ちからのいみ
姫華が剣を振るう様子を、すこし離れた場所から見守っていた更紗は、思考に耽る琥珀の元に歩み寄った。
「答えは見つかりましたか?」
「!」
更紗に気づいていなかった琥珀は、驚いて目を見開いた。
「なぜ、ここにいるのですか?」
不機嫌な様子で問いつめてくる琥珀に、更紗は微笑みかける。
「私が寮以外で姫華を一人にすることはありません。
姫華の護衛も役目のひとつですから」
「……貴女は、貴女はどこまでわかっているんですか?」
琥珀の問いに、更紗は逆に問いかける。
「そのときまでに、姫華が強くなること、姫華を護ること、それが今の私の役割。
あなたは、ご自分の役割は理解されているのでしょうか?
それとも、ご自身の願いを叶えることを選ぶのでしょうか?」
「貴女は、何を選んだ?」
「大切な人達を護ること。
そのための力を得ること。
そして、大切な人達がいるこの世界を護るために、力を振るうこと。
ですから、今の私の役割は私自身の願いを叶えるためにも成し遂げなくてはならないのです」
「……貴女は自分の願いと役割が一致しているのか……」
琥珀は更紗を見つめた。
更紗は微笑みながらメガネを外した。
「⁉」
「私をこえる力を得ることは、誰にも出来ないことでしょう。
ですが、並んで共に戦える力を得ることならば、あなたにも可能でしょう。
それとも、諦めてしまいますか」
決断を促す言葉に、琥珀はため息をつく。
「俺は誰よりも、強くなることだけを望んできた。
強くなることの意味を考えたこともなかった。
……だから今は、少なくとも滅びが回避されるまでは、強くなることだけを目指す。
貴女や姫華と並べるように。
力の意味や使い方は、それから考える」
「そうですね。
今の私達はただの学生、ですから。
卒業までに答えを見つければ良いと思いますよ」
琥珀は無言でうなずくと、踵を返した。
「すこし姫華に付き合ってくる」
「はい」
立ち去る琥珀を見送ると、近くの木の上を見上げた。
「琥珀さんは、大丈夫そうですね」
「あとは、彼次第ですね。
しばらくは見守るべきでしょうが」
「はい」
そして二人は、姫華と琥珀を見守り続けた。




