ポートレート
新作の映画を
たしかふたりっきりで見にいったとき
つめたいかぜが
わりとしたたかに
日々を形づくっていた気がする
くっきりとしていて
必ずそこにある
世界は孤独でできており
やがて凍てつくような寂しさに僕は行着くのだろう
それを知っていても愛した
人は最期までひとりっきりなのに
きみのポートレートが一枚
小さなアパートの壁に貼ったままだ
僕は昨日そこを離れた
きみは僕のなかで死に
やがて僕はきみになる
いつかの愛を覚えているのは
小さなアパートの壁だけ
薄汚れた壁だけ