歌精と霊舞を決める大会本戦 二日目 01
歌精と霊舞を決める大会本戦一日目、四季崎は初戦で蒸気を操る霊煙と対戦する。
霊煙のトリッキーな魔法に苦戦するも、冷静な分析と機転で勝利を収め、二回戦進出を決める。
一方、伊勢も歌唱部門でなんとか勝ち進むが、次の対戦相手のレベルの高さをイリーネから指摘され、厳しい特訓を受けることになる。
その夜、四季崎は大会中に現れた謎の男「冬兎」と再び遭遇する。
冬兎は明日から仕事で会えなくなると告げ、自身が「アーティファクト(遺物)」の運送業をしていると明かす。
その言葉に四季崎は警戒心を抱くが、詳細は語られない。
ギルドに戻り、四季崎がイリーネに冬兎の話をすると、「アーティファクト」という言葉にイリーネは動揺し、急に用事を思い出したように立ち去ってしまう。
残された四季崎は「アーティファクト」という言葉の意味を訝しみながらも、明日の二回戦に備える。
今回の相手――漣が会場に着いたのか、司会者の短い挨拶が聞こえてきた。
司会の第一声と同時に、観客席から地鳴りのような歓声が湧き上がった。昨日の熱狂が時間を巻き戻したかのように、闘技場内に熱気が渦巻く。
「昨日の試合は本当に素晴らしかったですね!どの試合も目が離せませんでした。さあ、少し振り返ってみましょうか?」
司会者はマイクを握る手に力を込め、目を輝かせながら会場を見渡した。
「まずは午前中の一試合目。常連の漣選手の剣技に翻弄され、あえなく敗退した白魚選手。あれはまさに一瞬の隙が命取り!まるで水面に落ちた一滴の波紋が大波を呼ぶかのようでしたね!」
声のトーンを少し上げ、身を乗り出すようにして話す。
「そして第二試合!今回の大会最大の番狂わせ!謎多き男、夏季選手の緻密な作戦に翻弄され、霊煙選手があえなく場外へと追いやられました。あの知略と謀略の網にかかった霊煙選手には同情の声も多かったですが、次はどんな驚きを見せてくれるのか、目が離せません!」
解説の合間には軽く息を整え、観客の反応を確かめるようにゆっくりと周囲を見渡す。手拍子が起こると、司会者はそれに合わせて軽くリズムを取り、場の一体感を作り出した。
「さあ、いよいよ本日の主役たちをご紹介します!」
司会者はマイクを握りしめ、声を張り上げた。会場中が一気にざわめき、期待の熱気が波のように押し寄せる。
「まずは昨日の話題をさらった謎の男!戦舞ではまだ荒削りな動きも見られましたが、その知略と謀略はまさに一級品!出身も容姿も謎に包まれた孤高の戦士……夏季!!」
司会者は大きく腕を振り上げ、観客席の歓声を煽る。観客からは「おおーっ!」とどよめきが起こり、拍手と歓声が一層大きくなった。
(謎なのはわかるが、もう少し説明が欲しいな……)
我ながら、自分の説明に納得がいかない気持ちを抑えながら、舞台に上がっていった。大会二日目なのでさすがに緊張もすることなく、舞台に上がっていった。
「そして、対するは優勝候補の一角!武芸に秀で、戦場を華麗に舞う女戦士!その戦術に翻弄された者は数知れず!今回はどんな武器を繰り出すのか……ディーム出身、武芸百般の女戦士!!漣!!」
司会者の声が高まり、観客の歓声は一気に最高潮へ。
階段を駆け上がり、最後の段から大きく跳ね上がるようにして舞台へと飛び出してきたのは、陽光を浴びて琥珀色に輝く肌を持つ美女だった。純白のビキニがその褐色の肌に鮮やかに映え、まるで波打ち際で磨かれたかのように引き締まった肢体が、闘技場の熱気を纏いながら力強く躍動している。腰には念のために巻かれた黄緑色の半透明のパレオが風に揺れ、裸足の足裏が木床を軽やかに捉えていた。
彼女は舞台に鮮やかに着地すると、一瞬の静寂の中で体をピタリと止め、観客席の隅々まで見渡せるように両手を大きく広げて振った。歓声が渦のように巻き起こり、男性も女性も彼女に熱い視線を注いでいるのが伝わってきた
一通り手を振り終えると、彼女はゆっくりと舞台中央へ向かって歩き出した。水色の短い髪が軽やかな風に揺れ、柔らかな笑みを浮かべながら観客に向けて微笑みを振りまいている。その笑顔は、戦いの場にあってもなお、どこか温かく、見る者の心を引きつけてやまなかった。
しかし、彼女が立ち位置に着いた瞬間、私はふと違和感を覚えた。何かが、彼女の外見の華やかさとは裏腹に、不自然に感じられたのだ。
(彼女の武器……剣はどこにしまっているんだ?)
漣が舞台に上がり、ここまで一直線に歩いてくる間、一度も武器らしいものを手にしている様子はなかった。
「勝敗は相手が降参または急所への一撃を加えるか、舞台から落ちることで決定します。時間は無制限。両者とも武器を構えてください」
私の漣への警戒心が一層強まる中、司会者が戦いの合図を告げた。仕方なく木製の棍を中段で構えると、漣はまるで私を嘲笑うかのような薄ら笑いを浮かべ、武器を構える気配すら見せなかった。
「では、双方悔いのないように!では……始め!!」
(今回は相手の出方を伺うのは得策ではないか)
と考えつつも、先手必勝とばかりに開始の合図と同時に一気に距離を詰めた。心臓を狙う鋭い突きを放ち、一撃で決着をつける勢いだった。しかし、その攻撃は寸前で届かなかった。
漣も合図と同時に動き出した。背中側――私の視界から隠れるパレオの下に手を走らせると、彼女は冷静に私との間合いを計りながらこちらの動きをじっと見据えている。棍を突き出す瞬間、彼女は背中から何かを素早く引き抜いた。
次の瞬間、空気を切り裂く鋭い音が耳を突き、右肩に激しい痛みが走った。思わず身をよじる間に生まれた一瞬の隙を突かれ、今度はわき腹に鋭い痛みが走る。何が起きたのか理解できず、咄嗟に距離を取って後退した。
視線の先にあったのは、漣の手に握られた長くしなやかな茶色の革製の鞭だった。彼女の動きは静かでありながら、確実に私の体を捕らえていたのだ。
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