花子さんと約束
それは偶然だった。あの時、あの人と出会ったのは。
「ねぇ、願い事があるの。」
ある日そう声掛けられた。そして、その人は”幽霊”だった。それに”トイレの花子さん”の様なおかっぱで頭にリボンを付けていた。
「ある人に会いたいんだ。会って話しがしたい。叶えてくれるね、葵。」
何で名前知ってるんだよ。それに拒否権がない感じだし。
「いいよ。ただ、迷惑はかけないで。」
「なるべくはかけないようにはする。まぁ、しばらくはずっと一緒にいるから。」
「嘘でしょ...。」
「私の事は好きなように呼んで。」
「じゃあトイレの花子さんみたいだし、”花子さん”でいい?」
「......。まぁそれで良いか。」
何となくだけど花子さんを見た事がある様な気がする。ただ、僕は幼い頃から”幽霊”が見えた。花子さんを昔見かけていたのかもしれない。まぁ、幽霊がどんな存在かも分かってるつもりだから関わりたくない、それが僕の本音だ。
「嫌だなぁ。」
「あははは!これからよろしくね、葵!」
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あれから数日がたった。花子さんの願いは叶えられていない。花子さんの探し人は、男って事しか聞けてない。
「ねぇ、花子さん。いい加減何か情報が欲しいよ。じゃないと探せるものも探せない。」
「そうだね...もう見つけてはいるんだけどあっちが気づかなくてねぇ。」
「だったらもういいじゃないか。」
「ただ見るのと会うのは違う事だよ。」
見たんだったらいいじゃないか!僕はついそう思ってしまう。
「あぁ!もうどうしたらいいのかわかんないよ!」
「あはは!沢山悩みな。」
「うるさい!笑うな!」
「笑う事は大切な事だ。」
「知るかよ、そんな事!」
あ、やべ。しくった。大変なことになる。この前は口が悪い!って数時間ずっとお説教だった。正座で。
「口の利き方がなってないようだね!これだから全く...。」
あれ?いつもはもっと言ってくるのに。どうしたんだ?
「どうしたの、いつもの元気ないようだけど。」
「最近霊力が無くなってきてね。少し辛いんだよ。」
「葵。」
「何?」
「少し疲れたから、しばらく離れる。」
「何言って、「幽霊と関わりたくないんだろう?それでいいじゃないか。」」
「っ!......そう、だけど。」
「葵は私の事は忘れるから、大丈夫だよ。」
......それ知らない。忘れる?何で?そういえば花子さんについて何も知らない。本当の年齢も、顔も、名前も。
あれ、頭が痛い。それに段々眠くなってきた。視界がぼやけてる。
僕は今、
”なにをしていた?”
そう思った瞬間意識が途切れた。
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目を覚ますと自分の部屋の天井が目に入ってきた。あれ?いつの間に寝ていたんだろう。まぁ、いいや。
それから学校へ行ったり、勉強したり、ゲームをやったり。そんないつもの日常だった。だけどモヤモヤする。何か忘れてるのか?
最近ずっとモヤモヤしてる。何かイライラするなぁ。
あれ?じいちゃんが何か見てる。何見てんだ?
「じいちゃん、何見てるの?」
「あぁ、葵か。これはな、俺の小さい頃のアルバムだよ。この頃にばあさんと出会ってなぁ。」
じいちゃんはしみじみと教えてくれた。アルバムを僕は見てみた。そこには幼いじいちゃんとおかっぱのリボンを付けた幼い少女がいた。
なんだろう。僕は知ってる。何を?アルバムを?いや、このアルバムは初めて見た。じゃあこの感覚は?
「......ねぇ、じいちゃん。この子誰?」
「こいつか?こいつはな、ばあさんだよ。ほら、面影があるだろう。」
「そうなんだ。」
ばあちゃんは僕が小学生の時に死んだ。そういえばもう少しで七回忌だったような。
「実はなぁ、ばあさんとの約束をまだ果たしてないんだよ。それはもう叶えられないのかもしれないけれどなぁ。」
幼い頃のばあちゃんの姿が頭から離れない。
はなざ..き…しず..こ...。
何か大切な事を忘れている気がする。はな……こ?はなこさん?そういえば花子さんは?
「じいちゃん、ばあちゃんとの約束って何?」
「それはな……秘密だ。それの内容も秘密って約束なんだよ。」
もしかして。
「……じいちゃんってさ、幽霊見える?」
「俺は見えないぞ。何だ葵、お前もしかして見えるのか!そうかそうか。ばあさんもな見える人だったんだよ。」
「そっか。じいちゃんはそう言うの信じるの?」
「もちろん。昔は見えなくとも感じていたからなぁ。最近までばあさんが居るような気がしていたんだか、もう分からないよ。俺も見えていたらなぁ。」
「俺最近までばあちゃんと一緒だったかも。だからじゃない?」
「ばあさんはいたのか、そうか。もういないのか?」
「うん。少し疲れたから休むって言っていなくなっちゃった。」
「そうか。……会って話がしたかったなぁ。」
花子さんはばあちゃんだったのかな?じゃあ話しがしたかったのはじいちゃん?
何だ、こんな近くにヒントと答えがあったなんて思わなかったよ。あははっ。笑っちゃうね。
ねぇ花子さん、次会った時僕が通訳になるから。そうしたら話せるでしょ?そのためには花子さんと会うことや忘れないようにするから。僕は諦めないからね。
初めて小説を書きました。
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