服も共有できる。今回は素材をミスリルではなく、オリハルコンで作ってみると良いと思う。
武器は、脇差とタガーの二刀流で良いんじゃないかな、今でもそこそこ剣術が使えるわけだし問題ないだろう。防具は黒竜革で、リュックも竜革で作ってくれ。あと、そうだな、女の子タイプだから服もいるだろう。服を着せてその上から防具を付ける形で外見的に問題ない形で頼む」と俺、
ゴーレムを作るとき、装備も全て一緒に作成しないと、大きくなったり、小さくなったりする際に問題となるのだ。事前に決めておく必要がある。
「なるほど、素材を準備しておきます」とスザンナ、工房にむかった。
「準備できました」とスザンナ、
早いな。
「みんなー、ゴーレムの最終形態つくるから見たいヤツ来てくれ」と俺、2階にいる仲間にも一応声をかけた。レン、ベン、ヤシロが降りてきた。ユパンとアレックス、ユリはリビングにいて、ジーナはキッチンで作業をしていた。結局、全員で、工房に入って見ることになった。
工房のテーブルを見ると、オリハルコンのインゴット、黒竜革、竜革、布、エゾキンの足裏革、が鍛冶師のマットの上に置かれていた。
「スザンナ、オリハルコンのインゴットの数は適正なのか」と俺、
「先輩からもらったノートに記載されているミスリルの数と同じで、それに武器の分を追加してます。大丈夫のはずです」とスザンナ、
「では、今回は女の子タイプだ、ユリと同じ身長で頼む」と俺、
「分かりました、ではやります。”アイテム作成”」とスザンナ、スキルを使った。
光る素材、”ボフッ”と煙が立ち。オリハルコンの人形が完成した。
”目利き”と俺もスキルで鑑定しておく。”オリハルコン製の人形、最高品質”と確認できた。
「スザンナ、さすがだな。最高品質だ」と俺、
「ユリ、こんな感じで良いよな」とユリにも聞いておく。
「すごいです、ばっちりです。私よりも可愛いですねフフフ」とユリ、
「そうだ、スザンナこの人形にスキルカードを結合できないか?速くなるとか、力がつよくなるとか?」
「うーん、速さ、力ですか、出来ますけど、それよりも面白いカードがあります」とスザンナ、カードケースを取り出すと、一枚取って俺たちに見せた。
「”スマートスキン”擬態のカードです」そのカードにはカメレオンの絵が描かれていた。
「ほう、それは面白そうだ、ヒュームみたいな外見になれたら良いな、ヤロウ」
オリハルコンの金色の人形は目立つだろう、できれば自然な外見だと便利だ。
「そうです。そうなんです、ではやります”スキルカード結合”」とスザンナ、オリハルコンの人形にスキルカードを結合させた。すると、オリハルコンの人形の色が変わり、ヒュームの皮膚のような肌色になった。まるでヒュームの少女が眠っているようだ。
「すごいぞ、スザンナ」と俺、
でもなんか服装のデザインが野暮ったいな。
「スザンナ、人形に対して服装が不釣り合いだな。もっとこうヒラヒラというか可愛くても良いんじゃ無いか、うーん、ジーナのメイド服のイメージかな、色も地味すぎる」と俺、
「ユリ、なんか服のリクエストないか?」ユリにも聞いてみる。
「そうですね、もう少し可愛い格好させてあげたいな、レースとかヒラヒラ、フワフワみたいな、服の色は紫が良いな」とユリ、
「メイド服のようで、フリフリ、フワフワ了解です」とスザンナ、棚から染料を取り出すと人形の横に置いた。
「来ました、キテマス、イメージが膨らんできましたいくです”アイテム魔改造!”」とスザンナ、マイスターで覚えたアイテム魔改造のスキルで、人形の服のデザインを変えた。
おお、これはまさに”ゴスロリ”と言うファッションに近い。
それのもっと普通のタイプだ。これはセンスが良いな。
「スザンナ、ナイスだセンス良いな。派手すぎず、地味すぎず可愛いな」と俺、
「私の作業としては完了ですね」とスザンナ、疲れたようだ。
スザンナもスキルを発動させるとMPを消費する。MPが少なくなると体がだるくなり、頭も痛くなる。
「スザンナ、ありがとう。さすがだ」
「では、これからはユリの仕事だな。たのむぞ」
「はい、では始めます。”ゴーレムクリエイト”」とユリが詠唱すると、オリハルコンの人形に細かな模様が入り、ゴーレム化したように見えた。
ユリが自分の鞄からミスリルゴーレムの”ノリユキ”を取り出してテーブルの上に置く。
「ノリユキ、体をこれにグレードアップするんだ、よろしくね」とユリ、ノリユキに話しかけた。
「ご主人様、ありがとうございます。これですか、素晴らしい」とノリユキ、
「ノリユキは男なのか?次は女性の体になるが問題はないのか?」と俺、一応少し感情もあるから聞いておいた方が良いだろう。
「ミチル、私はゴーレムで生殖器や性別は無い。問題ない」とノリユキ、
「おおそうか、安心した。ユリのゴーレム系のスキルも全て”中”から”大”になった。次の体はミスリルからオリハルコン製にグレードアップする。いまよりももっと動けるようになって、能力も格段に上がるはずだ。これからもよろしく頼む」と俺、
「グレードアップもしていただけ大変光栄です。ご主人様、ありがとうございます」とノリユキ、ユリに頭を下げた。
今のノリユキはユキの従魔であり、俺には一切敬意を払わない。ほとんど無視だ。まあ、しょうが無い。
「ノリユキ、ではそこに横になってください」ノリユキが小さいからだのまま、テーブルの上で横になった。
「では始めます”スピリットムーブ”」とユリが詠唱した。すると、ミスリルゴーレムの口から白く輝く煙が出てきて、オリハルコン製の新しいゴーレムの口に入っていった。
”ピクピク”と新しいゴーレムの指が動いた。”ムクリ”とテーブルの上で起き上がると、”ピョン”と床に飛び降りた。
「オリハルコンゴーレムのノリユキでございます、よろしくお願いします」としゃべった。
「”女の子の声だ”」と全員でハモった。
「こりゃ、俺たちまたスゲー物を作っちまったな」と俺、”アイテムボックスオープン”と言い、中からMP回復ポーションを取りだした。
「ユリ、これ飲ませてくれ」とユリに渡す。従魔のゴーレムは主人以外からMP回復ポーションを受け取らない。
「お兄ちゃんありがとう」とユリが受け取る。
「ノリユキ、MP回復ポーションを飲む?」とユリがオリハルコンゴーレムのノリユキに渡す。
「ご主人様、ありがとうございます。頂きます」とノリユキ、MP回復ポーションを受け取ると、
”ゴクゴクゴク”と半分くらい飲んだ。
「ご主人様、この新しい体は、ずいぶん軽くて、とても動きやすいですね。ありがとうございます」とノリユキ、
「ミチルとスザンナのおかげです。ノリユキからもお礼を言ってください」とユリ、
「ミチル様、スザンナ様、新しい体をありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と言うと頭を下げた。ほう、これは凄い、さらに自我があるように思えた。
「ユリ、ノリユキだがかなり自我があるように見える。いままではユリの従魔で、手伝いのようなことばかりやらせていたが、少し立ち位置を変えようと思う。出来る範囲で良いからそのように指示してくれ」
「ノリユキ、俺たちは仲間だ。お前にはどうやら感情もあるみたいだし、外見は人間そのものだ、これからはお前を仲間として扱うから、色々俺たちの仕事を手伝ってくれ。よろしくな」と俺、
「ノリユキ、お前はこれからは仲間の扱いとします。私たちと仲間のように接してください。私たちはお互いを呼び捨てで呼び合います。そして私とは友達になってください。これは命令です。よろしくね」とユリ、ユリが手を伸ばすと、ノリユキがそれをつかんだ。
「ユリ、分かりました。よろしくお願いします。皆さん、よろしくお願いします」とノリユキが俺たち全員に頭を下げた。
俺の頭に”オリハルコンゴーレムのノリユキが仲間になった”と言うメッセージと音楽が流れた気がした。
「ミチル殿、少し良いかな」とユパン、後ろにはアレックスが立っている。
「明日の夕方、手合わせをやろうと思っておる、そこでわしが認めれば、アレックスは拳聖となる」とユパン、
「そうですか、分かりました。仮に不合格の場合は再チャレンジは可能なんですか、引き続きご指導していただくことは可能でしょうか?」と俺、
「再チャレンジは無しじゃな。勇者への教育も終わり、アレックスへの訓練も十分した。これからは各人が鍛錬すればよろしい、ババアはもう去る時期と心得ておる。これが終われば、わしは家に帰るつもりじゃ」とユパン、
「それでじゃ、明日、ユリに少し時間を取ってもらいたい。行きたい場所があるでのう」
とユパン、
「ユリにテレポートを頼むだけです。問題ありません」と俺、
「そうか、では明日の午前中少しの時間で良い」とユパン、
「ユリ、明日は、ユパン様をつれて何回かテレポートしてくれ」
「はい、師匠を連れて、テレポートですね。問題ありません」とユリ、
ユリもユパンのことを師匠と呼ぶようになっていた。瞑想の訓練を受けていたからだろう。
次の日、ユパンは朝飯を食べると、町に買い物に行ってきたようだ。購入した物をリュックに積めたようだ。
「ユリ、では頼む」とユパン、ユリに頼んでいる。前日場所はユパンとユリで相談していたらしく、地図をみながらなにやら話をしていた。おそらく、ユリが行ったことの無い場所がほとんどだから、テレポートした後で、フライの魔法で空を飛んで移動するのだと思う。であれば、俺がついて行かない方が良いだろう。
2人は2時間ほどで帰ってきた。
「ユリ、問題なかったか?」とユリに確認する。
「ほとんどが、お墓でした。あといくつかは、この屋敷に今だれが住んでいるか確認してました」とユリ、
「ほう、なるほどな」ユパンの昔の仲間のお墓参りに行っていたのか。
「ユパン様、どうでした?」と俺、
「ユリと初めて空を飛んだ、あれは鳥の気分じゃのう、楽しかったぞフフフ」とユパンが笑いながら答えた。どうやらユリとのテレポートツアーには満足してくれたらしい。
「ユパン様、では今日の夕方、この迷宮都市ドルガードにある闘技場にて手合わせを行いましょう。闘技場はお祭りの時以外は使用しないので問題にならないでしょう」と俺、
「ふむ、あそこか。まだ在るんじゃな、あそこではずいぶん戦ったもんじゃ、フフ面白いのう」とユパン、
それから、俺たちはヤシロ、スザンナ、ユリ、アレックスが現代に行く際に着る服を買いに行き、俺は今日の夕ご飯に作るカレーの材料を買って帰ってきた。時間的にはもうそろそろだ。
「アレックス、装備は無しで素手なんだよな」と俺、
「そうだ、素手と素足でやることにした」とアレックス、
「アレックス、勝てないよな」と俺、正直な話、ユパンには勝てそうも無い。
「もちろんだ、師匠には勝てない。だが全力でぶつかって認めてもらえればそれで満足だ」とアレックス、
「だよな、がんばってくれ。でもあまり無理しないでくれ」と俺、
「ああ、任せてくれ」とアレックス、腕を持ち上げて拳を握って見せた。
「ユパン様も準備は良いですか?」
「わしは、いつでも大丈夫じゃ」とユパン、
「では全員で庭に出ましょう」俺たちは庭に出るとユリのテレフィールドで闘技場まで移動した。メイド長のジーナも観戦したいと言ったので、ユリは2回往復した。
ここに来るのも久しぶりな気がする。闘技場には中央に真四角な格闘場があり、その周辺を観客席がすり鉢状に取り囲んでいる構造だ。
格闘場に上がると、砂や、落ち葉で汚れていたので”マルチリペア””クリーニング”で戦いの前に、綺麗に修復し掃除しておいた。
「では早速はじめようか、アレックス」とユパン、近くまで歩いていくと、階段を上らずジャンプし格闘場に上がった。履いていた靴をその場で脱ぐと、脇にある階段の場所に置いた。腕をグルグル回し始めると、演武をし始めた、自らあみだしたと言う”獣拳”の演武だった。
腕や足を振る度に周りの空気が揺れるおとが響いた、全く無駄の無い優雅な動きに、俺たちはまるでダンスを見ているかのようか感覚になった。
”ブオッ”最後に正拳突きのような型を見せると、
「おお、すごい」とアレックス、なにか感じたようだ。
”パチパチパチ”とレンが拍手する。拍手しても良いな、とおれも
”パチパチパチ”と拍手をした。観客が俺たちだけではもったいない、そんな演武だった。
アレックスも壇上に上がる。階段のところでブーツを脱ぎ。格闘場に足をふみ入れると、そこでお辞儀をした。
「オッ、始まるぞ」と俺、
「アレックス、わしを殺すつもりでかかっておいで」とユパン、手を前に突き出すとクイクイと手を動かした。
「師匠、では参ります」とアレックス、ユパンに向かってゆっくりと間合いを詰めていく。
アレックスの体が少し沈んだと思ったら、ユパンにキックをしていた”バシン”と受け止めるユパン。
ほう、目にもとまらぬ速さとはコレのことだな。と思った。
それから、アレックスはユパンに何度も攻撃をするが全てブロックされた、アレックスも疲れたきたようだ。
今度はユパンが仕掛ける番のようだ、ユパンが間合いを取り、同じように体が沈むと見えなくなって、アレックスにパンチをしているところで姿を現わす。
”ゴン”と言う音をさせながら、アレックスがブロックすると、ユパンは次々と攻撃を繰り出した。
アレックスは全て見切っているようだ、ブロックし、かわすことができている。
「ほう、アレックスもずいぶん上達したな、ユパン様の攻撃をうまく防いでいる」と俺、
がいうと”ドス”と言う音と同時にアレックスが吹っ飛んだ。直ぐに立ち上がり、
「まだ、やれます」とアレックス、
「フン、手加減するなとワシが言ったのを忘れたか、本気を出せ!」とユパン、
「ウォー」とアレックスが叫ぶと、ユパンに突進した。あの型は熊の型か?というような猛烈な突進だ。間合いに入ったところで”ブオ”とアレックスのパンチと言うか、張り手みたいな攻撃が何回か繰り返された。それも全て”ガン””ゴン””ドン””ガコ”とユパンが全部受け止めてしまう。
「これくらいで、もう良かろう。勝負をつけようか」とユパン、両手を前に出すと
猛烈な連続攻撃を繰り出してきた。アレックスがずいぶん受け止めたようだが、何発かもらったようだ。”ガクッ”と膝を床に付けると、バタッと前に倒れた。
「あっ、助けないとだめニャンな」とレンが立ち上がった。
「まて、未だだ」とベン、するとアレックスがムクリと立ち上がった、でもなんか足がプルプルしてるんじゃないのあれ。
「アレックス、あしがプルプルしてるニャ」とレン、
「ミチル、もう止めるにニャン」
「いや、止めるタイミングはアレックス次第だ、あいつは自分の限界までやるだろう」立ち上がったアレックスの目にはまだ闘志が残っているように見えた。
アレックスが、腕を上げて、構えた。
「ほう、立ち上がったか、根性はあるか」とユパン、今度はユパンが突進した。スッと見えなくなる。”ゴギン””ガン”と言う音と共に、ユパンの姿が現れた。ユパンの右のキックがアレックスの左肩に入っており、アレックスの右手の正拳突きが、ユパンの胸に当たっている。2人同時に”バッ”と離れ間合いを取った。
アレックスの左腕がだらりと下がっている。骨が折れたか脱臼したのだろう。
ユパンは胸を手で押さえている。
「ほう、捨て身でカウンターを狙ったか、やるのう、効いたぞ」とユパン、
「では終わらせよう」とユパン、スッと音も無く消えると、アレックスの後ろに現れ、アレックスの腕をつかむとグイっと引っ張って場外の方に投げ飛ばした。
「あっ」と俺の口から声が出る。
でもアレックスはこらえた、自由の効く手でユパンの体を引き寄せ抱きしめている。そのまま離さない。そして、そのまま場外にズルズルと引っ張ってゆく。
格闘場の端までくると、ユパンを場外に放り投げたかに見えた。でもユパンは投げられずにアレックスの腕に絡まると、腕ひしぎ逆十字固めの形になった。
”バタッ”とアレックスが倒れると、痛いのか、苦しいのかもだえている。
ユパンはアレックスの腕をつかみ技を崩さない。
「師匠、降参です」自由の効く腕を技で固められ、片方の腕は言うことが利かずどうしようもなかったのだろう。アレックスがギブアップした。
初めから分かっていたが、ユパンの勝ちだ。
「まあまあじゃの」と言うと、
「ミチル殿、アレックスを治療してくれ」とユパン、俺を呼んでいる。
「はい、いま行きます」と俺、走りながらボックスからハイポーションを取り出した。
アレックスに近づいて初めて分かったが相当殴られている。
”マルチリペア””マルチリペア””マルチリペア”と何度もターゲットできる箇所を治療した。
「アレックス、これ飲め」と言って、口をあけさせハイポーションを流し込んでやった。
アレックスは眠っているように見える。少し待てば、ポーションが効いて回復するだろう。
「ユパン様も治療します」と俺がいうと、
「ここらへん頼む、こいつにやられたよフフフ」とユパン、
”マルチリペア””マルチリペア”と同じようにターゲットできる箇所を治療した。
ユパンも相当なダメージを食らっているなと思った。こんな状態でどうして立っていられるんだ。
「ユパン様もコレ飲んでください」とハイポーションを渡す。
「おお、助かるぞ」と言うと”ゴクゴク”ポーションを飲み干した。
ムクリ、とアレックスが起き上がる。
「師匠、ありがとうございました」とアレックスは立ち上がるとユパンに頭を下げた。
「おぬしもずいぶん強くなったのう」とユパン、
「合格じゃ、明日の昼頃、ステータスを開いて見るが良い、拳聖になれるはずじゃ」とユパン、
「アレックス、良かったな」と俺、
「はい、ありがとうございます」とアレックス、とても嬉しそうだ。
みんなで家に戻り、俺はカレーライスを作り、ドラゴン肉のステーキはジーナが作った。ワインとスザンナしか飲まない蒸留酒も買って冷やしておく。
その夜は大魔導師ユリと拳聖アレックスのお祝いをした、みんなで喰って飲んでおおいに笑った。
「ミチル殿、明日の朝、わしの家まで送ってくれ」とユパン、
「ユパン様、まだまだココに居てくれないですか、ユパン様の技や知識が僕たちには必要です」と俺、ユパンにお願いして見る。
「うーん、もう十分じゃろ。ミチル殿にあとは任せる。これからも人を助けて、魔王の攻撃に備えてほしい。強い仲間は多い方が犠牲が少なくて済む」とユパン、
「分かりました、約束します。人を助けて仲間を育てます」
「うんうん、お主はいい男よの、ワシが若ければ惚れていたなフフフ」とユパンが笑った。
次の日、朝飯を全員で食べ終えると、ユパンが体一つでやってきた。
「ミチル殿、ワシの家まで頼む」とユパン、
「ユリ、ユパン様が帰られる、送ろう」とユリに言うと、
「分かりました、では行きましょう」と3人で庭に出ると、
「ミチル、まってくれ私も行く」とアレックスが家から出てきた。
「ユリ、ではやってくれ」
”テレ・フィールド”とユリが詠唱するとユパンの家までテレポートした。
ユパンの家に変化は無かったが、畑が雑草でえらいことになっていた。
「畑、やりましょうか?」と俺、
「いや、ワシがあとでやるから、そのままでよろしい」とユパン、
「では、いずれまたな、魔王と戦ってもし死んだらバルハラで会おう、その時は酒でも飲もうぞ」とユパン、片手を上げた。
「ユパン様、お世話になりました。ありがとうございました」と俺、
「お世話になりました。ありがとうございました」とユリ、アレックス、ユパンに頭を深く下げた。
「アレックス、この家は私の旦那が建てた物じゃ、わしが死んだらお前にくれてやる。大切にしてくれな」とユパン、
さらばじゃと言うと、家の中に入っていった。
「帰ろう」と俺、ユリがうなずくと、
「チョットまってくれ、最後にもう一言」とアレックス、
「師匠は一生の恩人です、本当にありがとうございました。失礼します。」
とドアに向かって叫ぶと。走って戻ってきた。
”テレ・フィールド”とユリが詠唱した。
家に帰宅し、昼ご飯を食べて終えた。
そのタイミングで、
「クラスアップしますかって表示された、”OK”を答えるぞ」とアレックス、
「拳聖になれたみたいです」
”目利き”とアレックスのステータスを確認した。間違いない、アレックスは拳聖レベル1になっていた。
うん?なんでこのタイミングなんだ、胸のあたりがモヤモヤしてなんか気になった。
2階に上がり、ユパンが使っていた部屋に入る。
ユパンが使っていたリュックがベッドの横に置いてあった。
「ユパン様、忘れ物か、届けてやろう」とリュックを持つと重くて持ち上がらない。
石でも入ってんのか、と思って中を見ると大きなリュックぎっしりに金貨が入っていた。
ベッドの上にメモが残されている。
「”ミチル殿、ババアに金は不要じゃ、この金は困っている人に使ってくれ。みなさんお幸せに ユパン”」と書かれている。こんなに金貨どうしたんだ?
そうか、昨日町に行った時、冒険者ギルドでお金を引き出してきたのか。
あっ!
急いで、1階に降りると、キッチンにいたユリに、
「ユリ、急いでユパン様の家までテレポートしてくれ、気になることがある」
「そ、そうですか。分かりました。ではいきましょう」とユリ、
「私も行く」とアレックス、
急いで3人で庭に出るとユリが”テレ・フィールド”と詠唱した。
さっきまで居たユパンの家の前に戻ってきた。
”ドンドン”とノックをするが、応答は無い。ドアをゆっくり開ける。
「ユパン様、入ります」と俺、
「ミチル、テーブルの上に手紙だ私たち宛だぞ、家の鍵も置いてある」とアレックス、
俺は声に出して読むことにした。
「ミチル殿、おそらく貴方でしたらすぐに気づくと思い、手紙を残しますじゃ。拳聖ジョブは一子相伝しかも、次の拳聖に引き継ぐと無職となりますじゃ。ヒュームで400年近く生きたワシは拳聖のジョブを失うと消えて無くなるじゃろう。
じゃが、ちっとも怖くありませんのじゃ、不思議じゃのう。
これもミチル殿やアレックス、ユリ、そのお仲間方、その方々にワシの知識や技術を教えつくしたからじゃろうか、綺麗さっぱりこの世界に未練が無くなり、心が穏やかになったのじゃ。
ワシはもう歳じゃ、いままで十分に戦って正直、疲れたのかもしれんのう。
次の世代が戦い、より良い世界を作ってゆく。そんな夢をこれからゆっくりと見ようと思うとるのじゃ。
さらばじゃ同士よ、バルハラで会おう ユパン」
と書かれている。
「師匠!!」とアレックス、ユリは声も出ないほど呆然としている。
「ユパン様、貴方には負けました」と俺、
ユパンの家のベッドに、ユパンの着ていた服、冒険者ギルドカードが残されていた。
初めて見たが、ユパンのギルドカードは金色に虹のような模様でオリハルコン製に見えた。
「ユパンは”Sクラス”の冒険者だったんだな。これは、アレックスが大切にもっておくと良い、冒険者ギルドに提出はしなくても良いだろう」
「ミチル、私たちもSクラスを目指そう」とアレックス、
「そうだな、その通りだ。ユパンの為にもさらに上を目指すのじゃ」と俺、
その前に、この世界の時空に悪影響をだしているあいつらに復讐して止めさせなければならんのじゃ。
あれ、言葉使いがおかしくなったのかもしれんのじゃ。
「ユリ、帰るのじゃ」と俺、
アレックスがユパンの家に鍵をかける。
”テレ・フィールド”ユリが詠唱した。
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アレックス ★拳聖 LV1
種族:アマゾネス種 女 29歳
<アクティブ>
アイアンパンチ、アイアンキック、てなづけ、気功砲弾
★記憶破壊、内部破壊
<パッシブ>
体力上昇(★大)、回避上昇(★大)素早さ上昇(★大)、
防御力上昇(★大)、素早さ上昇(★大)、★状態異常無効
剛力(★大)、スキルコンボ(★4)、★クリティカル発生(小)
*装備
頭 黒竜革の頭巾
手 格闘家用オリハルコンと黒竜革のナックルガード付グローブ
胴体 格闘家用黒竜革のジャケット
足 格闘家用オリハルコンと黒竜革のプレート付ロングブーツ
(エゾキングオオヤモリの足裏革)
盾 オリハルコンの円盾
その他 アマゾネスのイヤリング、ダマスカスのバタフライナイフ
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