見解の相違
ワーウルフの「巣」へ向かう途中、2頭のワーウルフが草むらから飛び出してきた。
戦闘開始……かと思ったが、珍しくハツネがあたしとルミを制止した。
「あなたたち、人間の言葉はわかる?」
ハツネがワーウルフに問い掛ける。
そういえばさっきは派手にやっちゃったけど、よく考えたらこいつら結構頭いいんだっけ……人権はないとしても。
言葉こそ話さないが、こくこくと頷くワーウルフ2頭。
んー、よく見たら可愛いかも? ペットにいいな。番犬より賢いぞ。
ハツネが続ける。
「じゃあ、よく聞いて。
この2人に殺されたくなければ逃げて。
片方は、さっき人様の家を燃やして中の人ごと燃やしたのよ。」
ルミが叫ぶ。
「待って!
自分はカウントしないのかぁー!?
っていうか、中の人は燃やしてないっ! 家だけっ!」
少しきょとんとした様子のワーウルフは、出会い頭に詠唱を始めていたルミの掌の火球を見て、ぶるぶると震え、逃げていった……。
ハツネに質問してみる。
「ねぇ、ハツネちゃん、ずっとこの調子で逃がすつもりなの?」
間髪入れず返事が来る。
「そうよ。
だって、ワーウルフが街を襲って何のメリットがあるの?
誰か――誰かか、何かかはわからないけれど、操られているかなんか、なんじゃない?
それを探るのがあたしたちの仕事だと思ってたんだけど、違うの?」
ルミは言う。
「えっ。巣ごと爆破でもしようかと思ってたんだけど、違うの?」
……どっちもおかしい気はするけど、ハツネの言い分の方が、なんとなく正しい気がしなくもない……。
結局、完全に空き家になった「巣」に、あたしたちは辿り着いた。
はてさて、どーしたもんか。
と、不意に何かが視界の隅に入る。
人影……にしちゃ、大きすぎるっ!