精霊と時空の試練
第62部分 精霊と時空の試練
「ミチル、明日の朝まで何して時間を潰すんだ」とベン、
「俺は特に何もしないかな」
「じゃあ、剣術の型でもやるか」と言うと、ベンはテントから少し離れると、両手剣を持ってブンブンと振り回し始めた。
「私は、本を読みます」とスザンナ、
「私は、獣拳の型や瞑想でもします」とアレックス、
レンは既に熟睡しているみたいだ。
「私になんか用かニャ」とレン、起きていた。
「起きてたのかよレン、暇なら、ここの周辺を偵察してきてほしいんだ、なんか珍しいものが在ったら教えてほしい」
「ふーんニャ、ここら辺には魔獣は居ないけど少し離れればいるみたいニャ、どんな魔獣がいるか見てくるニャよ」ムクっと起き上がり、テントから出て行った。
俺はなにをしようか、そうだユリが大魔導士になったら、現代に時空間魔法のタイムトラベルで戻り、俺をここに送った、社長、秘書、転送装置の操作をしていた女性博士、あいつら3人にお仕置きをするんだった。それに、タイムトラベルと称して異世界転送させるのを止めさせなければならない。
そのお仕置きと対処方法のシナリオを考えておこう。
まずは、ミチル先輩からもらった攻略ノートを読んでおこう。
なになに、先輩はなにをしたかと言うと、
①生き埋めされて殺されそうになっているユリを助け、キャンプの岩場にテレポートさせる。
②ストーンサークルで過去の俺たちにアドバイス、攻略ノート、装備、お金を渡す。
③俺がこの世界に転送された直後に戻り、社長らをぶん殴った上、皆殺し。そのあと、
火事になり、プラスチック爆弾の保管庫に引火。俺たちはテレポートで逃げたが、大爆発しビルごと倒壊して死者多数。
④時空の2重ループを避ける為、ユリを元の世界、同じ時間に戻す。
やりすぎだろ、なんのテロ攻撃だ、関係無い人も含めて何人殺してんだよ先輩!
うーん、③が過激すぎる!皆殺しって、対象年齢引き上げてどうすんだよ。
そうだ、ここはゲームみたいな異世界なんだし、ソフト対応に変更しよう。
でも、俺が味わった絶望や、俺が転送するまでに既に転送した約70名を殺害した罪は重いな。あいつらが帰還用にと俺に渡した”時空間ビーコン”は、プラスチック爆弾でスイッチを押したら確実に死亡する物だ。
あれだけは許せない。
そのことを、警察なんかに言っても相手にされないだろうし、裁判になったとしても権力や資金が豊富なやつらと俺では、全く勝ち目はないだろう。
なにか良い手は無いかな。
俺たちには特殊な能力、スキルがある。
そうだスキルだ、スキルを活かしてやつらに仕返しをしてやろう。
タイムトラベルはユリだとして、レンの“色即是空”は一般人だと手も足も出ないだろう。あとは、アレックスの“てなづけ”かな、アレックスが拳聖に成れば“記憶破壊”と言うスキルも使用できるようになる、このスキルは関係ない人を巻き添えにしない為に有効に使えそうだ。
よし、役者はそろっている、あとは上手く組み立てれば良い。
シナリオを準備しよう、そして俺の“カッコいいセリフ”も考えておくことにしようかな。
”④“のユリを元の世界に返すって、たしかユリにはお祖母ちゃんがいるって言っていたけど、ユリが生活に困らないように何かしてあげたい。お金を渡すか、それとも別な方法が良いか、これはもう少し考えた方がよさそうだ。
「ミチル、向こうにヤモリがいたニャ、エゾキングオオヤモリだニャよ。それと話しかけてくる木もあったニャ、苦しいよう、助けて欲しいって私に言ってくるんニャよ、助けてあげてほしいニャンなあ」とレン、偵察から帰ってきて報告した。
なに、エゾキンは日ごろから靴底でお世話になっているから、一度お礼はしないといけないなあと思っていた。それに話す木も見てみたい。
まだ、日も高いし、冒険してもよさそうだ、俺たちは冒険者なんだし。
「みんなー、聞いてくれ。レンが偵察に行き、面白いものを見つけてきた。これからそいつを狩りにいこう。そして、困っている森の木があるらしい。話す珍しい木だからついでにそれも見てこようぜ」と俺、
「話す木だと、もしかして絶滅したはずの世界樹のことか、まさか。でも自我を持っている木ってたしかそれしかないよな」とベンの呟きが聞こえた。
ベンはエルフだから、森とか木とか、それらの伝説など詳しい。なにか気づいたのかもしれない。
まあ、行って見てくれば分かるだろう。
「ミチルこのへんに居たと思うニャ、ちょっと待ってニャ」
祠から20分ほど徒歩で歩いた岩場の崖下に到着した。
「あれニャ、あの岩と同じ色で見えにくいけどあそこにいるニャンね。ちょっと待ってニャ」
そう言うと、レンは弓を構え“魔法矢”とスキルを起動、弓に光の矢をつがえた。
“ビュン”と光の矢が飛んでゆき、そのまま岩につき刺さったと思ったら、その岩が動き、色が緑色に変化した。人ぐらいの大きなヤモリが姿を現した。
擬態してカモフラージュする魔獣か、気づかないでいきなり襲われたらやっかいだな。
「見えた、行くぞ!」とベン、そう言うとエゾキンに突進した。“ドラゴンスレイヤー光の剣”とスキルを起動し、右手に光の剣が現れる。
エゾキンの足裏側を張り付けたブーツで、垂直の壁面を“ダッダッ”と蹴り上がり、エゾキンの頭に攻撃するみたいだ。
「トウ」とベンの声、エゾキンの頭が真っ二つに切り裂かれ、力を無くした魔獣だ、崖を転げ落ちた。
ベンは、勢いそのままに岩を蹴り、垂直の壁面をまるで地上を走るように、駆けて降りてきた。エゾキンの足裏革を靴底に貼ると、濡れた岩でも滑らなくなる。
「こいつ弱いな」とベンの一言、エゾキンが可哀そうだ。
「ミチル、エゾキンの足裏革はいつも大金出して買っているものです。ここで素材の在庫を確保するべきです」とスザンナ、
真っ当意見だ、反論の余地は無い。
そうだな、俺の為、スンザンナの為に在庫確保も悪くない。足裏革を大量に在庫しておけば、今後買う必要はなくなる。
「よーし皆、エゾキンを狩りまくるぞ。ヤロウ」と俺が言うと、各々でエゾキンを狩り始めた。崖下に落ちてくるエゾキンの死骸を“魔獣解体”で解体し、“アイテムボックスオープン”でボックスに格納するのが俺の仕事になった。
「レン、ちょって待ってくれ、俺が崖下にいるその真上のエゾキン撃ち殺したら危ないだろう、ちょっと待ってくれよ」けっこう危ない仕事だ、エゾキンとは言え体重80Kgぐらいはある。
押しつぶされたら大怪我する。
あっ、でもこんなTV番組あったな、上から落ちてくるボールを背中の籠に入れるゲームだ。
“ドサッ”俺の横にエゾキンが落ちてきた。
「おまえらいい加減にしろよ、下にいるとき落とすなって言ってんだろうよ!」と俺が怒鳴る。
「ミチル、それ生きてるやつです」とスザンナ、
“クエー”とエゾキンが口を開いて鳴いた。唾と口臭をもろに受けた。うーんそうだなエゾキンの口はドブのような匂いだ。
ってそんなこと言っている場合では無い、戦闘に有利なスキルを何一つ持っていない俺はパーティで最弱の男なんだ。
背負っていたオリハルコンの槍を素早く構えるとエゾキンに向けて牽制した。
「くそ、ビックリさせやがって、俺がエゾキンにソーシャルディスタンスを教えてやる」
槍を突き出せるように構えた。
すると、
“ビュン”と光の矢がエゾキンの頭に突き刺さった。これはチャンス。
「ビビらせんな!エゾキン!」と俺、そう叫びながら槍を振りかぶり上から突き刺した。
エゾキンは俺が思っていたよりも、かなり弱い魔獣で、レンの矢と俺の槍の一撃だけで倒すことができた。
これは俺だけでも倒せそうだ、俺は弱い魔獣には強んだ。という当たり前のことを思うと、解体して収納なんか後回しだ、俺も魔獣を狩ることにした。
結構倒した、わけわからんぐらい。
「もう、良いだろうエゾキンを絶滅させても良くないし」と俺、
もうこのくらい狩れば十分だろう。エゾキンは4本足だから、足裏革は1体で4枚採取できる。
「一生分の、エゾキンの靴底革を確保できたかもしれません」とスザンナ、
アイテムボックスに入れておけば腐るものでもないから、安心だな。
「レン、次は話す木だ、案内してくれ」
「こっちニャ」とレン、俺たちをさらに森の奥まで案内した。
いた、あの木だ、明らかに他の木とは違う、黒っぽい木の皮で、葉は一枚もつけておらず、そいつから湧き出る独特のオーラのような物を感じる。
警戒しながら近づく、木の魔獣とも戦ったことがあるもっと弱そうなヤツだ。こいつもそいつと同類かも、油断はできない。
「ヒュームよ、安心しろ、我は世界樹、おぬしを食ったりはせん」俺の頭の中に直接かかりかけてきた、テレパシーか?どう言うしくみだ。
「どうした世界樹、俺の仲間になぜ助けを求めたんだ」と俺、
「病気じゃ、よくわからん病気が我の根を腐らしておる。どうにかできないか、助けてくれ」
「根っこか?、近づくぞ、襲うなよ、襲ったら火矢で攻撃してやるからな」と言いながら近づく。
根を見ると、なんか土が汚れている。だれかが毒でもまいたのか、そのせいで根が腐っているのかもしれない。それで、病気になったんだろう。
「これか、だれがやった、どうしたらこうなった」と俺、世界樹に聞いてみることにした。
「ずいぶん前に毒のある魔獣がそこで死んだのじゃ、そのせいかもしれん」と世界樹、
そうか、それは災難だったな。
「わかった、やってみよう」と俺、“クリーニング” “クリーニング” “クリーニング”と3回ほどスキルを使い、世界樹の周りの土壌を綺麗にし、木の根に手をかざし“マルチリペア”のスキルで治療を施した。
「どうだ?世界樹、よくなったか?」
「ヒュームありがとう、助かったできれば、水とポーションを撒いてくれると助かる、礼はしよう」と世界樹、
「わかった」世界樹の周りに特大ポーションを1本ばら撒き、水属性のショートソードで水を十分に撒いた。
「これくらいで良いだろう」と俺、
「ヒュームよ助かった、おぬしはいいやつだ。お礼がしたい、明日の朝までには作るからもう一度この場所に来て、受け取ってくれ」と世界樹、木の皮が少し緑がかり、枝から葉の芽が出ているように見える。回復してきたようだ。
「よし分かった、では明日そのお礼とやらを取りに来る。では失礼する」
その場を立ち去って、キャンプに戻る。
“ユリ、テレポートだ”と言いたい所だが、ユリは今試練を受けているまっ最中だろう。
出かかった言葉を飲み込んだ。
「ユリがいたらニャ、一瞬でテレポートできるのにニャ」とレン、俺が思っていたことをそのまま呟く。一度テレポートに慣れてしまうと、30分も歩くことが面倒になる。これは悪い癖だろう。
キャンプしている場所に戻る途中、数回だけだが弱い魔獣に出くわした。
魔獣は敵だと認識すると逃げることなく突進してくる。
面倒くさいとは思うが、ベンや、スザンナ、レンが蹴散らしてくれる。おれたちはもう、雑魚の魔獣などでは驚きもしなくなった。はじめの頃とはえらい違いだ。
「腹ペコだ、ご飯にしよう」とベン、
「では、準備するか、みんな手伝ってくれ」と俺、
「スープと、パン、肉でも焼くか。スープはスザンナとアレックス、肉を焼くのは俺とベンで、レンはパンを軽くあぶってくれ」と指示を出した。
全員でそれぞれの分担を終わらせた。
「さあ食べよう」と俺、一瞬だが、ユリはお腹を空かせていないだろうか、と気になった。祠からユリだ出てくるのは明日の朝だ。今は夕方だからまだ出てくるはずはない、それでも祠の方を見てしまった。
「ユリは大丈夫かニャあ」とレン、ボソッと言っている。
「俺たちが今ここで心配してもしょうがない、食べよう」
俺たちはムシャムシャ無言で食べた。
「前回、キャンプした時だニャア、ユリが岩の影から出てきたのニャ、泥だらけでケガしてたニャね」とレン、
「ああ、あいつはあの歳でとんでもない体験をして、乗り越えてきてる。ガッツのある女の子だ。あれからしばらく経つが俺たちもずいぶん成長して強くなった、ユリはもっと強くなってあそこから出てくるぜ、ユリを信じて待とう」と俺も、ユリが無事に祠から出てくると自分に言い聞かせた。
「みんな食べ終わったか、食器をここに集めてくれ“クリーニング”」と片付けた、
“アイテムボックスオープン”とボックスを開いて、食器類をしまい、毛布を出した。俺には、寝袋がある。
「はい毛布だ」と言いながら、毛布を配る。テントに6人寝るのは厳しいな。と思いつつも一番寝やすそうな端を確保した。寝袋に入ることにする。
「じゃあ、俺はもう寝るから、今日は見張りはいらないよな」と俺、寝ることにする。
「わたし、ミチルのとなりで寝るニャ」とレン、俺の隣にきやがった。猫耳族は体温高いので隣にこられると暑い。
「あっ、レンずるいです」とスザンナ、
「ミチルの隣は、くじ引きで決めよう」とベン、ベンもか、何でそうなる。
「よし、準備できた。一番長い草を抜いた者が勝者だ、ミチルの隣で眠ることができる」とベンの声、
「うむむむむ、これは負けられません」とスザンナ、
「抜くですニャ」
「私の番です」
「残りのは私だな」
「やったニャア、勝ちだニャア」とレンの声、
結局となりは、レンなのか。そこで俺の意識が遠くなり眠りに落ちて行く。
俺が子供の頃に乗っていた自転車を手で押している。青い自転車で白い籠だ。黒にするか青色にするかでずいぶん迷った自転車だ。若いおやじが後ろにいた。
「満お父さんが持っているから、ゆっくりペダルを踏んでみろ」と親父、
声が若い、その時点でああ、これは夢なんだと分かった。
俺は夢を見ているとき、時々これは夢だと気づくタイプの人間だ。ちなみに色が無い夢の方が多い。たいてい白黒の世界だ。
おれは、一生懸命に自転車のペダルを踏むが、フラフラして転んでしまう。
「だいじょうぶか、ケガしなかったか」と親父、
「うん、フラフラしてなんだか怖いよ」と俺、
「もう一度がんばってやってみよう」
「うん分かった、お父さん放さないでね」ビビリまくりの俺が親父にお願いする。
「よし今度こそ」俺はそう言うと、ハンドルをしっかり握って、ペダルを踏む。
なっなんだ、ハンドルがフニャフニャしてきた。
しっかり握ろうとしても、フニャフニャでうまく握れない。
「お父さん、ハンドルがフニャフニャだよ、だめだあ!!」
ギュッと手に力を入れた。
「フギャー!!」
「ミチルなにするんだニャー」
とレンの声と同時に肩を“ドン”と叩かれて目が覚めた。
俺の手にはレンの尻尾がしっかりと握られている。
どうやら俺が夢の中で一生懸命握っていたのは隣に寝ていたレンの尻尾だったみたいだ。
「どおりでハンドルがフニャフニャしているなあって、思ったんだよなあ」と自分でも訳が分からないことを言っていると思いながら口にした。
「ミチル、寝ぼけてたニャンか?」とレン、
「ああ、少しな。どうやら俺が小さいころの夢をみていたようだ、ごめんな」
「どんな夢ニャンか?」
「恥ずかしいけど、俺が子供で、とっくに死んだ親父と遊んでいる夢だな、俺の家族が幸せだった頃の思い出だ。時々おれはそんな夢を見る」
「そうニャンか、レンも同じニャンね。子供の頃の夢、見るんニャよ」とレン、
「少し前まで、すごくよく見てたニャンけど、最近あまり見なくなったニャンなあ、ミチルがこないだ話してたけど、私も将来のこと考えなないとニャめなんだって考えてるニャンよ。昔の良い思い出の夢ばかり見てもしょうがないニャンね」とレン、
「なんとなく意味は分かるが、夢って何見るかコントロールできないよね。見ないとか無理だしな」と俺、
「ミチル、もっと寝るニャンな。どんな夢みるかコントロールできるようになるニャンよ」とレン、
「ホントかよ」
「ホントニャンな」
そうだったんだ。
“ゴソゴソ”とみんな起きたようだ。もう外が明るい。今、何時だよ、と思いながら携帯端末の時計を見る。6時ジャストか、あと2時間ちかくある。
先に、世界樹のところに行って、やつの言う“お礼”を頂いてきた方が良さそうだ。向かう途中に綺麗な川も流れていたし、あそこで顔を洗っても良いだろう。
「みんな、準備できたら世界樹まで行こう、戻ってきたら丁度だろう」と俺、
「先にユリが戻ってきたらどうする?」とベン、
「うーん、そうだなではアレックスは留守番で残ってくれ」
「了解した」とアレックス、
「では急ごう」
俺たちは昨日歩いた場所を辿りながら、世界樹のところまで辿りついた。
「おはよう、世界樹、お礼とやらをもらいに来た」と俺、
世界樹の木は、昨日と変わって木の皮の色も良く、葉が生い茂り美しく輝いているように見えた。
「おはよう、ヒューム、では渡そう」と世界樹、
“ボト、ボト、ボト、ボト”と何本かの太く長い枝と、大きな琥珀のような樹液の塊1つを地面に落とした。
“パラパラパラ”と葉も数枚落ちてきた。
「ヒューム、助けてくれてありがとう。おかげで体の調子がとても良い。
そこに落としたものじゃが、世界樹の木材はとても軽くて硬い、良い武器の素材になる。
世界樹の樹液結晶は、燃やせばよい香りがするし、薬の原料にも使える。
ひとかけらをヒュームの家に置いておけば害虫などが寄り付かなくなるぞ。葉はお茶にもなるし、お風呂に入れても良い」と世界樹、
「おお、ありがとう、助かるよ。無くなったら、また取りに来ても良いかな?」と俺、
「ぜひ来てくれ、その時はポーションとおいしい水もよろしくな」と世界樹、
“アイテムボックスオープン”とボックスを開き、世界樹からもらった素材をすべて収納した。
「では世界樹殿、失礼する」
俺たちはその場から立ち去ことにした。反転してしばらく歩くと、なんともさわやかで良い香りの風が後ろから吹いてきた。世界樹がありがとうともう一度、俺たちに言っている気がした。
「ベン、世界樹ってなに?」
「木の人間のような種族、木の精霊や神様と言う人もいる。乱獲され、とうに絶滅したと聞いていたが」とベン、
「伝説の武器に世界樹の木材が使われていた記録がありました、後で調べてみます。とにかくすごくレアな素材です、研究すべきです」とスザンナ、
「なるほど、では何を作ればいちばん有効活用できるか調べてくれ」と俺、
木材で作られる武器って、けっこう種類が限られる気がする。
「わかりました」
キャンプしているところまで戻ってきた。
アレックスが”獣拳”の型を練習していた。”獣拳”とはユパンが独自にあみだした拳法で、ユパンが山に籠って修行していた際、野リスの動きが素早いのは何故か、虎やクマが強いのは何故かと研究し完成させた最強の拳法らしい。
ユパンのあの素早い動き、あの秘密は”獣足”と言う足さばきらしい。
アレックスが獣足を使う、あまりにも早い動きで宙を浮いて移動しているように見える。目の錯覚だろうとは思うが、ありえないスピードだ。
ユパンとの約束の1ケ月は少しオーバーしているが、なによりユパンが楽しそうだし、勇者マーベリックが誕生したことで、勇者にどうしても教えたいこともあるみたいだ。
当初の予定を変更したいと言ってきた。しばらく居てくれて問題ないと言ったが、ユパンは役目が終わったら去ると言っていた。
またあの山奥の小屋で一人ぼっちで暮らすのだろうか。
携帯端末の時計を見た、朝の7時20分だ。丁度良い時間だ、祠のドアの前で待つことにする。
約束の時間になった、ドアの内側に人の気配を感じた。
「ユリだニャア、ユリの足音ニャ」とレン、どうか無事で帰って来てくれと念じた。
“ガコガコ、ギィー”と扉が開いた。賢者デイブがドアの横に立っている。
ユリがフラフラしながらかろうじて歩いている。一歩一歩がつらそうだ。
「大丈夫かユリ、無事でよかった」と俺、
「やばかった、でもやれました」とユリ、そう言うと、鼻から血がタラーと出てきた。
「ユリ、鼻血が出てきたぞ、ちょっとここに座れ」と俺、ユリを座らせ、鼻をハンカチで拭く“アイテムボックスオープン”でボックス開くと、MP回復ポーションとハイポーションを出した。
「ユリ、これ早く飲め」ユリに口を開けさせ、ポーションをゆっくり流し込んだ。
「フー、これ効くね」とユリ、目を閉じて眠りに落ちたようだ。
「レン、テントまで運んで寝かせてくれ」とレンに指示した。
その様子を賢者がじっと見ていた。
「賢者デイブ殿、ユリはどうでした大魔導士に成れましたか?」
「見事でした、あの若さでは無理ではないかと思っておりましたが、無事に試練を乗り越えました」と賢者デイブ、
「あの若者であれば、大魔導士レベル80で賢者にクラスアップすることも可能かもしれません。仮に賢者に成れた場合、私が直に訓練いたしましょう。将来が楽しみな若者ですなあ。ではミチル殿、失礼」と賢者デイブ、ドアを閉めると“ガタゴト”と内側から鍵を掛けた。
テントに戻ってきた、
「ユリは大丈夫か?」とレンに聞く、
「喉が乾いたって言ってニャ、さっき水を飲んだから大丈夫ニャンな」とレン、
「そうか、相当疲れているようだ。しばらくそこで静かに寝かせてあげよう」と俺、
「朝飯にでもするか、準備しよう。お茶とパンにハチミツつけたやつで良いな」と俺、
「スザンナ、パンの準備頼む、俺は世界樹の葉でお茶を入れることにしよう」
世界樹の葉を1枚細かく指でちぎり、お湯の入ったポットに入れた。とても良い香りだ。
「パンの準備できました」とスザンナの声、
「それでは、みんなで食べよう」と俺が言うと、
「わたしも、食べます」とユリの声だ、ムクリと起きるとテントから這い出してきた。
「そうだ、ユリ、飯の前にステータス出してOK答えてくれよ」と俺、
「うん“ステータスオープン”わっ来てる、クラスアップ承認“OK”と」ユリがOKを答えたようだ。
“目利き“スキルでユリのステータスを鑑定しておく。”大魔導士”間違いない、時空間魔法のタイムトラベルがアンロックされている。ついにここまで俺たちは来た。
ヤッタ\(^_^)/
「間違いなく大魔導士ユリだ」と俺、
“パチパチパチパチ”と5人が拍手、ユリが頭を下げた。
「ありがとうございます」とユリ、
ユリの分のパンとお茶もあるな。
「では、ユリのクラスアップに乾杯、俺たちの明日にお茶で乾杯だ」
「カンパーイ」
「カンパーイ」
“パチパチパチパチ”
ごくりとお茶を一口飲む、なんて爽やかな香りだろう、鼻をスッと抜けてゆく緑の香り。
「こりゃ、すごいな。世界樹のお茶とはこれほどの物か」と思わず声が出た。
「これは、なんです。お兄ちゃんこれ凄いお茶だね」とユリ、
「そうなんだ、これはすごいお茶なんだ」とベン、
「大魔導師ユリ誕生、お茶も美味い。俺たちは生きて笑っている。うれしいニャーね」と俺、レンの口癖をまねしてみた。
「ミチル、真似したニャー、フーッ」とレンが怒る。でも顔は笑っている。
「帰ろう、俺たちの家に」と俺、
「うん、帰ろう」とアレックス、
「そうだ、ジーナも心配しているかもしれない、早く帰ってみんなに報告だな」とベン、
片付けをして、テントとタープ、敷物をかたづけた。
「ユリ、テレポートを頼む」と俺、
「”テレフィールド”」大魔導師ユリの詠唱する声が辺りに響いた。
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ユリ・ヒカゲ ★大魔道士LV1
種族:ヒューム 女 10歳
*スキル
<アクティブ>
攻撃魔法(大)「ファイヤーボール、ファイヤートルネード、
ウォーターボール、ウォーターシールド、
アイスアロー、アイスシールド、アイストルネード、
ライトニングアロー、エンハンスウエポン、エンハンスアーマー、
★エスプロ、パーティエンハンス、パーティシールド」
回復魔法(大)「ヒール、アドバンスドヒール、★神の手」
空間魔法「テレ・ダンジョン、テレ・フィールド」
浮遊魔法「フライ」
魔法薬合成(★大)
ゴーレム作成(★大)
「ゴーレムクリエイト、スピリットクリエイト、スピリットムーブ」
★時空間魔法「タイムトラベル」
<パッシブ>
知力上昇(★大)、回避上昇(★大)、MP回復(★大)、ゴーレム従魔(★大)、
無詠唱、★3重詠唱、★剛力(小)
*装備
頭 黒竜革の魔法使い帽子
手 黒竜革のグローブ
胴体 黒竜革の魔法使いローブ
足 黒竜革のブーツ+靴底(エゾキングオオヤモリの足裏革)
盾 オリハルコンの丸盾
武器1 オリハルコンの魔法杖
武器2 オリハルコンのショートサーベル
その他 ダマスカスのバタフライナイフ、ミスリルのスタッフ、竜革のバッグ(ノリユキ)




