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猫耳娘のレン

第2部分 猫耳娘のレン


「あーあ、俺やっちまったかも」

 大草原のど真ん中、たった一人だ。

どうやら、タイムスリップは成功したみたいだ。

転送される際、一緒に持ってきたキャリア荷物とははぐれてしまったが、リュックは無事だ、その中に入れていた携帯端末のセンサーで土壌を検査したところ、今おれは3000年前の過去にいるみたいだ。


GPSが使えないので携帯端末で太陽と星の位置を観測する。

ディスプレイに表示された経度・緯度を確認し、その位置情報を、紙の地図にマークした。

まわりに見える風景からも、俺がマークした位置で間違いない。

目標の遺跡までの距離をスケールで計測してみる。

「目標の遺跡まで100キロ近くある」遠いなあ、


直線100キロということは、徒歩だと整地されていない場合10日~20日くらいの移動距離だ。想定していたよりもかなりの距離になる。携帯端末で平均移動時間が表示されているが、12日と12時間と表示されている。こんな値は参考にならない。

しかも、右足の靴が転送時に脱げてしまい、片足は裸足だ。



さっきから、ひどい頭痛である。歩くたびに振動が脳につたわり、まともに歩くことができない。

これは転送の影響なのか?直るのか。なんか不安だ。


とりあえず、フラフラの状態で草原にぽつんと一人では無防備すぎる。

木の陰や岩の陰に移動し安全の確保だ。

残りの荷物が後れて届くかもしれないから、木の枝でこの場所に印をつけておくことにする。

とりあえず今は移動できない。

サバイバル訓練で得た知識を有効活用する時だ。


 一番近くの大きな岩と木が立っている場所までまっすぐ移動し、移動してきた方角に印をつけた。

もうすぐに暗くなるな。

テントも無いし、今日はこんなところで野宿だ。天気が良いのが唯一の救いだった。

頭痛を我慢しながら、焚き木を集めて、火をつけた。

リュックから保温シートを取り出して、寒くもないのに体に巻き付けておく。

そうすることで、なんか少し安心できた。


正直、とても心細い、と言うかよくわからない不安からくる恐怖に近い感覚だ。

なんかお腹に入れた方が良いかもしれない、腹が減りすぎていると人間は精神的に不安定になるんだった。


「そうだ、なんか食べよう」

だれも聞いていないにもかかわらず、声に出して言ってみた。

すると、

”ガサゴソ”

と後ろの木の陰から音がした。

Amazunで買った大型ナイフに手をかけ、攻撃に備える。

「ごめんなさい、脅かせたニャン、食べ物分けてほしいニャンよ」

ニャン?

そこには猫耳と短い尻尾をつけた。女の子が立っていた。

あっこれは現地人だ、攻撃してはいけない。

「ああ、大丈夫だ。なに食べ物か?なにがあるか見てみよう。干し肉で良いかい?」

無理して平然を装い、答えた。声が震えていたな、たぶん。

「作戦遂行に現地人の協力はかならず必要になる」と訓練してくれた元グリンベレーの教官が何度も言っていた。ここは現地人を必ず味方にしなければいけない。と言うか結構かわいい女の子なのでぜひとも友達になりたい。

このヒクヒク動く猫耳とブンブン動く尻尾はもしかして本物か?

これはもしかして、なろう系小説の鉄板である”異世界転生しちゃった系”なのか!大丈夫か俺。

なんか良くわからん不安と期待が同時に膨らんできた。


「干し肉おいしいニャン、塩味が丁度いいニャンよ」

猫耳の娘は干し肉を噛みながら、耳をピクピクと動かしている。口を観察したところ小さな牙のような物がチラリと見えた。

こりゃマジもんだな、マジでヤベーかも。

「俺は遠方から旅をして来たんだ、失礼なことを聞くかもしれないが、その猫耳と尻尾は本物か?」、勇気を出して聞いてみた。


「お兄さん、猫耳族を見たことないのかニャン?、猫耳も尻尾も本物ニャンよ」

猫耳を手で寝かせると耳付け根を見せてくれた。尻尾をピクピク動かしてくれた。


「ニャ、本物なんよ、取れニャいよ」

「チョット触ってもいいかな?」と言いながら触れてみた。

「アッあん!、耳はダメなのニャン」

 猫耳の娘が頭をブルブルさせた。ああ、たしか猫もこんなしぐさするね。


「もう、猫耳族の耳を触ると言うことは、結婚してくださいの意味になるんだニャンよ、責任とってほしいニャンよ」

 なんか怒らせたみたいだ。


「お詫びに、もっと干し肉くれニャン」

手を前にだしてきた、手は普通の手だな、肉球は無い。

「それは申し訳ない、それではもう少し干し肉をやろう」

干し肉をちぎって手渡した。


「へっへっへー、本当に何も知らないんだニャー」

干し肉を口に入れて笑ってきた。

くそ、だましやがった。

「くそ、だまされた」

と笑いながら俺が毒づくと、レンは勝ち誇った様子で笑ってきた。



少し安心する、現地人とは問題なくコミュニケーションが取れるようだ。

「ところでお兄さんの名前は、ジョブとレベルは何?私は狩人でレベル5の”レン”なのニャン」

「ふーん、レンて言う名前なんだ、俺はミチルだ、ジョブとレベルって何なのよ、どうすれば見れるんだ?」

「エー、そこからかあ?”ステータスオープン”で自分のステータスは見れるニャンよ」

「ステータスオープン」

 声に出していってみると、半透明のステータスウィンドウが表示された。

 どうやら、彼女の様子から見てステータスは自分自身にしか見えないようだ。

「これって、もしかして自分にしか見えないの?」

「パーティ組んでないと、他人からは見えないニャンよ」

「それでミチルのジョブとレベルはなんになってるニャン」



 俺のステータスは

「ジャンクコレクターでレベルは1だな。このスキルってなんだ。

順番に白い文字で

”マルチリペア”

”目利き”

”クリーニング”

と三個、

その下に青い文字で

”節約レベルアップ(中)”

”コレクターボックス”

”省エネ(小)”

と書かれているんだけど?」


「ふーん聞いたこと無いジョブだね、スキルもレアスキルかもしれないニャンね」

「レアスキル持ちは隠した方が良いって聞いたことあるニャンよ」

「ミチルは気を付けた方がいいニャンね」

まじか、そういうありがちな展開かあ。

ほかにも、ゲームのようなHP・MPや力・体力などの各種能力値が表示されている。

「白い文字はアクティブスキル、青い文字はパッシブスキルなのニャン」


「ミチルはもしかしてボックス持ちかも?うらやましいニャン、すごく便利なスキルなのニャンよ、ボックスオープンって言うと使えるニャンよ」

まじか、これが異世界なのか。

「ボックスオープン」

 と言ってみると、右側に半透明の箱が表れた。なんか物たくさん入りそう。

「ボックスクローズ」

 と言うと消えた。

「やっぱりアイテムボックス使えるニャンね、すごいニャン」

 続いて他のスキルを試してみる。

「マルチリペア」


 半透明な赤い円が表示された、レンの右足と、右耳、尻尾の先端が選択できるようだ。

「レンの右足と右耳、尻尾の先端が赤く表示されているぞ」

 リペアて言うことは、なにか直す能力のようだ。

「え、本当に?、今朝狩りでCランクの魔獣が急に襲ってきて逃げた時、右足くじいているし、右耳は子供の頃に高熱だして聞こえなくなっていて、尻尾はずいぶん前にツノワニに食いちぎられたんだニャンよ、なんて可哀そうな私ニャンよ」

ふーん、つまりリペア対象の選択になるって言うことだな。

「ちょっといいかい」

と言いながら尻尾の先端をギュッと握ってみた。

「アッだめ、ニャふん」

レンは何か言いながらピクッと反応したが、握った部分が少し明るくなり、欠損していた尻尾の部分が長くなり本来の長い尻尾に戻ったようだ。

尻尾の先端は白かったのね。



俺、スゲー。マジすごい能力もってんじゃん。自分の手のひらを見た。

「ニャー、ニャー私の尻尾が元通りになってるニャンよ、ニャワワン」

と言うと、泣きながら抱き着いてきた。

「ありがとうなのニャー」

何度も同じことを繰り返し言ってくる。

「わかった、もういいから、残りの2箇所も治療しようぜ」

「ミチル、よろしくお願いしますニャン」

 頭を下げてきた。では耳からね。

「マルチリペア」

 その後、足も治療したところ、

「夢じゃないよね、ミチルすごいニャン」と何度も言いながら、レンは焚き火の近くで寝てしまった。



レンに向かいながら、

「目利き」

と言うと、これはいわゆる異世界転生でおなじみの”鑑定”という能力であった。予想通り他人のステータスをみることができたし、レンが身に着けているハンティングナイフも鑑定できたことから間違いなさそうだ。素材は”鉄”らしい。

「クリーニング」

と言ってから、裸足の片足を選択すると、石鹸で洗ったように綺麗になった。

急に頭痛がしてきた。

あっ、もしかしてコレは、

「ステータスオープン」

 頭痛がひどくなったと思ったら、MPが1まで減っている。

どうやらスキルを使うとMPを消費するみたいだ。やべーMP0になったら俺は死ぬんだろうか。

気をつけなくては。  

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