マーベリックとルミナ
第36部分 マーベリックとルミナ
「準備はいい?」とリリン魔道士、
リリン魔道士は以前、男爵邸でユリの魔法使いの訓練をしてくれた魔道士だ。
リリン魔道士には、帝都の冒険者ギルドと、海辺の街”ハマナ”のギルドを経由して、ゴルム鉱山にテレ・フィールドしてもらう予定だ。
ユリを連れてテレポートすることで、ユリが魔道士になった時、その街にテレポートが出来るようになる。
「準備は良いです」と俺、今回のパーティは拳闘士アレックス、ユリだ他の仲間はお留守番となった。レンとミミンの猫耳族は森に薬草を採取に行くと言っていたし、スザンナにはアレックスの部屋にあるベッドが小さすぎるので、アレックスが足を伸ばして寝れるようにベッドの改造をたのんである。
アレックスは「ベッドはそのままで良いです」と言っていたものの、そのままで良いハズはない。
ベンは、庭で両手剣を素振りしていた。
俺たちは、帝都の賑やかさと、浜辺の潮風を一瞬だけ感じ、泥臭いゴルム鉱山にテレポートしてきた。
「リリン魔道士とユリは、この入り口で待っていてください」と俺、
「分かりました」とリリン魔道士、
さあ行くか。
「アレックス、覆面は外すなよ。マーベリックかどうか確認したら、拳を握れ。違う場合は手を広げろ。あと、一言も話すな。話をこじらせなければ、すぐに終わって家にみんなで帰れるんだ、ここは我慢だ耐えろ!」と俺、
「分かりました、我慢します」とアレックス、体か小刻みに揺れている。落ち着かないように見えた。
鉱山の正面入り口には大きなゲートがあり、その脇に人が通れるドアが設けられていた。
その横に、騎士のような格好をした守衛が立っている。
守衛に話しかける。
「どうも、こんにちは、ミチルと言うものだが侯爵の紹介状を持参している、責任者に取り次いでもらえないだろうか?」と俺、
「ミチル殿と言われたか、紹介状を見せて欲しい」と守衛、
俺は懐から紹介状を取り出すと、守衛に見せた。
封印に侯爵の印が押してあり、封筒も上質な紙で作られた物だ。もちろん正真正銘の本物である。
「はい、確かに。ではこちらにどうぞ」と守衛、
守衛室にあるテーブルに座らされた。アレックスは後ろで立っている。俺のボディガード役だからな。
5分ほどそこで待ったところ、小太りで下品な髭を生やした中年の男がやってきた。
「ゴルム鉱山の所長をしております、ガストンです。今回はなに用でしょうか?」
俺は、侯爵の紹介状をガストンに手渡した。紹介状をガストン所長が開封し、中身を確認した。
「フムフム、なるほど、奴隷をねえ」とガストン所長、なんか不機嫌そうだ。
「ガストン所長殿、わたくしミチルと言う冒険者です。ある高貴な方からの依頼で、こちらにいる奴隷マーベリックとその友人を買い取りに参りました。なにとぞよろしくお願いします」と俺、
「ああ、買い取りでしたか、つい無償で引き取りに来たと勘違いしました」とガストン所長、急にニタニタし手を揉み始めた。
「あまりお時間をとらせたくありません、その2人をこちらに呼んでもらえないでしょうか?、これは買い取る費用として持ってきた金貨40枚です」と金貨を差し出した。
ガストンは金貨の袋を開けると、中に手を入れ金貨があるかを確かめたようだ。
「よし、分かった。では2人を連れてくる。おい、ラング!奴隷のマーベリックとその友人たしか、ルミナを連れてこい!」ガストン所長は後ろにいた私服を着た者に命令した。
しばらくすると、ボロボロの服を着た、浅黒い肌の精悍な顔をした少年と、その背中に背おわれた少女がやってきた。少女の顔が青白い。
後ろで、自分の拳を握りしめたのだろう、アレックスの指が”ゴキッゴキッ”となった。
俺は振り返りアレックを見ると、両手の指がしっかり握られていることを確認した。アレックスの眼を見たがこの少年で間違いないようだ。
「どうやら2人で間違いないようだ、では手続きをお願いしたい、奴隷商人はいるか、いない場合は委任状を頼む」と俺、
「ラング、奴隷の所有権を書き換えろ」とガストン所長、どうやらラングは奴隷商人だったようだ。ラングがなにやら呪文を唱えると、手続きは終わったように見えた。
”目利き”スキルで確認しておく。問題ないな。
「マーベリック、ステータスで書き換わったことを確認してくれ」と俺、
マーベリックはステータスを開いて確認し、うなずいた。チラチラと俺の後ろにいるアレックスを見ている。気になるようだ。アレックスには無視するように言ってある。目を合わせることはしないだろう。
「取引は終わったようだ、これで失礼する」と俺、
「はいはい、ありがとうございました」と言いながら、ガストン所長は手を差し出してきたが、俺は気づかないフリをして回れ右をした。守衛は入り口のドアを開けた。
「このクソ所長、"カス"トンあばよ!!」とマーベリック、おそらく精一杯の最後の抵抗だろう。
「こら、マーベリックいかんぞ、ハハハ」と俺、叱る言葉だけは言っておいた。
マーベリックはもう俺の所有する奴隷だ、俺の部下でもある。ガストン所長は手出しできまい。
入り口を出ると、リリン魔道士とユリが待っていた。
「お兄ちゃん遅いよ、心配した」とユリ、
「ごめん、今終わった、すぐに帰ろう」俺は、アイテムボックスからポーションを出すと、マーベリックに2本渡して、今すぐ飲むように命じた。
「ありがとう。ルミナ、薬だぞ飲め」とマーベリック、少女を背中から下ろすと、その口にポーションをゆっくり流し込んだ。少女の顔色が少し良くなった。
「ルミナ、もう一本飲め」マーベリックは自分が飲むはずのもう一本のポーションを少女の口に流し込む。少女の目が開く。
「マー兄、ここ何処?」とルミナ、自分が何処にいるか分からないようだ。
「早く移動して手当する必要があるな、”パーティ編成”するぞ」おれは、マーベリックとルミナに招待を飛ばすと2人に承認させた。
「リリン魔道士たのむ、俺の家までテレポートしてくれ」と俺、
「”テレ・フィールド”」とリリン魔道士が詠唱した。
リリン魔道士とは、家の前でお礼の金貨10枚を渡し別れた。
アレックス達は既に、ルミナを家の中に運びこんだようだ。
「まったく、ひどい奴らだな”マルチリペア”」俺は、スキルを起動し、ルミナの体に赤い丸が出た全ての箇所を治療した。
”クリーニング”スキルで、2人の体を綺麗にする。
”マルチリペア”マーベリックの体も何カ所か治療した。
「ユリ、ヒールの魔法頼む」と俺、ルミナは大分良くなったように見える。もう大丈夫そうだ。
あとは、少し眠れば回復するだろう。
「ユリ、あとでもう一本ポーション飲ませておいてくれ」と俺、
「アレックス、もう覆面取ってもいいだろう、せっかく親子が対面できたんじゃないか」
と俺が言うと、アレックスが覆面を外した。
「やっぱり、母さん!!」と言いながら、マーベリックがアレックスに抱きついた。
アレックスとマーベリックの目からボロッと涙がこぼれたのが見えた。
「ミミン、お昼ごはんの準備頼む」と俺、落ち着いたら腹が減ってきた。
一仕事終わった感じがする。
ルミナも元気になり、ソファーに座って部屋の中を見渡している。
”目利き”新入りのマーベリックと、ルミナを鑑定してみた。
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マーベリック 奴隷鉱山夫 LV3
種族:ヒューム 男 14歳
HP:100/100
MP:1/1
転職可能な職業:-
パッシブスキル:
聖剣を抜く権利(無効)
装備
胴体:奴隷の服
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ルミナ 奴隷鉱山夫 LV2
種族:ヒューム 女 13歳
HP:80/100
MP:1/1
転職可能な職業:”ワルキューレ”
スキル:-
装備
胴体:奴隷の服
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マーベリックは転職できる職業が無いな、でも”聖剣を抜く権利(無効)”を持っている。これは秘密にした方がいいだろう。
ルミナは、”ワルキューレ”ってジョブか、どんな職業なんだろう?気になる。
「スザンナ、ベン、ちょっとこっち」と言って、俺の部屋に連れて行く。
「ベン、マーベリックはどの職業にも転職できないみたいだが何故だ?」と俺、
「おそらく、マーベリックは未だ何の訓練を受けていないのではないかと思う、例えば騎士や剣士、戦士などはチョットだけ剣術を覚えるだけで転職できるようになる」とベン、
「なるほど、ではこの先ずっと転職できないことではないのか」と俺、なんか安心した。
ずーと無職なんて、ニート確定したようなもんだからな。ある意味つんでる。
「ルミナはワルキューレと言うジョブに転職できるようだ。ワルキューレって何だ?」
「ほう、ワルキューレは血統ジョブだ。親がワルキューレだったのかもしれない、騎士に似ているが、ワルキューレはバルキリーにクラスアップできるらしい。槍と盾、弓に特化したジョブらしいが、あまりくわしくは知らない。比較的珍しいジョブのはずだ」とベン、さすが年くってるだけあって、なんでもよく知ってるなあ。
「じゃあ、マーベリックにはベンから剣術教えてもらって、ジョブはその方向だな。ルミナはワルキューレで良いだろう」
「マーベリックってアマゾネス種ではなく、ヒュームなのは何故だ?」
「アマゾネス種はヒュームの男をさらって繁殖する習慣がありました、男が生まれればヒューム、女はアマゾネス種となります」とスザンナ、
なるほどそうなるのか。
お昼ご飯後に、アレックスも含めて、3人で少し話しをしたら、全員奴隷解除して、ジョブ神殿と冒険者ギルドをハシゴしょう。
あと部屋の問題があるな、使って無い物置を改装すればもう一部屋できるかそれをルミナの部屋にしよう。
当分、マーベリックは1Fの俺の寝室で良いだろう。14歳とは言えもう男だから2Fだと女達がうるさいしな。
この家も、もうすでに満員だ。
俺は、仲間全員を集めキッチンで会議をすることにした。
「まず、アレックス、マーベリック、ルミナの3人の奴隷解放をする」
「マーベリック、お前はベンから剣術を教えてもらえ、夕方にジョブ神殿に行こう。ルミナはワルキューレのジョブで良いよな。そして、2人の冒険者ギルドの登録と、アレックスのギルドカードの更新もしよう」
「当面の目標だが、ユリのレベルアップを最優先とする。ユリは今レベル22だからもう少しで魔道士になる。そしたら、この家を拠点にマップに記載されているレベルアップポイントでさらなるレベルアップができる。パーティは最大6人までだから、それまでレンとベン、ミミンはパーティから外して”節約レベルアップ(大)”から外させてもらう。
レンとベンは最上級職だからレベルアップは急がないから良いとして、ミミンは薬草調合士LV15だからレベルはもう十分だろう。ミミンはここに住んで薬草調合士をしながら、俺たちを引き続き支えてくれ。もちろん自立できてこの家を出て行くことも自由だけどな。
そして、少しの間はマーベリック、ルミナが満足に戦えるようになるまで”節約レベルアップ(大)”でレベルアップをしよう。その後2人は好きにしてもらって良い、2人は自由なんだ。あと、今まで世話になった馬と馬車だが、ユリが魔道士になるのも近い、世話も大変だから売ろうと思う。異議があればどうぞ」と俺、
しばらく待つが、特に意見は無いようだ。いや、なにか有りそうだ。
「ハーイ、今後さらに仲間が増えたらどうするんですか?」とスザンナ、
確かに、それはある。
「それはあるな、現状では特に考えていないが、戦わないやつ、働かないやつを仲間にするつもりは無い。別のところに家でも買って自立できるまで住まわすか、そんなところかな」と俺、
「ハーイ、ニャン」とミミン、
「馬と馬車は薬ギルドに売れるニャン、ギルド長が馬車を探していたニャンね」
「おっ、それは助かる。では金貨40枚で買うか聞いてみてくれ」と俺、
「分かりましたのニャン」とミミン
「ハーイです」とルミナ
「マー兄いは、私の部屋で一緒で寝起きすれば良いと思います」とルミナ、
「うん、ルミナの気持ちは分かる。が、マーベリックは男、ルミナは女だ、一緒の部屋に住んでいるとさらに小さな仲間が増える可能性がある、認められんな」と俺、
これ以上面倒なことが発生すると収拾つかなくなるだろ。
ルミナとマーベリックの顔が赤くなった。
言い過ぎたか。




