りょう
あれから、準備を整えて寮に着いたのは、入学式の前日だった。
学園は全寮制となっていて、それぞれに一人部屋があたえられる。
更紗は自室の姿見の前で、制服を着た自分の姿を見ていた。
長い銀の髪は、紫の紐で首の後ろに束ね、女子用の白地に銀の縁取りがされた詰襟の制服は膝たけ。
腰のすこし下辺りからまえ開きになっているため動きの邪魔にはならない。
同じく白地のピッタリとしたズボンに、膝下までの焦げ茶のブーツが足を包む。
左胸のポケットには、紫の糸で風の紋章が刺繍されている。
そして、なによりも特徴的なのは、分厚いメガネを掛けていることだった。
なにしろ、レンズの厚さのために、瞳の色がまったく判らなくなっているくらいだ。
「はあ。
仕方がないとはいえ、このメガネだけはなんとかしたかった……」
このメガネは特殊な魔道具となっているため、他の物で代用しることが出来なかったのだ。
改めて姿見に映る自分を見つめながら、そっとささやいた。
「これから、すべてが始まる。
世界が滅びるか、それとも無事に乗り越えられるかは、私達次第。
ならば必ず幸せな未来を掴んでみせる……‼」
更紗は自分の決意を口にすると、窓越しに青い空を見上げた。