対峙
あたしたちがドラゴンの棲む洞窟に気付いた頃、背後から大きな生き物が近付いてくるような風が吹き始めた。――ドラゴンだ。巣を荒らされると思われていては大変だ。拓けたところで戦わないと、ただでさえ勝てるかどうかもわからないのに勝算が薄くなる。
「ルミ、小さいファイアーボールかなんかでドラゴンの気を引いて!」
「りょーかい!」
と、ルミがファイアーボールを唱えるまでもなくドラゴンがこちらに向かってくる。チビを連れてきたのがよくなかったのだろうか。本当にあのドラゴンがチビの親だとしたら、あたしたちにはかなり不利な材料かもしれない。
向かってきたドラゴンに向かって、まずはあたしが斬りかかる。……硬い。とてもじゃないが、こんな剣ではどうにもならない。ルミに強度を強化する呪文をかけてもらっておいてこれだ。あたしの叶う相手じゃない。
ルミとハツネはありったけの攻撃呪文を立て続けに放っているが、こちらも効果が薄そうだ。
全滅。
その文字が脳裏にちらつき始めた頃、突然ドラゴンはチビを掴んで洞窟の方に帰ってしまった。――助かった、のか?
あたしたちは為す術もなく、一旦港街へと引き返すことにした。




