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呪魔祓い—Believe in your honesty—  作者: 弱酸
01. 新緑の青き見習い
7/19

美しき別れ或いは過去逃避(4)

    4


 キララはようやくにして朝食を食べ終えると、もう一度洗面台に行って食後の歯磨きをした。それをすませると、キララは歯ブラシを綺麗に拭き取り、歯磨き粉と一緒に巾着の中にしまった。

 キララはそれを持ったまま自室に戻ると、パジャマから外着に着替え始めた。


 普段であれば服選びは難航を極めるのだが、昨日あらかじめ、キララは今日のための服を選んでいた。

 それを提案したのは、本日が二度目の娘の旅立ちとなる母からの提案であった。姉の時は随分と時間がかかり、蒸気船が出発してしまわないかと慌てていた。


 白のニットの上から落ち着いたグリーンのジャンパースカート

 白のソックスにダークブラウンの靴

 白のベレー帽

 

 

 立ち鏡の前に立つキララ

 目の前には、この日のためにと張り切って選んだことが見て取れるキララとそっくりな少女が立っている。

 体を右に捻り、左に捻り、立ち鏡に背を向けて、その出来栄えをもう一度確認した。

 そして最後にニット帽の位置を微調整。

「よしっ」

キララはそう呟くと、部屋の壁にかけてある時計を見た。

 

 六時二十五分

 

 おおよそ予定通りに事の進んだと言う事実に満足した様子のキララは、昨日準備しておいた大きな鞄に歯磨きセットを入れ、鞄と一緒に部屋を出た。キララは扉の前に立った時、ふと部屋を眺めた。するとキララはこの部屋で過ごした様々な記憶が巡ってきた。



回想


お姉ちゃんと二人部屋だったあのとき、ずっと私たち姉妹は仲良しだった。この部屋で一緒に遊んで、一緒に勉強をして、一緒に服を選んで、一緒に寝ていた。そして時にはケンカもしていた。

 お姉ちゃんが――今日の私のように――旅立ったあの日から、この部屋には何処か言葉にならない寂しさが漂っている。

 そして、私がこの部屋のドアを閉じた時、姉妹の部屋は時を止め、永い永い眠りにつく。

 いつかは私かお姉ちゃんが帰ってくるかもしれないけれど、でもそれがいつになるかわからない。

 でも私は行かなくちゃならない。

 お姉ちゃんと約束したんだ。自分の足で人生を歩むんだって。


——回想終わり



「ありがとう。じゃあ行くね……」

キララは語りかけるように、これまでの人生を共にした部屋に挨拶をした。

そして、ドアノブを手に取り、ゆっくりとドアを閉めるのだった。


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