表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
始まりの旅路、導きの歌と宿命の抗争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/312

歌精と霊舞を決める大会本戦 二日目 02

歌精と霊舞を決める大会本戦一日目、四季崎は初戦で蒸気を操る霊煙と対戦する。

霊煙のトリッキーな魔法に苦戦するも、冷静な分析と機転で勝利を収め、二回戦進出を決める。

一方、伊勢も歌唱部門でなんとか勝ち進むが、次の対戦相手のレベルの高さをイリーネから指摘され、厳しい特訓を受けることになる。


その夜、四季崎は大会中に現れた謎の男「冬兎」と再び遭遇する。

冬兎は明日から仕事で会えなくなると告げ、自身が「アーティファクト(遺物)」の運送業をしていると明かす。

その言葉に四季崎は警戒心を抱くが、詳細は語られない。

ギルドに戻り、四季崎がイリーネに冬兎の話をすると、「アーティファクト」という言葉にイリーネは動揺し、急に用事を思い出したように立ち去ってしまう。

残された四季崎は「アーティファクト」という言葉の意味を訝しみながらも、明日の二回戦に備える。

 私が一歩踏み出そうとした瞬間、漣は素早く鞭を振り抜き、その先端が私の足元を狙った。鞭はしなやかに空気を切り裂き、地面を叩いて私の動きを封じる。思わず足を止めざるを得なかった。


(鞭による攻撃は、単なる物理的な痛み以上に心理的な効果をもたらすものだ)


「あら?もういいのかい?もっと味わってみないかい?」


 漣はこれ見よがしに鞭を地面に叩きつけ、鋭い音を響かせた。そのたびに、鞭で受けた傷が疼き、身体が思わずびくついてしまう。痛みだけでなく、あの音が心の奥底にまで響き渡り、無意識のうちに神経をざわつかせていた。


「いえ、これで十分です」


 こちらの緊張を悟られまいと、私はあくまで冷静を装いながら、自分の武器へと視線を向けた。


(しなやかにしなる鞭の一撃は、予測しづらく、どこから飛んでくるか分からないうえに射程がこちらよりも長い……武器の相性が悪い)


 こちらの不安を見透かしたかのように、漣は挑発的に揺さぶりをかけてきた。


「なんだい、がっかりだね。霊煙の噂を聞いたときは、もっと骨のある奴だと思ってたんだけど?」


 漣はじりじりと、慎重に距離を詰めながらこちらに近づいてきた。


(鞭の一撃はただの痛みだけではない。常に警戒を強いられ、集中力を削がれ、動きが鈍る。さらに、鞭が空気を切り裂く音やしなりは、精神に緊張を強制し、恐怖や焦燥を煽る。漣はまさにその心理戦こそが彼女の戦い方なのか)


 とにかく、相手に飲み込まれないよう、全神経を研ぎ澄ませて集中するしかなかった。


「漣さん、あなたの武器はてっきり剣だと思っていましたよ」


「剣?どこからそんな話が出たんだい?私はずっと鞭一筋さ!」


(鞭一筋?確か一回戦目の冒頭で司会が……いっ!)


 漣は私が考え込んでいるのを察したかのように、その思考を断ち切るように鞭を振い、脛に軽い一撃を加えてきた。


(くそっ!やりづらい!)


「では、なぜ一回戦目は剣を使われたんですか?」


 漣は昨日のことを思い返すように少し考え込み、やがてニヤリと笑った。


「ただの気まぐれさ!アタイはいろんな武器を使うのが趣味なんだよ」


(話の辻褄が合わない……今、何かごまかしたのか?)


「それより、あんた。ここにおしゃべりしに来たんじゃないだろう?」


 言葉と同時に放たれた一撃を、今度はなんとか躱した。


(とにかく、考える時間が欲しい)


 漣の攻撃を避けつつ、舞台の上を逃げ回る。しかし次第に、彼女の攻撃は私の動きを先読みするかのように飛んできて、身動きが取りにくくなっていった。


「もう、追いかけっこは終わりかい?」


 漣が鞭を私の足元に叩きつけたその瞬間、私は咄嗟に鞭を踏みつけた。呆気に取られた隙を突き、一気に距離を詰めると同時に、腹部へ木製の棍を叩きこもうとした。だが寸前で、彼女は上半身を大きく後ろへ反らせて躱し、そのまま華麗なバク転を披露した。


おまけとばかりに、漣はバク転の勢いを利用し、足で器用に木製の棍を蹴り上げ、こちらの体勢を崩してきた。


距離を離されまいと食らいつくように追撃を試みるが、彼女はまるで曲芸師のように軽やかにかわし続ける。こちらが連撃のスピードを上げるよりも早く、彼女は鞭をまるで体の一部のように自在に操り、そのしなやかな動きはまるで生き物のように空間を舞った。鞭は鋭くしなりながら一気に伸び、まるで風を切る刃のように私の背中へと叩きつけられた。


痛みで怯んだ隙に、漣はくるりと一回転し、その勢いのまま腹部を蹴り飛ばした。身体は5メートルほど吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。


「鞭を踏みつけられたときは少し焦ったわ。でも、次はうまくいくと思わないことだね」


 漣は容赦なく鞭を打ち込みながらも、それを軽やかに躱して素早く起き上がった。その瞬間、足元が崩れそうな違和感に襲われ、咄嗟に視線を後ろへ向けると、いつの間にか舞台の端まで追い詰められていた。


 私は舞台から落ちなかったことに安堵しながら、起き上がると逃げている間に考えていたことを聞いた。


「どうやら、私もここまでのようだ。最後に漣さんに聞きたいことがあります」


 私の敗北宣言に近い言葉を聞いて、漣は期待外れとばかりに落胆した様子を見せた。


「あっけないね。それで?」


「あなたはなぜ武芸百般なんて言われているのか?」


「なんだい、そんなことかい。あんた、意外と余裕があるみたいだね。こっちの心理戦は無駄だったってことかい?」


 彼女は首を振り、「今さら何をって感じだね」と嘲笑を含んだ声で言った。


「いえ、十分堪えましたよ。で、どうなんです?」


「さっきも言ったけど、いろんな武器を使うのが趣味なんだよ」


「確かに先ほども言っていましたね。現に一回戦目では剣を使っている」


「ああ、それで十分かい?」


「いえ、あとちょっと。では、なぜ先ほどは鞭一筋と言ったのですか?」


 漣の余裕の表情が少し曇り、焦りが見え隠れした。


「あんたは言葉の綾ってのを知らないみたいだね?アタイは一番、鞭が得意なんだよ!」


 それを証明するかのように、地面を鞭で強く打ちつけた。その音が場を支配する。


()()()()()()()()……ありがとうございます。もう、思い残すことはありません」


(今の会話、嘘ではないな。これで仮説が立てられた。あとは証明するだけだ)


 私は覚悟を決めたように両手を広げ、身体に一発入れてくださいと言わんばかりの姿勢を取った。


「威勢がいいね。それともあんたはそういうのが趣味ってことかい?」


 漣が「じゃあね」と呟くと、鞭を胸の高さで振るった。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ