エリアボスのリポップ待ちには生贄が必要であった
『そんな魔物で大丈夫か』
『なんの話じゃ?』
『ここらで一番強い魔物と戦いたい。こっちの世界で自分がどの程度なのか不明だ』
『危険度10:コカトリス。お主が以前倒したのは、この付近では最強の類じゃった』
『一番強いのを頼む』
『この付近だと他にはワイバーン、ヒュドラあたりだな』
『空飛ぶワイバーンは忍者のように汚い。つまりヒュドラだな』
『危険度13じゃぞ?体調15メートルのドラゴンと同等のランクだな』
『俺の危険度は(自称)15だ。俺のログに問題はない』
『西の沼地の主じゃ。討伐するなら報奨金もでるが』
『倒しきるには火力が足りない、俺は盾たるナイトだからな。調子こいてるヒュドラと拳で語り合ってくる』
『そうか、気をつけての』
◇◇◇
・ゴブリン 2
・普通の冒険者 5
・オーガ 6
・レッサードラゴン 13
ギルドでは魔物の危険度を数字を表している。これ以上の魔物となるとロック鳥やクラーケンなど、強い上に戦う場所に苦労する魔物ばかりである。伝承や神話に出てくる類のものを抜かせば危険度15で頭打ちだ。
神話の連中は頭がおかしい、「絶対頭を破壊して戻ってくるハンマー」「絶対心臓破壊する槍」「絶対攻撃を防ぐ盾」など、「絶対」だらけである。「ビーム!!絶対破壊光線!!相手は死ぬ」「カッキーン、絶対バリア。ビームは跳ね返りお前が死ぬ」とやってる小学生と同じレベルに見える。
◇◇◇
そんな訳で沼地にいるのだが。ヒドラはネッシーみたいなものなのか?それらしいデカい蛇は見当たらない。エサで釣るか。
本日の生贄!!乳がでなくなったヤギでございます。
ヤギは周辺の草を食い尽くす害獣に近い。それが飼育されているのは乳が採れるからであり、乳がでなくなったヤギは肉になる。すまんな、君に明日はない。
近くの木とヤギを紐で結びつけ、ヒドラが現れるのを待つ。エリアボスを「リポップ待ち」するのは当然だな、きっとリアルではこのようにしていたのだろう。風下の木に登り待ち構える。
・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・。
『悪いな、そいつは俺の夕食なんだ』
ヒドラが出てきてヤギを襲う前に、腹パンを決める。目に見える外傷は残さずに苦痛を与える自慢の腹パンだ。食らった奴は胃の中身だけでなく財布の中身も吐き出す事になる。
久々のご馳走を目の前に突然殴りかかられたヒドラはどんな気持ちなのだろう。激おこカーニバルだろうか。ヒドラが敵意をプロントに向ける。対してプロントは嬉々としている。
(中略)
久々に長時間の戦闘をし気力が高まった。<血で血を洗うポイント>略して<TP>が貯まったのはこちらの世界にきて初めてである。この<TP>は文字通り両者が血を流すことで貯まっていき、<暴食の剣>は<TP>を消費する事で「絶対頭を破壊する」類の子供のごっこ遊びのようなワザが使える。流石、神話の武器である。
自分の剣の能力がこの世界でも使える事を確認し、プロントは上機嫌である。
『初めてのエキサイティング』
『ヒュドラは満足じゃったか』
『こんなに高ぶったのは久々だ。気分が良いから土産がある』
『ヒュドラの首だな。貴重品じゃ』
『そちらで処理してくれ。儲けの半分を戻せば良い』
プロントがヒドラを倒せない理由は再生能力にある。多頭のヒドラは首1つを落としてもすぐに首が再生する。ん?首からとれる鱗が貴重品ならヒドラの首を再生する度に切りまくれば億万長者になれるのでは?ヒドラ牧場誕生!?
『おら、ヒドラ。早く再生しろよ』
『もう無理です、魔力がありません』
『あァ、嘘ついてんじゃねーぞ、ジャンプしろ』
『チャリーン』
『まだ魔力残ってんじゃねーか、おら早くだせ』
『う、うう・・・』
可哀想なヒドラ。こんな忍者野郎に搾取されないようにヒドラは見つけしだい息の根を止めるのがヒドラの為なのか。今度見かけたら、首でなく腹を切断し勝負をつけようと思うプロントであった。