はじめてのおしごと
はじめてのおしごと。
命に関わるような依頼なら、なるべく避けたい。
とはいえお金は欲しい。
……いい仕事、あるかなー。
とりあえずギルドマスターに声をかける。
「何か、あたしたち向きの仕事、ありますか?」
「おう、ちょうどいいのがあるよ。発破。」
はい?
ハッパ?
「一昨日のハリケーンあったろ、あれで隣の村に行くトンネルがふさがっちまってよ。
魔法でどーんとぶっぱなせば一発じゃねえか、って。
まぁ、人力で岩どかして粉砕してくれてもいいんだけどよ。」
……なるほど、発破ね。理解しました。
「えっと、それはおいくらで……。」
「200ギルダーだよ。安すぎるかい? お嬢ちゃんたちにゃーちょうどいいと思うが。」
確かに、ギルドの依頼としては安すぎる。とはいえ時給換算ならものすごく高い。
3人で1週間ぐらい食べ放題で泊まれちゃう。
「わかりました、是非その仕事、やらせてください。依頼主は?」
「お役所だよ。安全確実だぜぇ?」
「確かに、何かあっても責任は取ってくれそうですね。」
とりあえず、はじめてのおしごとは安全確実なお役所の下請け、と。というか、役所にそれぐらいの魔導師いないのかな……不安。
お役人立会いのもと、ルミがひとりで呪文の詠唱に入る。
え? ズルイ?
そんなわけないじゃないの、お役所特有の書類のスタンプラリーはあたしがこなしたのよ!
”Brechen Sie!”
岩は砕け散った。
そして――トンネルは崩落した。
もちろんあたしたちは1ギルダーたりとも貰えなかった。
始末書まで書かされた。




