剣に生きる
第34部分 剣に生きる
「二人とも、動かないニャア」とレン、
黒騎士ザビスとベンが壇上でもう10分は睨みあっているだろう。
ベンは、第二回戦目、第三回戦目と連勝し、午後の決勝戦まで勝ち上がった。
そして今、黒騎士と壇上で戦っている。
刹那、クッ、とベンの体がしずんだ。
ベンは木刀を中段脇に構えると、真っ直ぐに間合いをせばめる。
二筋の風が交差し、”カコーン”という甲高い音と共に、二人の木刀が撥ね上がった。
ベンがそのまま上段から袈裟に振り落とす。
”カツン”と黒騎士が弾く、さらにベンが下段から上段に、さらに半円を描いて、右から左に、さらに左から右と、連続攻撃をしたが全部紙一重で黒騎士にかわされた。
ベンが、サッ、と後ろに飛んで間合いを開ける。
今度は黒騎士がスススと、ベンに詰め寄った。
黒騎士は踏み込みと同時に木刀を上段に振り上げると、真っ直ぐに振り下ろした、何の工夫もない上段からの振り下ろしだ。ただ、その斬撃の早さが尋常ではない。
ヤバい、躱せない。と思ったら、ベンが木刀をグッと水平にして持ち上げた。
”べキィン”直前でベンが黒騎士の剣を弾く、さらにベンがススと左側に動くと木刀を黒騎士に突き出して、さらなる追撃を防いだ。
黒騎士が踏み込みを止め、木刀を正眼に構えた。黒騎士の顔は兜でよく見えなかったが、口元が少し緩んだのが見えた。
黒騎士は余裕だな、この試合を楽しんでいるようだ。
「まてえぃ!!」審判の声だ、両選手の動きがピタと止まり。間合いを取った。
「両選手、木刀を交換しろ!」と審判。どちらかの木刀に亀裂が入ったようだ。
音で判断したのかもしれない。さすが審判だけのことはある。
木刀は革巻きなので折れているかどうかは見た目では分からないのだ。二人が壇上から降りて、木刀を交換して壇上に戻ってきた。
「はじめい!!」と審判の声、仕切り直しでの試合再開だ。
試合再開と同時に「”ウオー”」と黒騎士、木刀を片手で振り上げると、黒い野獣のような突進をしてベンに迫った。
”ブンッ”と黒騎士の木刀が空を切った。ベンがギリギリで見切ったのだ。
ベンが、流れる木刀を待たずに、両手で真っ直ぐに突きを繰り出す。
”カン”と何をどうしたのか黒騎士がベンの突きを木刀で弾いた。
ベンが弾かれた木刀を下にくるりと円を描いて回すとそのまま黒騎士の面に向かって振り下ろそうとする、
「勝負あり、黒の勝利!!」と審判の声、黒騎士の木刀の切っ先がベンの首に触れる寸前で寸止めされている。いつの間に、目にもとまらぬ早業だ。
ベンは負けた。
闘技場は一瞬”シーン”となったが、すぐに歓声と拍手が巻き起こった。
良い試合だったな。
だが黒騎士が一段上だったようだ。ベンは黒騎士の防御を崩せず、試合は一貫して黒騎士のペースだった。
黒騎士が、ベンに手を差し出した。握手する2人、なにか二人で会話しているようだ。
共に少し笑うと握手を解いて離れた。ベンが審判に挨拶している。お、戻ってきた。
「ベン、惜しかったな」と、俺
「ハア、ハア、ミチルだめだ、強すぎる。あいつには勝てない」とベン、
「良い試合だった、どうしようもない」
「俺、ちょっと行ってくる。黒騎士は話の分かるやつみたいだ」
俺は、黒騎士に向かって歩く、向こうがこちらに気づいて少し警戒したのが分かった。
こりゃまずい。俺は、両手をひろげると、少し笑いながら話しかけた。
「見事な腕前ですね、うちのベンに勝つとはすごい人がいたものだ」と俺、
「いやいや、今回は運が味方しました。ベンさんもかなりの腕前、あの年齢で凄い使い手です」と黒騎士。
おお、やはりこいつはまともなやつだ。話ができそうだ。
「ちょっとそこでお話できますか?」
「ああ、良いが」と黒騎士、近くのテーブルの席についた。
「回りくどい話は無しでお願いする。副賞のアマゾネス種の戦闘奴隷がどうしても欲しい、金で譲ってはくれないだろうか?」と俺、ストレートにお願いした。
「ああ、良いぞ。俺は妻もいるし、性奴隷などにも興味は無い。金貨500枚でどうだ」と黒騎士、
くー高いなあ。
「金貨200枚と、竜騎士のジョブ解除でどうだ?」と俺、小さい声で話した。
「竜騎士だと、本当か?」と黒騎士、ちょっと腰が浮いた。
「ああ本当だ、ちょっと待て証拠を見せよう」
「ベン!!」俺はベンを呼んだ。
「ベン、黒騎士さんに竜騎士のスキルである”真空兜割”を見せてあげてくれ」と俺、
ベンは少し離れると近くにあった木刀を持った。
「”真空兜割”」ベンはスキルを使ってみせた。”ビュン”と木刀が空を切り裂きうなった。
「竜騎士のスキル、真空兜割だ、ドラゴンジャンプと言う物も使えるようになるぞ」と
俺、
「わかった、金貨150枚と、竜騎士に”成れたら”だ。ジョブのアンロックは難しいんだろう?ジョブの解除を手伝ってくれ」と黒騎士。
「了解した。俺たち、アンロックを手伝うのは得意なんだ」
「交渉成立だな、賞金と副賞の受け取りは明日だ。明日の朝でどうだ?」黒騎士が手を差し向けてきた、俺はそれをがっちりとつかみ返した。
さすがにすごい握力、俺の手がもげそうだ。だけどそんな痛みよりもうれしさがこみ上げてきて思わず顔が緩んだ。
「そうしよう、あすの朝イチな約束しよう」
こいつは信用できるやつだ、何となく俺の直感でそう感じた。




