不思議な依頼
あたしたちは一旦港町へと引き返し、装備を整えることにした。ドラゴンの棲む洞窟近くの大きな街では、いちばん硬い武器だと言われてしまったのでそれ以上が望めないと思ったからだ。港町なら海の向こうからなにか変わった武器が運ばれてくることもあるかもしれないと思ったのもある。
潮風が香り始めた頃、あたしたちは忘れていた空腹を思い出した。町に着いたらまずは腹ごしらえだ。腹が減ってはなんとやら?
前回と同じく、名前が覚えられないシーフードのなんたらに舌鼓を打っていると、どこかで見た顔が突然話しかけてきた。この町の町長だ。
「ワーウルフの件では世話になったな、お三方。旅立ってずいぶん早く戻ってきたようじゃが、何かあったのかの?」
あたしたちは正直に答えることにした。
「ドラゴン退治をしなきゃいけないんですけど、装備が心許なくて……ここなら何か手に入るかなと思いまして。」
「なるほどの。しかし武器商人はつい最近帰ったばかりで次に来るのがいつになるかはわからんのう。役に立てず申し訳ないところじゃが。」
「武器商人が来ていたなら、ある程度の物はあるんじゃないですか? ある意味ちょうどよかったかもしれませんよ。」
「おお、確かにそうじゃな。気が済むまで探して行くがいい。」
「ありがとうございます。あまりのんびりもできませんけどね。」
それにしても、ドラゴン退治をするとなるとやはりチビのことも退治しなければならないのだろうか。あたしはそっちの方が気がかりだった。
「ところで、町長さんからは特にあたしたちに用はないんでしょうか?」
嫌味を言うために話しかけてきたわけでもあるまい。
「いやー、それがじゃな。大した魔物ではないんじゃが、夜になると大量に町に来るんじゃよ。松明を焚いておく程度でなんとかなるような些細な問題ではあるのじゃが、根本的な解決にはなっとらん。原因を探って、できることなら討伐してほしいんじゃが……2万ギルダーでどうじゃ?」
余計な依頼を請ける余裕はないと言えばないのだが、かといって断ったところでドラゴン退治がうまくいく保証もない。あたしたちはドラゴン退治に備えた修行も兼ねて依頼を請けることにした。




