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初めての魔獣狩り

第5部分 初めての魔獣狩り


「ここが魔獣がいる森か?たしかにそんな気配はある」

森の前でレンに聞いてみる。


「奥に行くと強い魔物が出るから気を付けるニャ」

もちろんだ、無理をするつもりはない。


「冒険者ギルドに貼ってあった魔獣マップで確認したら最強でもCランクだった。Cランクが出てきたら逃げるぞ」

 俺の目的地のストーンサークルに行くにはCランクの魔物との戦闘は避けられないはずだ。

早くレベルアップしてCランクも倒せるようになりたい。


盗賊に片手剣で切りかかった時に感じたことだが、腕を切断したと思ったら、手首を切り裂いた程度のダメージしか与えることができなかった。

 あれは恐らくレベルの差だろう。

弓が攻撃で有効だったのは、弓と言う武器はおそらく武器の性能がそのまま攻撃力なのではないかと思う。レベルが上がっても弓が変わらなければ、物理的な攻撃力は変わらないはずだ。


「ミチル、敵が来るニャ、正面の獣道から2体~3体だニャ」

レンはまだギルドで訓練を受けていないが、スカウターのスキルは有効みたいだ。


「ここに、留まって敵を撃つ、レンは魔獣が見えたら早めに弓を射ってくれ」とベン、

 事前に全員で打ち合わせして、戦闘時は経験があるベンの指示に従うことにした。

「ツノウサギだな3体いる」

「シャー、ギー」魔獣が鳴いた。

 魔獣は俺たちにむかって突進すると牙をむいて威嚇してきた。


「レン、右側奥から回り込んで、横から狙撃」

「スザンナと私は魔獣を正面で押さえ、足止めしながら攻撃」

「ミチルは槍で私の左後ろから攻撃して。みんな前に出すぎるな」


ツノウサギは突進からジャンプし角で攻撃してくる”ガコン”俺はそれを盾で跳ね返した。

魔獣は2体同時に攻撃したり、攻撃していない1体が脇から回り込んできたり、明らかに連携した動きをしている。

雑魚モンスターのはずなのに、体が小さくて動きも速いので攻撃がなかなか当たらない。

レンが放った弓が1体に命中し、動きが遅くなった。

チャンスだ、スザンナが斧を振りかぶりとどめを刺した。

ベンがロングソードで魔獣の顔を切り裂く。魔獣がフラついている、チャンスだ。

俺が槍を突き刺し、とどめを刺した。

「残り1体だ、囲んでタコ殴りにするよ」

魔獣にはかわいそうだが、俺たちが魔獣1体をとり囲んで攻撃すると魔獣は3人同時の攻撃に対して全く対応できず、すぐに倒された」

「あんなに小さくても結構攻撃がきついです。ガツンと強い衝撃がきました」

魔獣から鎧ごしに1度攻撃を受けたスザンナが言った。

「1体だと弱いけど、3体同時だと結構きついな、集中できないし」

今回は数で押し込んだけど、最低ランクの雑魚キャラにも手こずる。

これが今の俺たちの実力だった。

「ミチル、槍はもう少し短く持たないとバランスが取れないから、矢先がブレて当たらないよ」

 ベンからアドバイスが出た。

「へー、そうなんだなるべく長く持って、魔獣から離れて攻撃するものだと思った」

「長く持つときは合戦の時なんかの横一列に並ぶ時ぐらいで、今回の状況だと、槍のバランスがとれる真ん中付近をつかんで拳で殴るように突き出す感じだ、貸してみろ」

と言うと、槍を持ってベンが見本を見せてくれた。

槍ってそう言う感じで使うのね。

「たしかに、その方法の方が効率的だな。次はそれでやってみるよ」

シュッ、シュッってボクシングのジャブのような感じだな、何回か素振りをしてみた。たしかに鋭く突き出せ、戻す際も素早く戻せる。

「とどめを刺すときなんかは上に振り上げて突き刺す感じだな、サブの武器を持っている場合は槍を投擲しての攻撃も有効だ」とベン、


「スザンナは、大斧の握り方からして違う、もっと両手の間隔を開けて持つんだ。そして大振りはしないで、コンパクトに振るんだ、貸してみろ」

「体全体で振る、腕だけで振るんじゃなくてこう言う感じだ」”ブンブン”と斧を振り回す。

今度はスザンナに斧の指導か。

ベンって体は細いのに、よくそんな重たい大斧もブンブン振り回すことができるなあ。と感心する。

手だけの力ではなくありゃ体術だな。

斧の重さを生かしながら、うまく逃がしているのがわかる。

そういえばタイムスリップ前の訓練でも剣術の先生に何度もコンパクトに、コンパクトにって言われたっけ。大振りするのはとどめ差す時と大きな獲物をしとめるときだけだ。

と言われたことを思い出した。


「次来るニャ2体ニャ」

ブラックウルフが森からしなやかに飛び出してきた。血の匂いがしたのかもしれない、倒したツノウサギをすぐに解体してアイテムボックスにしまっておくんだった。


「作戦はさっきと同じ!」

ベンが大きな声で指示を出した。

なるほど、俺たちの4人パーティでは前衛の2人が足止めしつつ攻撃、俺が槍でちょっかいかける。魔獣は疲れて足が止まるからレンの弓が当てやすくなると言う作戦がベストと言うことだろう。

なるほどね。


「ガウー、ガオ、ガガギー」ブラックウルフは体も大きいので、なんか迫力があり威圧される。

”ヒュ”と音がしてブラックウルフに矢が刺さった。が、あまり動きは遅くならない。

矢は急所に当たらないと致命傷にならないみたいだ。


スザンナはベンのアドバイス通り、斧をコンパクトに振って、少しずつ確実に魔獣にダメージを与えている。

俺も槍を短く持ってコンパクトで素早く突くようにしてみた、なるほどこうやると槍は深くは刺さらないが。ヒットする回数が格段に違う。

魔獣は攻撃を3回ほど受け、傷を負うと徐々に弱り、動作が遅くなった。

 チャンスかなと思い俺が前に出ると魔獣に近づきすぎた、ブラックウルフが腰をひねるように跳びかかり、盾を突き出したところ、腰が引けてふらついた。丁度その時盾にガツンと強い衝撃があり、バランスを完全に崩して、尻餅をついてしまった。

その拍子に右手から槍が離れていった。”カラン、コロコロ”俺から槍が離れてゆく。

「ヤべえ」

思わず声が出た。早くショートソードを抜かないとと思い、尻餅が付いたまま腰のサヤからショートソードを抜こうとする。抜こうとするが、尻餅ついた状態で剣はうまく抜けなかった。この時、俺は焦りすぎて、パニクってしまった。

「ミチル、死んでも手から武器を離すな!戦場では武器を手放した時が死ぬ時だ」

ベンの声だ、怒鳴るようなアドバイスがあたりに響く。

そして、

「フンッ」

とベンが唸りながら大きく踏み込んで鋭い突きを繰り出した。

ベンのロングソードがブラックウルフの首に深く突き刺さった。

ベンは手首を90度ネジり、ロングソードを素早く引き抜いた。魔獣がバタッと倒れた。

後で聞いたが、刺さった刃物をねじりながら抜くと刃物が抜きやすく、与えるダメージも増えるらしい。


もう一体の魔獣を見た。

後ろ足に矢が1本と体に2本刺さっているのが見えた。

さらにスザンナの細かく大斧の攻撃を続けていて、魔獣はかなり消耗してフラフラだ。

「それっ!」

と言いながら、スザンナが大きく振りぬくと、ブラックウルフの首が飛んだ。

今回の戦いは戦闘時間も短かったし、動きも良かったと思った。


「ベンに助けられた、でも今の戦闘は良かったな、やっぱり実戦経験が豊富なベンのアドバイスや指示は的確だよ」

と俺がベンをほめた、

「ほめすぎだ、奴隷を持ち上げてもなにも出ないぞ」

と言うとみんな笑った。


それから俺たちは5回ほど魔獣と戦い、暗くなる前に街に戻った。

冒険者ギルドで倒した魔獣を大量に買い取ってもらう、今回の買取額はドロップアイテムなんかは1つも無くてそれでも金貨3枚の収入になった。

俺たちの1日の食事と宿代の合計が金貨1枚ぐらいだから、こんな雑魚狩りを繰り返すだけでも食べてはいけるんだ。となんか少し安心した。

つまり、強くなってもっと強い魔獣を狩れるようになれば、結構余裕のある生活が送れそうだ。


宿に帰り、夕飯をみんなで食べる。

「魔獣とあんなにたくさん戦ったの初めてニャンよ、すごく興奮したニャン」

たしかに、戦闘はエキサイトする、共通の敵に全員で立ち向かい、敵の攻撃を受け、攻撃を返すだけですごく興奮する。

ある意味テンポの速いスポーツに似ている。バスケットボールやフットサルなんかで経験したことがあるあの仲間との一体感、高揚感、感覚が鋭くなるあの感じだ。

魔獣を倒した攻撃なんか、サッカーでシュートをきめた感覚そのものだ。

もしかしたら、ストレス解消にもなるのかもしれない。


「私から提案だ、明日は魔獣と戦うのはやめて、レンはギルドにスカウターの訓練へ、ミチルとスザンナは私から剣術の訓練を受けると言うことにしないか?」

とベンが提案してきた。

「たしかに、今日はいろいろ反省点が多かった。俺達は基礎ができていない。槍の持ち方すら分かってなかった、このまま魔獣と戦っても危険なだけだ。素人まるだしで、うまく連携ができないし、ベンの負担も大きい、それでは明日は訓練としよう」

「はーいニャ」

「わかりました」とスザンナ、

「よーしビシバシやるぞ!」とベン、自分の顔の前で拳を握りしめている。

何の決意だよ。

なんかスパルタ的な、地獄の訓練を想像した。

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