なかにわ
ヒロイン攻略対象と出会う そのよん
姫華が自分の教室に行くには、中庭を突っ切るのがはやい。
そこで、校舎の間にある中庭に足を踏み入れた。
色とりどりの様々な花が植えられた花壇の前に、大柄な男子生徒がしゃがみこんでいた。
「あの、大丈夫ですか?」
「……」
体調をくずして座りこんでいるのかと、姫華が声をかけると、その生徒は無言のままこちらに顔を向けた。
濃い緑の髪、それよりは明るい緑の瞳、胸元には地の紋章。
「あの……」
「花を」
「ああ、花を見ていたんですね。
ここの花達ってとってもキレイ」
「……」
無言でうなずく少年。
「あ、わたし1-Hの春日姫華といいます。
あなたは?」
「緑神翡翠。1-T」
「あ、同じ年なんだ。
おっきいから、年上かとおもってたー」
「……」
「お前、もうちょいしゃべれよ」
不意に後ろから声が響いた。
びっくりしてふりむくと、紫紺の髪に紫の瞳、風の紋章を持つチャラチャラした感じの少年が立っていた。
「ふーん。君が姫華ちゃんかー。
聞いてたのよりずーっとかわいいねー」
「キミは?」
「おれ?おれは紫神紫水。
紫神の分家の人間だよー。
そんなことよりさ、入学式なんかサボってどっか遊びに行かない?」
「えっ⁉」
二重の意味で姫華は驚きの声をあげた。
翡翠も無言のまま、わずかに眉をあげる。
紫水の背後に人影が現れたからだ。
すぱーん‼
その人影が右手を降り下ろすと、ハリセンが紫水の頭を直撃した。
精神的ショックを除けば痛みはあまりなかった様だが、自分をどついたあいてを見て、紫水はゲッっと声をあげた。
「こんなところでナンパ、ですか?」
「姫さん⁉
なんでここに⁉」
「紫水、あなたと翡翠さんもまた、生徒会室に行ってないのでしょう?
私はお二人を探してほしいと頼まれたのです。
紫水、入学式をさぼることは許しません。
きちんと参加してください。
それと」
小柄な少女が姫華の方を向いた。
背丈は姫華よりもかなりひくい。
癖のない綺麗な腰までの銀の髪を首筋で束ね、紫水と同じ風の紋章をもっている。
残念ながら、顔の半分を隠すような分厚いメガネを掛けていた……。
「春日姫華さん、ですね。
いとこが失礼なことを申しましたことを、お詫びいたします」
きれいな所作で少女は頭をさげた。
「私は紫神更紗、あなたと同じクラスになります。
これからどうぞよろしくお願いいたします」
「やっぱりあなたもわたしのこと、知ってるんだ」
「もちろん知っております。
私は風の力のでの人探しができるため、必要な時に生徒を見つけることができるように、と学園の生徒全員の顔、名前、魔力の波長などを覚えておりますから」
「えっ⁉学園の生徒全員⁉」
「はい」
「あー姫さんはいろいろととんでもないから。
あまり気にしないほーがいいぞー」
「自覚はあります」
「あるんだ……」
「あなたが風の姫君、でしたか。
お初にお目にかかります。
緑神が分家、翡翠と申します。
今後ともよろしくお願いいたします」
翡翠は畏まって更紗に頭を下げる。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
ですがあまり私に畏まる必要はございません。
今の私は、あなた方と同じ学園の生徒、なのですから。
それと、私はすでに生徒会での用事は済ませております。
教室に向かいますので、お二人は生徒会室までお急ぎください」
「はい」
「はーい」
二人の返事にうなずくと、更紗は姫華の方をむいた。
「それでは、教室に向かいましょう」
「あ、うん」
二人は生徒会室まで向かう翡翠と紫水に見送られながら、教室に向かった。
「ねえ、紫神さんってえらい人なの?」
「紫神当主の嫡子ですから身分はあります。
でも、私自身がえらいというわけではございません。
それに紫神、では少々紫水とも紛らわしいですし、名前でお呼びいただいて構いませんよ」
微笑みかけられて姫華はすこしあたふたする。
「え、いいの?
じゃ、サラちゃんって読んでもいい?」
「はい、どうぞ」
「やった。
よろしくね、サラちゃん」
「こちらこそよろしくお願いいたします、姫華さん」
「えー。どうせなら呼び捨てがいい!」
「では、姫華で」
「うん!」
二人は仲良く笑いあった。




