旅立ちの準備
世界はまた魔王の手によって徐々に不穏な空気になりつつある。前回の封印は、あたしたちの母さんが必死で習得した、それでも二十年に一度復活する程度にしか封印できない呪文だったらしい。あたしたちの母さんは、再び封印に行くには若くなかった。彼女にはたびたび再び封印に旅立ってくれという依頼があった。とはいえ、もはや新たな勇者を求めながら過ごすことしかできなかった。
家に帰ったあたしたちは母さんに職業を報告した。
「お母さん……あたしたち、これからどうしよう?」
「どうもこうもないわねぇ、やっぱり勇者さまが現れるのを待つしかないのかしら……。」
諦め顔の母さん。
気の強いルミが叫ぶ。
「やだ、あたしたちが魔王を封印……封印なんかじゃ生ぬるいっ! 討伐するっ!」
あたしも乗っかる。
「お母さんにできたんだもん、あたしたちにも何か遺伝とかあるかもしれないし!
あたしたちの職業はそりゃあ取り替えたいくらい不満だけど、あたしたち、お父さんやお母さんが何を言っても旅に出る!」
ま、あたしたちは双子だということを利用してお互いの職業を入れ替えることで戦う気だったんだけど。
母さんとしても、かつては危ない旅に出て魔王を封印した身であることから、あたしたちのその話を邪魔することはできなかった。あたしたちが、お母さんだって行ったじゃないの、と言うのが目に見えていたし、もしかしたら我が子ならという期待も少しあったんじゃないかな?
翌日、あたしたちは役所から支給された装備を入れ替えて装備し、旅の準備を始めた。
「あなたたち、ほんとにそれでいいの……?」
両親とも、ただあたしたちの無事を祈ることしかできない。
大事な娘が職業を入れ替えてまで旅立つなど、親としては許せない部類だろう。それでも、魔王の討伐なんてどうでもいい、ただ日常生活を送りたい、そう言いたいのを両親とも堪えられたのは、自分たちが二十数年前に魔王を封印したことがあるから……。




