墓標
「母さん、私も今日で18歳になりました」
村の外れで一人の青年が墓標に向かって語りかける。
「母さんはこの花が好きでしたね」
墓標には小さな黄色い花が添えられている。
青年が15歳の時、村を魔物の群れが襲った。
「村に魔物達が出たとき、私にはまだ何の知識も力もなく両親に言われた通り部屋の隅で兄と一緒に小さく震えていることしかできませんでした……」
「震えながら両親の帰りを待っていた結果、帰ってきたのはボロボロの父とその手に抱かれた母の亡骸でした」
青年の父親は村を纏める村長であり母は元冒険者だった。
魔物の襲撃は年に数回あったのだがあの時はいつにもまして激しく、魔物の群れとの戦いで村にも死者が出た。
魔物の襲撃は村が滅びてもおかしくない勢いだった、村長である父が村人を纏め元冒険者である母が皆を率いて戦わなければ確実に村は滅びていただろう。
結果的に勝利したが失ったものも多い戦いだった。
「私が神様の加護を得たのはあの時でしたね、あれから色々ありました」
母の死を知った時、青年は目の前が光の点滅で覆われるような感覚とともに気絶した。
その時だった、青年の運命が大きく動いたのは。
次に青年が目覚めたのはあの魔物達の襲撃から3日後のことだった。
普段のいつもと変わらない朝、窓からは日差しの木漏れ日とともに鳥達の囀ずりが聴こえる。
青年の目覚めに気付いたのか兄が急いで駆け寄っていく。
ベットの縁で青年の手を涙を流しながら強く握りしめる兄、よかったよかったという父の声が部屋には響いている。
ただそこに母の姿はなかった。
目覚めた青年の瞳からはとめどとなく涙が溢れ出ていた。
青年は自分がそのとき何を話したかあまり覚えていない。
ただ兄と父親の【スキル】というフレーズだけが聞こえていた。
この世界にはスキルという神から与えられる特別な恩恵がある。
スキルには産まれた時に神から授かる先天性スキルと、強烈な負荷や困難に遭遇・また克服した者、神の眼にとまった者だけが得る後天性スキルというものがある。
どちらも一握りの僅かな者に与えられし神の恩恵である。
青年の父は我が息子に与えられたスキルを母を亡くした息子に対する神の慈悲だと思った。
兄は弟への神の慈悲にただただ感謝する。
そして3年の月日は流れた。
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「母さん、私は今日村を出ます」
「私にアルスという名前を付けてくれたのは母さんらしいですね、母さんと共に過ごした15年間は私にとってとても大切な時間でした。私は母さんが命を途して守ったこの村をもっと大きくしたい、それに神様が私にこのスキルを与えてくれた意味を知りたい」
アルスは墓標を見つめ宣言する。
「必ず、アルスは必ず成し遂げます!母さんも空から見守っていてください!!」
春風がアルスの頬を撫でる。
それはまるで母が息子を慈しむかのような優しい風だった。
大幅修正完了!
ゴーレムが好きですが、ゴーレムの出る小説が少ないので自分で書いてみてます。