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旅立ち

お待たせしました、お気に入り登録してくださっている4名の方ありがとうございます。


二日目くらいにお気に入り5名から4名に減ってちょっとショックを受けていたなんてことはありません、全然ありません。



「おーいアルスー」



アルスが振り返ると兄であるマークが小走りで近寄ってくる。



「こんな所にいたのか、勝手にいなくなったら心配するだろ」


マークがアルスの頭に手をおきワシワシと撫でながら話しかける。



「もう兄さんやめてください、子供じゃないんですから」



アルスが兄の手を優しく払い除けるとマークがからからと笑う。



「ハハッ、おまえはいつだって俺の弟だ。弟の心配をするのは兄として当然だろ」


マークが懲りずにまたアルスの頭へと手を伸ばそうとする。



「もう、歳なんて2歳しか変わらないじゃないですかっ!」


母親譲りの茶色の髪に透き通るような白い肌、兄マークは痩せ型でほっそりしており父親から次期村長として育てられどちらかといえば学者タイプだが、弟アルスも茶色の髪は母親から受け継いだものの肌はうっすら日焼けしており体は細いが筋肉が引き締まったしなやかなアスリートタイプの体つきをしている。



身長からいっても順当に兄と弟の微笑ましいシーンのような光景だ。


ただ、溺愛し過ぎる具合はある。



マークがアルスに対して過保護になりだしたのは母親が亡くなってからだ。



兄として弟の母親代わりをしなければならないという気持ちと、もう家族を失いたくないといった感情から弟であるアルスに対して過保護になってしまったのだろう。


そのことをアルスも薄々気付いているが触れたりはしない。



幾度となく伸びてくる兄の手を振りほどきマークに用件を問う。



「あぁそうだった、親父が呼んでこいって」



「分かりました、兄さんも一緒にきます?」



「……いや、俺はあとから行くから先に行っててくれ」


マークの返答に頷くとアルスは家に向かって歩きだす。



ちらりと振り返るとマークが母の墓標に手をかけ何かを語りかけているようだった。


それを見たアルスは視線を戻すと歩を速めた。




アルスの住むレイブス村は人口100人程のいたって普通の農村である、特にこれといった名産品もなく村民も畑仕事が主であとは森での薬草採取や動物の狩猟などが仕事だ。


ただ、村の入り口には跳ね橋が掛けられており2m程の土壁と外側に水堀が村をぐるりと囲むように作られている。


一般的な村レベルでは魔物や外敵対策として精々木の柵で囲んで守りを固めているのだが、他の村に比べて守りが固い作りになっているのがこのレイブス村の特長といえよう。



村の中心には小さいながらも宿屋と雑貨屋があり旅人や商人などもたまに訪れる位の普通の村である。



アルスは村の中を歩き、時折すれ違う人達に挨拶しながら奥にある他より一回り大きな家へとたどり着く。




━━━━━━ガチャ━━━━━━━━




「ただいま父さん」



ドアノブを回し家に入ると奥の椅子に座っていた父、ホーキンスと目が合う。



「お帰りアルス、どこに行ってたんだい?」



「出発する前に母さんのところに色々報告に……」



アルスの返事を聞き近くに来るようホーキンスが手招きする。



「アルスは今日で18歳だな、お前も成人の日を迎えるわけだ。」


「はい、父さんの息子として恥ずかしくないよう生きていこうと思っています」


アルスの答えに頷くとホーキンスは椅子から立ち上がり近くの机へと近付く。


引き出しの中から袋を取り出すとテーブルの上に置く。


ジャリンと重さの伝わる音が響く。


「金だ、中に10万G入っている。それと防具に関してだが、いつもアルスが使っている皮の鎧でいいな」



「は、はい、問題ありません。……少しお金が多過ぎな気もしますが……」



「なに、息子の旅立ちなのだ、親としてこのくらいのことは構わん」



ホーキンスは村長という役職ではあるがそこまで収入が多いわけではない、なにか問題が起こるたびに先頭に立って物事にあたり、村のために私財を切り売りしていることも息子達は知っている。


「父さん……大事に使わせてもらいます」



「それとこれをおまえに渡しておく」


そういうとホーキンスは懐から一振りの短剣を取り出した。



「それわっ!!」


その短剣は柄から刃先にかけて複雑な模様が印されておりアルスにも見に覚えがあるものだった。


「そう、これはソフィアが使っていた短剣だ」



「か……母さんの……」



アルスが唇を噛む。



「母さんが元冒険者だったのは知っているな?ソフィアは長剣の使い手だったんだがな、あの時の戦いでどこかへ紛失してしまった。今ではこの短剣がソフィアの形見だ」



「母さんの形見……」



アルスにとって母親の存在というものは大きかった、それは亡くなって3年という月日が経っても変わらないものである。


否、亡くしてしまったからこそアルスの母親への想いは強くなったと言えた。



「この短剣はソフィアからの餞別だ、きっとおまえを守ってくれるだろう。あぁ、金はわしからの貸しだからな」



「……貸しですか?」



「あたりまえだ、10万Gだぞ。この村におまえの為だけに使える余分な大金などない」



「そうですよね……」



アルスはホーキンスの言葉を聞き項垂れる。



「……フン、生き延びて金を返しに来い。ここはおまえの家だ、故郷だ、いつまでもマークと待ってるぞ」



「は、はいっ、父さん」



アルスは油断すると泣きそうだった、父親の優しさと母親の想いを感じたからだ。


「準備は出来てるんだろ?」



アルスが問いに頷く。


「なら行け、どんな困難が立ちはだかろうとも決して諦めるな、アルスをソフィアの言葉で贈ろう」



「いってきます!」



アルスは父親に見送られながら扉をくぐると家をあとにした。




「おーい!」



村の門へと歩いて向かっているとマークが駆け寄ってくる。



「もう出発するところなんだろ?俺も門のところまで一緒にいくよ」


マークはアルスの隣へ来ると並んで歩き出す。


「思い返せばこの村が安全になったのもアルスのお蔭だよな」



「なんですか兄さんいきなり?」


「いや、ふと思ってな……」



レイブス村の急速な変化の中心にはいつもアルスがいた。



ゴーレムメイカーのスキル能力はゴーレムと呼ばれる人型物体の作成・操作である。


ゴーレムに意思はないが多少の知能はあり創造主の命令を聞き忠実にこなす。


アルスが初めてスキルを使って作ったゴーレムは村の外れの地面の土を使用した体長2mのアースゴーレムだった。



「最初はゴーレムなんて見たこともなかったしでっかい土の人形だな位しか思わなかったけどさ、アルスが命令して近くの大木を殴らせただろ?」


「えぇ」


「一撃であんなデカイ木が折れたんだぜ、あんな真似木こりのウッズ爺さんにも出来ないさ」


ゴーレムのパワーはかなり強い、素早さと知能は高くないがその他の基本性能は人間以上なのである。


「ただ、弱点もありますけどね……」



「あぁそうだな、あの時は初めて見たゴーレムに興奮しててやらかしちまったな」


初めてゴーレムを作ったあの日、マークとアルスの2人は村はずれで色々試していた。


様々な発見があり2人してそれに夢中になった。



2体目のゴーレムを作ろうとした際だった。アルスが急に倒れたのだ。



驚いたのはマークだ、弟を担ぎ上げると一目散に自宅へと駆け込んだ。


ホーキンスに怒鳴られながら村の薬師の婆様に診てもらった結果魔力切れだろうという診断結果だった。


魔力は神の恩恵たるスキル・魔法を行使するさいに必要になる神の力の一部だと言われている。


ゴーレムメイカーは1体作る毎に魔力を消費する、スキルに目覚めたばかりのアルスでは2体分の魔力を確保することが出来なかったのだ。


魔力を持つ子供は魔力を持つ親から産まれやすい。


父であるホーキンスや、元冒険者だった母ソフィアのどちらも魔力を持っていなかったため息子の秘められた魔力に気付かなかったのだ。


なのでアルスは生まれてこのかた魔力を使ったこともなければ自分にあるとも思っていなかった。


普通魔力を消費すると消費した分、体から魔力が抜け疲労感が襲ってくるものなのだが、そんなことも知らず初めてのスキル使用で極度の興奮状態だったアルスは疲労感に気付かずに再度行使し遂には気絶して倒れてしまったのだ。





魔力もあってスキルもある、アルスは自慢の弟だな




あのアルスの魔力発覚のあと、兄マークにも魔力を調べる検査を受けさせたのだが兄には何の魔力もなかった。


あの時アルスが兄マークから言われた言葉がそれだった。



マークは決してアルスを妬みはしなかった、自分には自分のやるべきこと、道があるというのがマークの信条である。


話ながら歩いて門へと到着する。



「アルス、おまえは自分の信じる道を行け。おまえなら出来る!なんたって俺の愛する自慢の弟だからな」


「はい……行ってきます兄さん!!」



挨拶のあとアルスは決して振り返らなかった、振り返ってしまえば自分の大好きな父や兄、母とずっと一緒にいたいと言い出してしまいそうだったからだ。


アルスは走った、マークの声が聞こえなくなるまで、その後ろ姿にはいつまでもマークの頑張ってこいというエールの声だけが届いていた。


次話は旅立ちから到着位まで書ければいいかと思ってます。


遅筆ですがよろしくお願いします。

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