03.アイオナイト
その、うすぼんやりとした道は景色が変わらないせいか、その場で足踏みをしているような、つまり、全く進んでいないように感じた。
だけど、慣れてくるとふわふわ浮いている色とりどりの光が一つ一つに個性があって、違う大きさ、形をしているのが分かってきた。
何百もの光を見送り道を歩いていると、今度はさわさわと囁き声が聞こえてきた。
「わわわっ人間だ!」
きょろきょろと辺りを見回すが光が浮いているだけで人の影はない。
「あれ?もしかして僕たちの声が聞こえてるのかな?」
「アレックス、聞こえる?」
「うん。多分、この子だ」
そう言ってアレックスがブルーの光に触れる。
すると、どうだろう。光の玉だと思っていた物が羽の生えた小さい人-妖精の姿に変わった。
「うわあ!見つかった!」
「あおちゃんが見つかった!」
一度認識すると、辺り一面の光が全て妖精の姿にしか見えなくなっていた。
「わっすごい、こんなに沢山の妖精がいるなんて」
「うん、すごいや」
「ねえ、きみたち何しに来たの?」
慌てている小さな妖精たちを余所にあおちゃんと呼ばれていた妖精が興味深そうにこちらを伺っている。
「千樹の雫を探しに来たの」
そう答えると、わた小さな妖精たちのざわめきが大きくなる。
「せんじゅの雫?」
「ペリひめさまの涙?」
「ドラじじさまの朝露?」
「そうか、きみは千樹の雫が必要なんだね」
うーん、と少し考えたようにしてから、その妖精はパッと笑顔になって言った。
「ぼくの名前はアイオナイト。皆からはあおちゃんって呼ばれてる。きみたちもそう呼んで!ぼくがきみたちを案内してあげるよ!」
おいで!そう言ってあおちゃんが道を進む。私たちも小さな妖精たちに背中を押されるように後を負う。
「待って!どこに行くの?」
「それは、ぼくだちの村さ!」
「そこに千樹の雫があるの?」
「千樹の雫は村にはないんだ、だけど長老様が教えてくれる。どうやったら千樹の雫にたどり着けるか!」
「!、姉上!」
やっと手に入る、やっと治せる!アレックスの病を!
「ありがとう、あおちゃんっ!お願い連れていって!」
「任せて!」
あおちゃんが先導してくれてからはあっという間だった。
ずっと続くかと思っていた暗闇は突如ぱっと晴れた。
リスの巣のような木の家、木と木を結ぶ橋。きのこの白い水玉は開閉式でたまに妖精がぴょこんと顔を出した。
「わぁぁ!」
「驚いた?ここがぼくたちの村だよ!」
まるで、おとぎ話の世界だ。
よくアレックスに読んであげた物語に出てきた妖精の国そのまま。
「こっち、こっち~」
そうして、着いたのは一番大きな木。
「ここに長老様がいるよ」
「長老様はおじいちゃんだよ」
「おひげが長いよ」
「おひげが白いよ」
いつの間にか私とアレックスの頭や肩にくっついている小さな妖精たちが楽しそうに教えてくれる。
「姉上、妖精ってかわいいね」
「そうね、楽しそう」
「ふぉふぉふぉ、そうなのじゃ、妖精は楽しいことが好きなのじゃ」
一足先に中に入っていたあおちゃんと一緒に出てきた人が、またも、イメージする妖精の長老様そのもので、アレックスと私は思わず顔を見合わせたのだった。