ブラックドラゴン討伐①
第42部分 ブラックドラゴン討伐①
冒険者ギルドの掲示板に”ブラックドラゴン討伐”の依頼が貼られた。
これは攻略ノートに記載のあった重要クエストの一つだ。
”森と湖の街シベルの近くにある火山の付近でブラックドラゴンが目撃された、危険排除の為、討伐を依頼する。討伐後、頭部又はその一部を納めることでクエスト完了、報酬は金貨1000枚、危険な魔獣である為、推奨ランクはAランク”
と書かれている。
”森と湖の街シベル”は”海辺の街ハマナ”から20Kmぐらいの場所だ。
ギルドの受付にクエストについて聞いてみることにする。
「ブラックドラゴン討伐をやりたんだが、申し込みとかあるのか?」
「はい、そのクエストは特に無いです。ドラゴンを討伐して素材の一部を納めれば完了です。でもそれクエストかなり危険ですよ。Bランクのミチル殿達でも止めておいた方が良いと思います」とギルド職員、
「そうか、強いのか、アドバイスありがとう」
俺たちは、盗賊を討伐した件でBランクに昇格した。昇格した時に、ギルドカードの更新で金貨6枚も取られたのだが、あれはなんか意味あったのだろうか。
もしかしてギルドランクとは実益の無いある意味”やりがい搾取”的な物なのかもしれない。
「ミチル、ブラックドラゴンは強くて有名ですが、その素材は激レアです。討伐して得られる、”黒竜の革”は普通の剣では傷すら付かないとか、その革で作られた防具は国宝級です」とスザンナ、恐怖と期待が半分半分ぐらいの表情だ。
なに?普通の剣では傷も付かないってそんなやつどうやって討伐するのだろうか。
後で、攻略ノートの確認だな、討伐方法までよく見ていない。
家に帰り、自分の部屋の机で攻略ノートを見た。
なにい!、こんなやり方で倒すのか。そこにはとんでもない、やり方が書いてあった。
まさに、俺たちだけが出来るやり方だな。
そう言えば、ミミン石鹸店の売り上げは順調のようだ、家の前を露天にして、昼間だけそこで石鹸を販売している。
露天のところから窓の中が見え、石鹸工場をのぞけるようにした。清潔な場所で石鹸を作成している所を見ることができるようにしたのだ。
ああいう物は、清潔でキチンと真面目に作っていることを、分かってもらう必要がある。
それに、商品のバリエーションも増やしたみたいだな。
色んな香料、薬草エキスをブレンドした石鹸を販売しているらしく、この辺りに住んでいる貴族や金持ちの奥様方、貴族の使用人に少しずつ人気が広がっているようだ。
もうあの店は軌道に乗ったと言っても良いだろう、さらなる拡張は彼女達がうまくやってくれるに違いない。
ミミンから、「新商品のアイディアがないかニャ?」と聞かれていることを思い出した。
石鹸関連ねえ。
端末のオフラインDBで色々検索する。画面が小さくて疲れるな、メモも取りにくい。
石鹸を作る際にこんな素材もできるんだなあ。
メモしておこう”カキカキ”。
こんな時、コンテに入れてきたタブレットPCが有ればサクサクコピペできて資料がまとめられるのになあ。と思った。
あっ忘れてた。いまなら簡単に見に行けるな。
ユリの魔法”フライ”で飛んで行けばすぐだ。
未だ明るいから行けるな。部屋を出る。
「ユリ、魔法でひとっ飛びお願いできないか?」と俺、
「お兄ちゃん、良いよ、帰りはテレポートしてくれば良いし」とユリ、
そりゃそうだ。
「レン、俺たちが一番始めに合った草原って、この地図の何処になる?」と俺、
レンに正確な場所を聞いておく、レンが狩りをしていた場所だ。
「うんとニャ、ここのハズニャ、ここら辺に岩と木があって、ここで野宿したニャンな」とレン、なるほどココだな。
「ユリ、ココまでだと俺と一緒に行くのと、一人で行くのとどちらが良い?」
「2人乗りだと、遅いし遠くまで飛ぶのは無理、一人で大丈夫、テレポートで帰って来る」
「よし、ではこの付近まで行って、戻ってきってくれ、頼む」
「わかった、多分30分くらいで行けると思う」とユリ、装備を整え、玄関から出てゆくと。ミスリルのスタッフにまたがり”フライ”と魔法を唱えるとビュンと飛んで行った。
もう一人前の魔法使い、魔道士になったんだなあ。と改めて思った。
ユリは剣術もそこそこ使えるようになり、ベンからの訓練も時々やるだけになっている。算数の九九さえできなかったユリだったが、そんな部分はすぐに覚え、現代の勉強の方も年齢相応に追いつきつつある。
ユリは頑張り屋だな。ハングリーでガッツもある。栄養も十分摂れているからか、ガリガリだっのが、普通の体型になり顔色も良くなった。
もしかしたら身長も伸びているのかもしれない。
これか、1年以内になんとかしろ、と言う意味の一つは。2回のタイムトラベルの問題による時空のゆがみの問題もあるが、ユリが成長しすぎても、現代に帰った時に違和感が出てしまう。
”ブンッ”玄関の方から音がした。ユリがテレポートして帰ってきたようだ。
「お兄ちゃん、地図の場所まで行って来た、空から見たら岩の近くに四角い荷物が見えたの、銀色の海外旅行に行く人が持つ大きな鞄みたいな物だったよ」とユリ、
それだ、時差があって遅れて届いたんだ、アルミ製のキャリーバッグだ、タブレットも兼ねたノートPC、少し大きいソーラパネルとバッテリー、食料、テント、寝袋、着替え、薬、俺の荷物がほとんど入っている。調味料もあったハズだ。
やった、これはラッキーだ。
「ユリ、いますぐ行こう。すぐに回収する必要がある」
「わかった、行こう」とユリ、
「わたしも行くニャンよ」とレン、3人で草原まで行くことにした。
”テレ・フィールド”ユリは魔法を詠唱すると、もう俺たちはあの草原に立っていた。
岩場の前だ、俺とレンが焚き火をした後が残っている。もう3ヶ月ぐらい経ったか、ずいぶん昔のように感じる。あの木に向かって弓を使ったな。
荷物の回収をしなくては、確かこっちの方向だ。
思わず走り出す。
「あっ、有ったよかった」ミリタリースペックのアルミ製キャリーバッグの口は閉じられままで、外部の痛みも無い。雨に濡れた様子も無く綺麗な状態だった。
「よし、荷物は回収できた、家に戻ろう」と俺、
「分かった」とユリ、
「ミチル、なんだかずいぶん昔のことのような気がするニャア」とレン、俺と同じことを感じていたようだ。
「ああ、色んなことがあった、それを俺たちは乗り越えた」
「うん、ミチルにあそこで会えてラッキだったニャアよ」とレン、
「俺もだよ、レンに出会っていなければ、俺は盗賊に殺され、生き残ったいたとしても首輪の爆弾で死んでたさ。ラッキなのは俺の方だニャアよ。ハハハ」
「フフフ」とレン、
”テレ・フィールド”詠唱する声が聞こえた。
家に帰ってくるとリビングで荷物を開けた、バッグはしっかりと閉じられていたようで、中身は全て無事だった。
「くー良かった。全部無事だ」と俺、周りで見てるみんなは俺の荷物に興味津々のようだ。
あめ玉、とお菓子の箱をいくつか取り出し、みんなに分けてやる。
「あっそれ、私の好きなお菓子だあ」とユリ、久しぶりに見たお菓子に喜んだようだ。
「キッチンでみんなで分け合って食べてくれ、美味しいぞ」
袋とお菓子を受け取るとみんなキッチンに向かったようだ。
”ワーワー、ギャーギャー”言いながら、みんなで食べている。
俺は、荷物を全部出すと、PCの電源を入れたが、起動しない。バッテリー切れかな。窓の外を見ると、もう日が沈んでいる。ソーラーパネルは使えないな。小型バッテリーはどうだろう。バッテリーの残量は未だ残っているようだ。PCに接続して少し待ってからPCを起動してみる。起動した、良かった壊れてないな。
洋服は全部綺麗にしておこう。”クリーニング”スキルで綺麗にした。これらは寝るときに着たり普段着に丁度良い。寝袋、テントは特につかう予定は無いだろう。アイテムボックスの中に入れておくか。”アイテムボックスオープン”でスキルを起動し放り込んでおいた。あとは食料か、乾燥ご飯、乾燥麺、高カロリーの携帯食品、なんかだな。これもボックス行きだな。
そして調味料、塩、砂糖、コショウ、醤油か、醤油がありがたい。こっちの世界では絶対に入手できないからな。
残りは、この小さいポーチだな。裁縫用具、ハサミ、頭痛薬、風邪薬だな。あっなんだ俺こんなのいれたっけかな。
封筒だ、封を切って開けて見た。
現代の金だ、1万円札が10枚入っている。白い手紙も見えた。
広げて見る。
そこには見慣れた綺麗な文字で俺に向けたメッセージが書かれていた。
母の字だった。
「”満へ、お仕事が辛かったら我慢しないでね。
このお金ですぐ帰っておいで、そして母さんとまた一緒に貧乏暮らしに戻ろう。
母さんはいつも満の味方です。母より”」
「ごめんよ、母さん、10万円では異世界から帰れそうにないよ。ううっぐはっ」
俺の視界が急にぼやける、
母の手紙に滴が”ポッ”ポタッ”ポッ”と音を立て落ちた。
俺は手紙だけ掴むと、自分の部屋に走って入り、久しぶりに声を出して泣いた。
多分、俺がそんなに泣いたのは、父が亡くなった時以来初めてだったと思う。
そして、急に母に会いたくなった。
「もう少しで絶対に帰る。母さん待っていてくれ」目を閉じて、
母を思い浮かべながらそうつぶやいた。
”ドンドン””ドンドン”とノックの音で目を覚ました。
少しだけ眠っていたようだ。
「ミチル、ご飯できたニャーよ、肉食べるニャー、ミチル-”ドンドン”」とレンの声だ、
「おお、いま起きる。待っててくれ」
飯も喰わんとな。そうだ醤油を使おう。久しぶりに醤油で肉が食える。
口の中がフライングして唾液がジュワーと出てきた。
「”戦って、食って、強くなる。そして帰る”簡単じゃないか」
そう、世の中はシンプルに出来ているんだ。そして俺には仲間も沢山いるんだ。
俺は、やれる。
なんか確信を得た気がした。




