西の洞窟
あたしたちが町を出てから1時間ほど歩いただろうか、洞窟の入り口が見えてきた。
確かに、何かがありそうな怪しい雰囲気ではある。とはいえ、ドラゴンはもういないはずだから危険はないだろう……いや、あるかもしれない。こんなところで油断して死んだりしたら、死体拾いにすら見付けてもらえないかもしれない。
ルミが全員に防御呪文をかけて、灯りをともして中に入っていく。
『ぴぃぃぃぃ! ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』
何かいる!
けど、今まで聞いたことのない声……まさか、ドラゴン!?
あたしたちは少し早足で洞窟の奥へと向かった。
そこには、直径50cmぐらいの卵の殻と、ドラゴン。……の、子ども。
『ぴぃぃぃぃ!』
えっと……倒す?
子どもとはいえドラゴンだ。放っておくわけにもいくまい。
「ルミ、攻撃補助!」
伝説の剣とやらに補助呪文をかけてもらい、とりあえず斬る!
……と、伝説の剣とやらは、粉々に砕けた。何が伝説だったんだろうか。
「アキちゃん、その子飼ってみない?
親もいないみたいだし、意外となつくかもしれないよ?」
ハツネが言う。
うーん、確かに、可愛いんだこれが。刷り込み効果なのか、あたしたちに敵意はなさそうだし。いきなり斬りかかったあたしが悪人みたいじゃないの……。
「よーし、あんたの名前はチビよ!」
こうして、3人と1匹の冒険が始まることになった。