盗賊とクッコロ女騎士
第3部分 盗賊とクッコロ女騎士
焚き火だけの野宿ではあまりよく寝ることができなかった。
ステータスを見たり、アイテムボックスを使用したりして研究していたからだ。
アイテムボックスは長所もあるが、緊急時にアイテムを取り出せないことに気づいた。
武器なんかはだめだ、取り出すあいだに、敵に襲われてしまう。
レンはまだ横で寝ている。レンは猫耳族の少女で肉が好きみたいだ。
「私のシッポニャ、らめえニャ~」
寝言かあ。
「レン、起きろ朝だぞ」
声をかけながら揺り動かした。
「むにゃむにゃ、ここ何処だニャ?夢か夢なのかニャ?」
なんか昨日のこと忘れてるみたい。
「チョット向こうの方まで行ってくる」
昨日、タイムスリップで転送されて場所に戻ってみることにした、荷物が来てれば助かるんだけど、と思いながら歩いていると、
あっなんかあるみたいだ、裸足の片足が痛いが少し駆け足になる。
靴の片方とAmazunで買ったコンパウンドボウだ。
「なにも無いよりましか」
と呟きながら、片足についた土を払い、靴下履いてからスニーカーを履いた。
ようやく両足に靴が履けた。
小走りでレンのところまで戻る。
レンは、焚き火の横で猫耳を手でなでつけながら、シッポの毛づくろいをしていた。
「ミチル、耳がすごくよく聞こえるようになったのニャ。遠くでミチルがなんか言ってたのも少し聞こえたニャンよ」
「そうか、それは良かった、レンは狩人だから獲物とか探したりするだろうし猫耳が生かせるな」
「うん、ミチルのおかげニャン、尻尾も長くて速く走れるみたいニャ」
へー尻尾が長くなると速く走れるのか。
「朝ごはん食べる?」
「たべるニャ」
だよね。
小さく乾燥した固形麺をアルミのカップと小さい鍋にいれて、お湯を注いだ。
「熱いから、フーフーして食べろよ、猫舌だろ?」
と言うと、”猫舌?”なんのこっちゃ見たいな顔をされた。
今の表現は通じないな、もちろん。
「プハー、温かくておいしいニャン、少しお魚の味がするニャ」
鰹節の風味があるかも、と思った。
さあ、今日から目的地の遺跡”ストーンサークル”にむかって進むとしよう。
地図を広げて方位磁石を置き、進べき方角を確認してみると、
「すごい綺麗な地図、そんな地図いままで見たことないニャ、その丸いので方向わかるのかニャン?すごい魔道具ニャンなあ」
「そうか、普通の地図だと思うけど。レンさあ、ここの場所分かるか?とても大きな岩が円形に並べてある変わった場所なんだ」
地図の場所を指さした。
「聞いたことあるニャ。でもそこすごく遠いよ、昔お父さんが戦争の帰り道で見たと話していたけど毎日いっぱい歩いて、10日以上かかるかもニャよ」
「それに、一人でそこらへんに行くのはヤバいニャン、その場所の近く”深霧の森”の付近には強い魔獣も出る、ミチルたどり着く前に死んじゃうニャンよ」
なにそれ、強い魔獣って。
「強い魔物ってなに?そんなの本当にいるの?」
「魔獣いるいる、わんさかいるんニャ、盗賊なんかも多いし、一人では無理、無理ゲーニャ」
「ミチルさあ、道わかんないだろうし、いろいろ分かんなくて大変そうだから途中の村まで連れていってやっても良いんだニャよ~」と言いながら、
Amazunで買ったコンパウンドボウを指さした。
「あの、変わった弓を私にくれたらニャー」
と恥ずかしそうに言ってきた。
うーんまあ良いか、
「分かった、良い弓だけどレンに譲るよ、その代わり約束は守れよ、でどこまで行けるんだ?」
地図を指差した。
「この川の横にある湖までなら分かるニャ。そこまでなら安全だし、そこに知り合いが住んでいる村もあるニャンよ」
地図にある湖を指さした。
目的地の30キロ手前だがストーンサークルまでかなり近づける。確実に前進できる。助かったあ!
レンは早速、コンパウンドボウを触っている。
「使い方教えてあげるよ」
矢を放ってみせた。近くの木の幹に深く矢が食い込んだ。
「やってみるニャ」
レンは自分の荷物から矢を取り出すと、コンパウンドボウで同じ木に向かって矢を放った。
「すごいニャ、こんな弓があるニャンて、簡単に引けるのに、ものすごい威力ニャ」
すこしビックリしているみたいだ。
コンパウンドボウは弓の両端にある滑車が楕円のような形をしているので通常の弓よりも矢が加速するんだよね。素材もカーボンかなんかで木じゃないし。
「じゃこの矢もあげるよ。矢だけ持っていても仕方ないし。レンの弓はどうしたの?」
「魔獣に襲われた時にこわれたんニャ、金貨1枚もしたのにニャ」
立ち上がって出発の準備をすることにした。
「じゃ、さっそく出よう」
「こっちに町があるから、そこを経由するんニャ」
「パーティ組むんニャ」
とステータスを操作したみたい。ポップアップウィンドウが表れ”OK”を選択した。
だいたい方角も合っているので問題なさそうだ。
今は朝7時だからまだまだ歩ける。
しばらく歩くと、川が見えてきた。
「もう少し歩くと橋が見えるニャよ」
と前方を指さした。
さらに数時間歩いているとレンが言う通り橋が見えてきた、けっこう立派な石の橋だ。まだかなり遠いな。
「あっ、なんか変な気配がする、たくさんのヒュームの声と匂いがするのに、だれもいないニャ、何で?おかしいニャンよ」
「えっ、レンちょっと道のはずれに隠れよう。たしかになんか気配を感じるし怪しい感じだ」
そうだ、こんな時こそスキルだ。
「目利き」
少し隠れながら高い岩の陰から橋に向かって「目利き」スキルを唱えた。
橋の両端の下側に盗賊が潜んでいるのが表示された。
6人ほどいるみたいだ、あとは奴隷2人と表示されている。目視だと良く見えない。
「レン、盗賊6人と奴隷2人だ、なんか見えるか?」
「あっ見えた、私からは3人ほどしか見えないけど見張りだニャ、両端から挟みこんで襲うつもりニャ」
なるほど、兵法のセオリー通りの戦法だな、待ち伏せて橋の両端から挟みこんでの攻撃はかなり有利だ逃げ場もない。
「レン、作戦がある、盗賊は俺がひきつけ、逃げながら誘導してくる、あそこの山側の木から隠れて弓で狙い撃ちできないか?おびき寄せる場所はあそこの平坦で隠れ場所の無いところだ。あそこで狙撃されたら逃げ場所がない。仮におれが捕まったり、殺されたりしたら、おれに構わず走って逃げろよ」
フラグかもと思ったが、大丈夫だよな。
「うん分かった、あの距離なら絶対外さない、問題無いニャン」
「盗賊は社会の敵、やっつけて当然ニャよ」
「レン、それと、腰にさしているハンティングナイフかして欲しい、おれこのナイフしかないから」
「はいニャ、頑張るニャよ」
「じゃ作戦開始だ」
レンは走って山を上る。
太い木によじ登り狙撃する位置についた。あそこなら完璧だ、レンは手を挙げて準備OKのサインをだしてきた。
よし行くか、
俺はゆっくり歩き、橋の手前で盗賊に気づいたフリをして走って引き返すと、橋の手前側にいた3人が走って追いかけてきた。橋の奥側の3人と奴隷2人に動きは無い。
チャンスだ。
道を外れて狙撃ポイントへ誘導してきた。前方から”ヒュッ”と言う風切りおとがしたと思ったら、後方から、
「ギョエ、痛てえ、矢だあいつ仲間がいるぞ」
と声が聞こえた。
振り返ると残りの2人が辺りをきょろきょろ見渡している。また”ヒュッ”と言う風切りおとがした。もう一度風切り音がするとバタバタと盗賊が倒れた。
頭に矢が突き刺さっている。初めに倒れた一人が生きていて、ギャーギャーさわいでいる。近づこうとすると”ヒュッ”と別の場所から音がした、レンは移動したらしい。盗賊3人が始末できた。
残り3人だな。橋の向こうだ。
レンと合流し、ハンティングナイフをレンに返した。
倒れている盗賊が持っていた片手剣を拾う。
「レン、向こう側の敵が橋を渡ってくる時がチャンスだ、落ち着いて狙えよ。近づかれたら俺が時間をかせぐからさっきの場所で隠れて狙撃してくれ、2段構えの作戦な」
「了解ニャンよ」
走りながら、橋の手前側まで来ると、橋の向こう側から盗賊3人が走ってくるのが見えた。
「馬鹿な奴らだ、レンやってくれ」
「はいニャ」
矢を片手で3本もつと”ブン、ブン、ブン”と3連続で矢を発射した。
橋の上で盗賊が2人倒れた。一人は矢を剣で叩き落としたみたいだ。
剣で戦うしかないようだ。遅かれ速かれこういうことはこれからも有る。逃げてばかりはいられない。
「レン、後からけん制してくれ、俺に当てるなよ、痛いから」
と言うと、
「フフ、あっもう来てる、早く行ったほうが良いニャンよ」
と矢をつがえた。
右手にナイフ、左手に片手剣をぐっと握りしめながら歩く。走ってはだめだ。走ると呼吸が乱れ、間合いも測れない。剣術の指導を思い出した。
「おうおう、ガキのくせしてやってくれたなあ」
盗賊のリーダーだろう、威嚇してきた。
「お前が盗賊のリーダーか?こっちは2人、2対1だ、降伏しろ!命だけは助けてやろうじゃないか」
と挑発した。
「うるせえ、死ねえ」
俺を近くで見て若いと見たのか、剣を振り上げてイノシシのように突進してきた。
俺のペースに乗ってきたな。
右手に持ったナイフを盗賊の体の中心めがけて思いっきり投げつけた。
すぐに左手の片手剣を右手に持ち替える。
盗賊のリーダはナイフを払い落とそうと剣を下げた。
今だ、俺はそのタイミングで踏み出し盗賊の手を狙って片手剣を振るった。
左手を切り裂かれた盗賊は、剣をポロリと落とす。
つかさず、その剣を蹴飛ばして遠くへやると、やつの首元に片手剣を押し当けた。
「命だけは助けてくれ、なんでもやるから、アイテムボックスの中も全部出すから、助けてくれ」と盗賊が言ってきた。
「ほう、アイテムボックス持ちなのか、もちろん全部だせ」
片手剣を少し動かすと、盗賊のリーダはアイテムボックスからお金の入った袋や何かの薬らしき物、などをゆっくりと道に出し始めた。
レンが弓を構えながら近づいてきた。その時、
盗賊はアイテムボックスからナイフを取り出すとまっすぐ俺に向かって突き出してきた。
体を後ろにねじってナイフをかわすと”ドス”と言う音がした。
レンが矢を放ったようだ。
盗賊のリーダの体に矢が突き刺さり、背中の後ろまで貫通していた。
「おおっあぶねえ、レン、助かったよ」
と俺が言うと、
「盗賊は汚いから信用しないで、油断すると命とりだニャン」
怒ってはいるけど、語尾が”ニャン”だからな。
「目利き」俺はスキルを起動し、辺りを見渡す。
が、盗賊はもう表示されなかった。
奴隷の2人は橋の下に止めた馬車から動いていないようだ。
「レン、こいつらの死体どうする?」
盗賊の死体を指さす、
「もう少しで町があるから、衛兵に渡すと良いニャンよ。手配されていると報奨金がもらえるし、合法的に装備は全て私たちの物になるニャン」
なるほど、それでは集めるか、盗賊の装備を外して一か所にまとめた。
馬車にむかい、幌の中を覗いてみる。
「盗賊か!さては私たちを辱めるつもりだな、武人として耐えがたき屈辱だ、クッ、早くコロせえ!!」
きたあ、クッコロだ。
「ベンさん、盗賊を挑発すると殺されてしまいます。ここは我慢です。おとなしくしていましょう」
「くっ、くそう。スザンナ、こんなこと我慢できるか、おい盗賊、私たちに手を触れてみろ、噛みついて殺してやる、ギギい」
と言ってきた、こぇー。
「目利き」と小さい声で二人のステータスを確認する。
年上のピンと耳が長いお姉さんはベンジャミン・マクギルス(元貴族)、”落ち騎士”ジョブでLV15だが、現在は性奴隷と言う表示、右手が肩から無い。斬り落とされたのかもしれない。
種族名はエルフとなっている。30歳の表示だが見た目はすごく若く見える。ホントか?
もう一人は、小さくて耳は長いが少し垂れている。名前はスザンナで”鍛冶師見習い”ジョブのLV5、現在は性奴隷と言う表示だった。種族名はドワーフだ。15歳の表示で歳相応といった感じだな。
この子はさっきからずーと目を閉じているようだ、目が悪いのかもしれない。
レンが後ろから覗いてきた、
「あっ奴隷ニャン、助けるニャンよ」
と言った。
「安心しろ、おれは旅の者だ、盗賊ではない。盗賊は全員やっつけたぞ、助けてやる」
「フウ、それを早く言ってくれ、恥をかいたではないか、もう」
と年長のエルフが言った。なんか安心したようだ。
彼女たち2人は馬車の荷台に鎖でつながれていた、とりあえず外してやる。
馬車から2人を下し、
「水でも飲むか?」
と2人に水筒とカップをわたしてやると、ゴクゴクとおいしそうに水を飲んだ。
「レン、この2人ってどうなるの?」
「奴隷は、盗賊から取り返した物の扱いになるニャン、衛兵につたえれば、合法的にミチルの奴隷として所有できるハズニャンよ」
キター、異世界転送早々に”くっコロの女騎士”と、”鍛冶師見習いの娘”をゲットできたぜ。とうとう俺の時代がやってきたようだ。
「そ、そうか。そうなんだあ」
平静をよそおいつつ、必死にこらえて回答したが、もしかして嬉しさ、いやガッツポーズが顔から飛び出していたかもしれん。
「よし、盗賊の死体を載せてさっさと町まで移動するぞ。馬車操作できる人いる?」
俺むりだから、なんか馬怖いし。エルフのベンジャミンが手を上げていた。
「片手しかないので、手伝ってくれるのならば問題ない。馬の扱いは得意だ」
とのこと、さすが”くっコロの女騎士”だけのことはある。落ち騎士というのは、敗残兵と言う意味だろう、戦国時代で言うと落ち武者みたいなものなのだろうな。
「助けていただき、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
ドワーフの少女が頭をさげた。真面目なやつだな。
馬車がこんなに早いとは、おそらく徒歩の6倍以上の体感で速い気がする。
だけどもお尻が痛い。ガツガツンとくる。何の拷問だよこれ。
街が見えてきた、あれが街かあ?お城に見える。高い塀で囲まれているようだ。
門が一つ見えて、両側に衛兵が槍を持って立っている。手前で馬車を止めると、レンと2人で衛兵に話かける。
「お疲れ様です。盗賊に襲われたので返り討ちにしたのですがどうすればよいでしょうか?」
「なに?本当か、あっ、お前はレンじゃないか、大丈夫だったか?」
どうやらレンは衛兵と顔見知りのようだ。
「大丈夫です。盗賊の装備と奴隷はこちらのミチルさんが頂いてもよろしいでしょうか?盗賊の持ち物は討伐した者に所有権が移るはずだニャンよ」
「その通りだ、だがちょっと待ってくれ、その馬車は奴隷商人のザブルの物のようだ、呼んでくる」
面倒なことになりそうだな。なんかイライラしてきた。
しばらく待つと、金持ちそうな太ったオヤジをつれて衛兵が戻ってきた。
「この度は私の馬車と奴隷を取り戻していただいたようで感謝します。早速返してもらってよろしいでしょうか?」
と言ってきた。
「それはおかしいな、さきほど衛兵の方に確認したが、盗賊の持ち物は全て討伐した者に所有権があるらしい。俺をだまそうとしているのか?」
強気で交渉してみることにした。
奴隷商人のザブルは衛兵をくやしげに睨むと、こちらを見ながら笑ってきた。
「ああ、それはこちらが勘違いしていたようです、ミチルさまの持ち物で間違いございません。ですがこちらも商人ですので、交渉させてもらえないでしょうか?お金でなんとかできませんでしょうか?」
と言ってきた。くそ野郎だ、と思いながら、先ほどの衛兵とのやり取りでなんとなくだが、このザブルと言う商人と揉めるとやっかいな気がした。つまりのところ金持ちで有力者だ、あまり逆らわない方がよいだろう。元グリンベレー教官も現地有力者と揉めると即命取りになると言っていた。なんとなくだが、そうなる予感もした。
「初めからそう言ってくれれば良いのだ、こちらも初めからそのつもりだ」
と返した。奴隷商人のザブルがニターと笑うと、汚い歯が見えた。
レンのような名人の狩人が使う弓が金貨1枚と言う話を思い出した。
「では金貨100枚ではどうか?」
高めに言ってみた、
「金貨100枚はあんまりです。奴隷2人で20枚、馬車で30枚が限度です」
と言ってきた。レンを見ると、レンもいまいち相場が分からないようだ。頼りにならんなあ。困った。
「ふざけるな、奴隷2人は俺がもらう、金貨40枚で馬車を返えすぞ」
とぎりぎりの相場を探ってみた。奴隷商人のザブルがなにやら頭の中で計算しているようだ。
「うーん、ミチル様も商売がお上手ですなあ、それで手をお打ちいたしましょう。それではこれで」
ザブルは懐から金袋を取り出すとその中から金貨を10枚取り出し、袋ごと俺にわたしてきた。数えるべきか?と少し考えたが、すぐにやめた。パッと見40枚ある感じがした。
ザブルは奴隷2人を俺に渡すと、なにやら呪文のようなことを唱えた。
「目利き」
とスキルで確認したところ、奴隷2人のステータスに所有者”ミチル”の文字が確認できた。どう言う仕組み?と思うが、まあ奴隷2人を手にいれられたようだから良いとするか。
衛兵が近づいてきた、
「ミチル殿、奴隷商人のザブルはこの町の有力者で面倒な男です。揉めなくて助かりました、何か困ったことがあれば言ってください。」
だよね、思った通りだ。
「4人で泊まれる宿屋はどこが良いか教えてもらいたいのだが」
と言うと、
「あそこに見える看板のドリーの宿屋がおススメです。飯もおいしく、トラブルも少ないです。値段も妥当です。」
「ありがとう、ドリーの宿屋に泊まることにするよ」
ドリーの宿屋の受付で金を払う、節約の為一番安い4人部屋にした。体を拭くお湯は後でお持ちしますとのこと、夕飯は暗くなってかららしい。
部屋に移動すると早速自分も含めて4人を
「クリーニング」
のスキルで清潔にした。
「マルチリペア」
でエルフの右腕、ドワーフの目を治療する。
その後で、
「驚くかもしれんが、俺のスキルだ、とりあえず自己紹介してくれ」
と2人に言う。2人はあまりの驚きに声が出ないようだ。
ドワーフの少女はいきなり声をだして泣き出した。そりゃ嬉しいよな。目が見えるようになると。
しばらくすると、エルフのおばさんいや、少女に見えるおばさんが
「神の手、これは神の手と言うスキルでしょうか?」
と聞いてきた。
「いや違うな、俺のスキルで別の名前だ、気にするな自己紹介を頼む」と言うと、
「私の名前はベンジャミン・マクギルスで、戦争に負ける前は貴族でした、戦争で奴隷になりこのようになりました。元のジョブは騎士でLVは15です。年齢はさん、あいや、えーっと”18歳”でーす」
あっ、こいつ本当は30歳なのに、18歳とむちゃな”サバ”よんできやがった。
そうかパーティになってもジョブとレベル、スキル、基本的なステータスしか見れなかった。
年齢は見ることができないから普通はバレないんだ。エルフだから若く見えるしな。
「そうか、俺は19歳だ、レンは何歳?」
「16歳ニャ」
「では、次はドワーフの彼女よろしく」
ドワーフの少女が話しだした。
「私の名前はスザンナです。ジョブは鍛冶師見習いでLV5でした。歳は15歳です。奴隷になった理由は村を盗賊に襲われて、生活に困ってしまい。奴隷として売られました」
ふー気が重くなる話だ、
「いまジョブは奴隷だが、治療もして戦えるようになったわけだし、元のジョブに戻したいのだがどうすれば良いんだ?」
「奴隷の解除にはお金がたくさんかかります。たしか1人で金貨10枚ぐらい必要です。安くて手っ取り早いのが、冒険者ギルドで戦闘奴隷として登録することです。そうすれば私たちはジョブ神殿で基本ジョブを設定済みですので、元のジョブに戻れます」
「なるほど、ところでジョブ神殿ってなに?」
「ステータスの一番下に、選択できるジョブが表示される項目があります。そこに表示されるジョブにはジョブ神殿で転職できます」
「ステータス」
自分のステータスを見てみるが、転職可能なジョブの一覧には何も表示されていなかった。
この異世界は、俺の”職業選択の自由”をうばいやがったか。
「レン、レンはなにか表示されているか?」
「あっされてる。スカウターって表示されてるニャ、スカウターって何だニャ」
「スカウターは弓やナイフ、投げナイフが使える戦闘職です。索敵や罠の解除、先制攻撃ができるのでダンジョンに入るパーティにはかならず1人必要です。狩人から転職する人が多いので実質的に狩人の上級職です。スカウターはレベルが上がるとアサシンという強力なジョブに昇格できます。レンさん、今回盗賊を討伐したことでなんらかしらの条件を満たしたんだと思います。
この機会にスカウターに転職することをお勧めします。狩りをする上でも有利なジョブです。」
ベンジャミンは歳くってるだけあって物知りだ。
ありがたい。ダンジョンかあ、在るんだ異世界らしいな。
「ベンジャミン、アドバイスありがとう。とても物知りだな。これからもよろしく、それで呼びにくいので俺もベンと呼んで良いか?」
「もちろんですミチル様」
「ああ、俺のこともミチルで良い、俺たちはこれからは仲間だ、呼び方は”呼び捨て”で全員で統一しよう。ちなみにリーダーは俺だからな、よろしく」
「パーティを組むぞ」
ベンとスザンナにパーティ参加を飛ばして2人追加で4人パーティを組んだ。
「明日は全員で冒険者ギルドに登録して冒険者になる。そしてジョブ神殿に行きレンの転職もする。武器屋・防具屋なんかで必要な物を買って装備を整える。強くなって金に余裕ができたらベンとスザンナの奴隷解放をする。これは約束しよう。当面はそれがこのパーティの目標とする。じゃ夕飯に行こうぜ」
そう言うと、全員の顔が明るくなった。
とりあえずだ、とりあえずこれで行くしなかない。
信頼し合い、パーティを強化しないと目的地までたどり着けない。これで良いんだよな。
あーしかし腹減った。