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あたしの日常
あたし、桃野彩には両親がいない。
幼い日に、交通事故で亡くなってしまったのだ。
そしてあたしは、父の兄である浩介おじさんに引き取られることになった。
お父さんの実家は、小さな喫茶店をやっていて。
50代になったおじさんは、男手ひとつであたしを育てながら1人、喫茶店を切り盛りしていた。
大学受験を半年後に控えた夏休み。
受験勉強をしつつ、あたしは毎日お店の手伝いをしていた。
おじさんは勉強に集中しろって言ってくれたけど……、来年には家を出ちゃうし。
少しでも役に立ちたいんだよね!
アンティーク調の薄暗い店内は、コーヒーの香りと静かなクラシックが流れていて。
いつも常連さんで少ない席は埋まっていた。
高校生最後の夏休み。
おじさんのお店を手伝って。
夜は勉強して、休みの日は友達と遊んで。
平凡だけど、それでも。
あたしの毎日は充実していたんだ。
そう、あの日。
彼に出会うまでは……。