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ラジオドラマ 「そしてミドリ」

作者: 倉橋里実

               


【 そしてミドリ 】  

                     作・倉橋 里実



キャスト    タカシ   新社会人の青年

        ミドリ   タカシの部屋のサボテン

        ツカモト  タカシの会社の同僚の女性



   ♪M1


ミドリM 「こんにちは。ミドリです。今が盛りの、ぴっちぴちの・・・

      サボテンです。この春、社会人となって一人暮らしを始めたタカシくんの部屋で同居人やってます。はじめは弱気で引っ込み思案だった彼も、入社して半年・・・ なんとかしっかり仕事をしているようです。そんなある日・・・」



タカシ  「♪ほんの~小さなぁ 出来事にぃ~」

ミドリ  「なーに?朝から浮かれちゃって。なんかいいことでもあったの?」

タカシ  「ななミドリ。俺、今日上機嫌だろ? なにがあったと思う?」

ミドリ  「なによもったいぶって」

タカシ  「ふふふ、聞いて驚け。なんと今度の日曜日・・・デートなのだぁ!」

ミドリ  「・・・驚いた」

タカシ  「今年、一緒に入社した事務の子で、ツカモトさんっていうんだけ

      ど。昨日思い切って誘ってみたらOKだって! てへへ」

ミドリ  「(動揺)そ、そう・・・」

タカシ  「あまりの驚きに言葉がでないか?」

ミドリ  「いやいや」

タカシ  「あー、もしかしてジェラシー?」

ミドリ  「な、なに言ってるのよ! それよりちゃんとデートの計画立てな

さいよね。映画とか、雰囲気のいいレストラン探すとか」

タカシ  「彼女、家近所らしいから、近くの美味しい定食屋さんでも一緒に

      行こうかなぁって」

ミドリ  「はぁ?? ・・・(ため息)ふふ。ま、君らしいか」

タカシ  「ミドリにも紹介するからね。地味で無口な感じなんだけど、

すごくいい子なんだ。んじゃ行ってきまーす! 

♪ほんの~小さなぁ~」


   SE:ドアが閉まる音


ミドリ  「いってらっしゃい! てかタカシくん、その歌失恋の歌だぞー

      って聞こえてないか。・・・別に紹介なんていいのにさ」


   ♪M2


ミドリM 「どんな女性なのかちょっとは気になる。ちょっとだけね。大丈夫

      かなぁ・・・ うん、ま、大丈夫だ。彼が選んだ人なんだ。けど

      なぁ・・・ そんな期待と不安を抱えたまま、運命の日曜日が

      やってきた」



ミドリ  「もう陽が暮れてきたわね。タカシ君、うまくやってるかしら」


   SE:ドアの開く音


タカシ  「どどどうぞ。せ、狭いとこだけどははは入って」

ツカモト 「(消え入りそうな声で)おじゃ・・し・ま・・」

ミドリ  「えー!! いきなり部屋まで連れてきちゃったの?!! 意外に

      大胆だな君」

タカシ  「座って! あ、これ座布団(SE:ガタン!)いったー!」

ミドリ  「ちょっとガチガチじゃない。落ち着いて。 ・・・ほほう、これ

が噂のツカモトさんか。なるほど。、確かに地味で大人しい感じ

ね」

タカシ  「えっとあの・・・」

ツカモト 「・・・・・」

タカシ  「美味しかったね! 鯖の味噌煮定食!」

ツカモト 「・・・はい」

タカシ  「えーっと、あの・・・」


   SE:時計の針「ちっちっち・・」


ミドリ  「もう! じれったいわね! しっかりしなさいよ」

タカシ  「ツカモトさん、今日・・・ 楽しくなかった?」

ツカモト 「え?」

タカシ  「ほとんど喋らなかったから。ま、でも会社でもほとんど喋んない

      けど。その・・・」

ツカモト 「えっと」

タカシ  「俺、女の子をデートに誘うなんて初めてで・・・その、洒落た

      デートコースとかわかんないっていうか苦手っていうか。ただ

      ツカモトさんとゆっくりご飯でも食べながら色々話をしたかった

      んだ」

ミドリ  「あ、そっか。この子って」

タカシ  「会社でもほとんど会話したことなかったのに、いきなり誘ってびっくりしたでしょ。でもOKしてくれて嬉しかったんだ。ホント。ツカモトさんて地味で目立たないけど・・・あ、ゴメン、悪い意

味じゃなくて、その、いつも真面目に仕事してるし。で、お昼休みにさ、誰に言われるでもなく毎日きちんと植え込みのお花にお水あげてるでしょ。それ見て、その、『ああ、こういう人っていい

なぁ』って思ったっていうか、その、俺も植物好きだからその・・あ! 俺も同居人でサボテンがいてさ! ほらあの窓際の。ミドリって名前なんだけどかわいいでしょ? あ、サボテンに名前付けてるなんて変かぁ、はは。その、なに言ってんだろ。つまりもう、俺と一緒にいてもつまらないんだったら」

ミドリ  「落ち着いてタカシ君。大丈夫だよ、その子はね・・・」

ツカモト 「あのぉ!!!!!」

タカシ  「は・・・はい」

ツカモト 「全然喋んねぐですまんけろ! んだど決すてオメのこど嫌だった

んだねぇ」

タカシ  「ツカモト、さん?」

ツカモト 「わだず、田舎から出てきてずっとこの方言しか喋れんで・・・ 

      ずっと恥ずかしくて喋れんだったんだで。すまんこってす。だども、わだずもオメとたっぷり話したかったんだ。だで今日誘ってもらえてどっぐりけるぐれ嬉しかった。だど、こんな喋りのわだ

すなんてしょしじゃと思うて」

ミドリ  「こんな方言しか喋れない自分を恥ずかしく思ってたんだって」

タカシ  「え? ミドリ?」

ツカモト 「わだすもオメのこと、いんつもわだすに明るぐ声掛けてくれて、一所懸命仕事するいいヤロだと気になってただ。そんの・・・」

ミドリ  「彼女も君のことを」

ツカモト 「わだすこそ! こんな喋りのオナゴだども、そんの」

ミドリ  「ほらタカシ君」

タカシ  「よかったー!!!」

ツカモト 「え?」

タカシ  「ツカモトさんも、その・・・はは、嬉しいなぁ。こんな俺なんか」

ツカモト 「だど、こんの方言」

タカシ  「方言ってすっごく暖かい響きだね。聞いててほっこりする。

      ツカモトさんの暖かい人柄が伝わってくるよ。うん」

ミドリ  「そう。タカシ君、君はそういう男だ」

ツカモト 「オメさ」


   SE:お腹のなる音「ぐ~きゅるきゅる」


タカシ  「あ・・・」

ミドリ  「ばか」

ツカモト 「お腹、空いただか?」

タカシ  「あはは、ゴメン」

ツカモト 「よがったら、その、実家からおぐってもらったきりたんぽば持っ

      てきてるんだが。その、きりたんぽ鍋でもつぐってみよがなと」

タカシ  「きりたんぽ鍋! すごーい!作ってくれるの?! ・・・あ」

ミドリ  「冷蔵庫は空っぽね」

タカシ  「ツカモトさん」

ツカモト 「はい?」

タカシ  「買い物、一緒にいきませんか?」

ツカモト 「・・・はい」


   ♪M3


ミドリM 「こうして、ちょっと不器用で、でもまっすぐで純粋な同居人・

タカシ君に、同じような不器用な、でも素敵な恋人ができた。

よかったね。心から祝福してあげるよ。でも」


タカシ  「(缶ビールを開け)かんぱーい! ミドリ!!」

ツカモト 「乾杯! ミドリさん。はじめますて。よろすくお願いすます」



ミドリM 「ちょっと寂しくなるかな・・・ なんて言わないんだからね!」



   M盛り上がって








                           END


                          第二稿・2009/9/3


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