世は情け
村長の息子であり母をなくしたアルス君は神様からゴーレムメイカーというスキルと日本からきたというある意味魔法使いな精神体を得て村を旅立つ、そして街へ向けて歩いていたところであるものと遭遇する、そのあるものとは!!
続きどうぞ。
「すいません乗せていただいて」
「いやいや、旅は道連れですからな」
アルスは荷馬車の後ろで揺られていた。
道の真ん中で立ち止まっていたところに、ピピン村方面から来た荷馬車が通りかかったのである。
セージがイケイケとアルスの背中を押しダメ元で見ず知らずの行商のおじさんに頼んだところ、快く乗せてくれたのだ。
(やっぱ商人イベントは必須だなアルス!)
セージが何か言っているがアルスにはよく分からない。
荷馬車は馬一頭で引っ張っており、後ろは布で覆われていて雨風も凌げるようになっている。
(やっぱり馬車といえばパトシリシアだな)
またセージがアルスに分からないことを言っている。
ただ、セージの相手だけでも大変なのに更にアルスの頭を悩ませる存在が隣にいた。
「それでよぉ、俺がそのとき颯爽と現れて助けてやったわけよ!アルス聞いてっか?」
この妙になれなれしい彼の名前はロンといい、ピピン村から荷馬車に乗っている謂わば先客である。
どうやら彼も冒険者になるためにラバンの街を目指しているそうだ。
ロンはアルスと会った瞬間からマシンガントークである、道のり的にあと2〜3時間拷問は続くだろう。
ロンは19歳で木こりをしていたが一攫千金を夢見てラバンの街へ行くらしい。
ラバンの街には冒険者ギルドがあるのだ。
冒険者ギルドとは報酬を貰うことで依頼をこなす者達の集まった組合のことである。
仕事内容も街の雑務から護衛・盗賊や魔物退治などと多岐にわたり内容によっては一攫千金も夢ではない職業として人気である。
ただし職業別の死亡率が断然高い。
無論アルスも冒険者ギルドで仕事を請け負うつもりだ、ただこの件に関しては物凄い勢いでセージが指図してくる。
やれまずは討伐クエストは避けろだの薬草採取にしておけだのだ。
恐らくセージもアルスが死ぬのは避けたいのだろう、アルスの生死に関わる問題には真剣になる。
ロンのマシンガントークはまだ続いている、アルスも聞き流しているがこれに耐えかねて行商のおっちゃんは見ず知らずのアルスを乗せたのではないかとすら思えてくる。
セージはアストロン、アストロン、とよく分からない単語を呟いている。
そんなこんなで荷馬車に揺られながら進んでいると街に近付いてきたからだろうか道も村道より広くなりだした。
「すいませーん、街まであとどれくらいでしょうかー?」
荷馬車の後ろから御者のおじさんに大きめの声で聞く。
「あと一時間ほどかのぉ〜」
顔は見えないが声だけ帰ってくる。
時間を聞きアルスがロンに気付かれないように寝ようとしているときだった。
荷馬車が急停車する。
「「うぉ!?」」
衝撃でアルスとロンがひっくり返る。
「まっ、魔物だぁぁぁ!?」
おじさんの声にすぐさま荷馬車を降り前方へと回り込む。
「おじさん大丈夫ですか!!」
「あ、あぁ……」
見るとおじさんは怪我はしていないようだが馬車を引っ張っていた馬が胴に矢を受けていた。
荷馬車の馬は一頭だけであり馬の傷を見るに助かりそうにはない。
街道の左右の林から不気味な鳴き声が聴こえてくる。
「あ、アルスどうするよアルスっ!?」
遅れて駆け寄ってきたロンが青ざめた顔でオロオロしている。
そのときアルス達が来ていた街道脇からゾロゾロと何かが這い出してきた。
(げ、ゴブリンかよ)
焼けただれた醜い顔に大きな鼻、手にはそれぞれボロボロの短剣や槍を持っている。
その数50体。
見える範囲でこの数である、林の中の数も合わせると倍になるかもしれない。
ゴブリン達が半円状に広がりニジリ寄ってくる。
(おいおい、分かってるよなアルス!)
「あぁ、分かってるさ……」
「なっ、何が分かってるっていうんだよっっ!?」
アルスの言葉にロンが震えながら問い返す。
「逃げるぞ、ゴーレム作成!!」
荷馬車とゴブリンの間の地面に穴が開き前方に2mのアースゴーレムが出現する。
「ゴーレム、ゴブリン達を蹴散らせ!」
「フンガー!!」
突如現れたゴーレムに驚いているゴブリン達に向かって振り上げられたゴーレムの鉄拳が落とされる。
━━━━━━グシャッ━━━━━━━
回避の遅れた二匹のゴブリンがミンチになる。
拳にくっついたゴブリンの肉も気にせずゴーレムはゴブリンを殺すためだけに腕を振り回す。
「すげぇ、すげぇよアルス!あれなら勝てるぞ!?」
「いや……勝てない」
「なに言ってんだよあれなら…」
━━━━━━ヒュン━━━━━━━━
ロンの頬を矢がかすめる。
「敵の数が多すぎる、ゴーレムが倒しきりる前に私達が先に死ぬ……」
「じゃ、じゃぁどうしろっていうんだよ?戦っても死ぬし逃げようにも村まであと一時間、馬もないし走れる距離でもねぇんだぜ!?」
「方法は……ある」
「本当ですか?」
行商のおじさんもすがるような目でアルスを見つめる。
「兎に角荷馬車に乗ってしがみついていてくれ」
「本当にそれで助かるのか!?」
「あぁ、私を信じて」
一瞬迷った二人だったがすぐさま荷馬車へと乗り込む。
その姿を見届けてアルスも動き出す。
「ゴーレム×2作成!!」
極度の疲労感がアルスを襲う。
アルスが耐える。
ゴーレムに指示をし荷馬車の前と後ろに付かせる。
そして自身も荷馬車に乗り込むと近くのものにしがみつく。
「ゴーレムGo Go !!」
命令を受けた2体のゴーレムは各自荷馬車の前後を持つとそのまま上へと掲げ走り出す。
いくらスピードの遅いゴーレムでも身長2mである小走り程でもそこそこスピードは出る。
ゴブリン達は目の前で暴れるゴーレムを放ってもおけず戦力は分散させるしかない。
ゴブリン達も荷馬車を追ってはいるもののゴーレムの装甲を破れるような決定打はなく、また腕を上げたゴーレムのおかげで荷馬車は地面から約3m近く高い位置にある。
幸いにもゴブリンでは矢を放っても攻撃は厳しい高さである。
ただし馬車内は地獄であった。
(ワッショイワッショイ)
「うぁぁぁ降ろしてくれぇぇぇ」
近くのものに捕まっていなかったロンが荷馬車の中で転げ回り、セージが愉しげに歌う。
「ひぇぇぇぇぇ」
「皆さん絶対に手を離さないでくださぁぁぁぁい」
(ワッショイワッショイ♪)
ゴーレムが反動も考えなしに直に荷馬車を持って走っているのである。
荷馬車を凄まじい縦揺れが襲う。
(ワッショイワッショイ御輿だワッショイ♪)
無事ラバンの街に着くまで荷馬車からは悲鳴だけが響いていた。
ゴーレム強いぞーカッコイイゾー、ただし操ってるアルス君はゴブリンとトントンです。
ロン君はアルスよりは強いですがゴブリン2~3体くらいです。
戦いは数だよ、ということでしょう。
ゴーレム作成限界数に関しては現在ギリ3体です。
それについては次に書きます。
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