戦いの余韻と迫る影 01
四季崎は大会予選に仮面をつけて参加し、熱気あふれる会場で多彩な参加者たちの中に身を置く。
実力者たちの滑らかな「清流の型」とは異なり、彼は激しい「瀑布の型」を選び、迫力ある舞で観客を魅了。
審査員の厳しい視線の中、ギリギリで予選通過を果たし安堵する。
予選後、修練を続ける四季崎は、怪しい男「冬兎」と再び遭遇。
男は冷ややかな態度で四季崎を警戒させるが、すぐに姿を消す。
冬兎の正体に疑念を抱きつつ、四季崎は警戒を強める。
ギルドに戻ると疲れ果てた伊勢と元気なイリーネの対比が印象的で、冬兎の謎は深まるばかりであった。
霊煙は起き上がろうとしたが、自分が舞台の外にいることに気づき、敗北を悟った。
「こ、これは……信じられない!国外からの出場者が二回戦進出だと!?まさか、前代未聞の国外からの出場者が二回戦に進出するとは……信じられない!この男、一体何者なんだ……!!」
司会の驚愕の声とともに、会場は大いに盛り上がっていた。
私は舞台を降り、まだ起き上がれない霊煙に近づいて手を差し出した。彼は苦笑いしながらそれを掴み、身体を起こした。最後に私は彼に確認かのように話し出した。
「あの魔法は幻覚ではない。そうだね?」
「そこまで見抜いていたのか!」
「いや……ここだけは最後まで自信がなかった。あれは蒸気の中の自分の動きを投影しているだけだと予測したんだ」
霊煙の驚きに対して、私は少し自信なさ気にに答えた。
「なるほど」
しかし、彼はそれを謙遜と受け取ったように含みを持たせて答えた。
「だから、蒸気が少ない最後の瞬間なら、蒸気ごと攻撃すれば当たると踏んだ」
「もし違っていたらどうするつもりだったんだ?」
霊煙の試すような質問に対して、用意していた回答を提示した。
「その場合は、あの攻撃で消費する蒸気の量を考えると、あと一回か二回が限度のはず。そうなれば素手での近接戦闘に持ち込み、消耗戦になっていただろうな」
私は顎に手を当て、今回の戦術を振り返りながら話した。
「どのみち、勝ちは難しかったわけだ……」
「今回、君が学ぶべきは、できるだけ早い段階で新しい魔法を張り直すことだ。お勧めするよ」
私のいつもの癖で無意識にアドバイスをしてしまうと、霊煙はそんなことを気にする様子もなく、私の肩をバシバシと叩き、「参考にする」と言って去っていった。
私もそれに倣って、次の試合の邪魔にならないよう、そのまま控室に戻った。すると運営側の服を着た男が私を待っていた。
「二回戦進出おめでとうございます、夏季さん」
「ありがとうございます」
「二回戦は明日の午前中になりますので、よろしくお願いします」
男は事務的に話を進めていると、つい次の相手がだれかが気になった。
「分かりました。次の相手は第三試合の漣さんですか?」
その言葉に少し嬉しそうに男は答えた。
「はい!変幻自在の戦術を売りとする武芸の達人です!」
(なるほど、司会の言葉では剣の使い手らしいが……)
「ありがとうございます。それでは明日の試合、楽しみにさせていただきます」
そう言って待合を後にし、ギルドに戻った。
ギルドの前に着くと、伊勢の出番がちょうど終わったのか、舞台から降りてきており、入り口で鉢合わせた。私と伊勢はそのまま中に入った。
「四季さん!なんとか次に進むことができましたよ!」
外で話すのを我慢していたのか、エントランスに入ると彼は嬉しさのあまり無邪気にはしゃぎ出した。目を輝かせて、まるで子供のように笑っている。
「おめでとう。伊勢は本当に歌がうまかったんだな」
「ありがとう、四季さん。でも正直、まだまだだと思うんです。次はもっと厳しいって感じてます」
そこへ遅れて入ってきたイリーネが少し厳しい表情で俯きながらも、口を開いた。
「うーん……確かに伊勢さんの歌は素晴らしいですわ。でも、次の4人に残るのは簡単じゃないと思います。私の見立てでは、他の参加者の歌唱力もかなり高いですのよ」
伊勢は少し不安そうに顔を上げて、「えっ、そんなに厳しいんですか?」と訊ねる。
イリーネは一人呟きながらゆっくりと視線を上げ、その鋭い両目で伊勢をじっと見据えた。その視線はまるで獣のように獲物を捕らえるかのようで、伊勢は思わず身体が硬直し、小動物のように震え上がった。
「みこちゃん、今日の特訓では一切の手加減はしませんわ。心を鬼にして臨むと決めましたの」
「えっ!?今までも十分に本気でやってきたと思うんですけど……!」
伊勢の必死の抗議も届かず、イリーネは無言のまま素早く彼女の腕を掴んだ。
「ちょっ……待って……」
抗議の言葉は途中で途切れ、伊勢は引きずられるようにして歌劇場の奥へと連れて行かれた。
(今回は本はなしと。もう教えることがないということかな?)
私は伊勢とイリーネのやり取りをそっと目を逸らし、そのまま自室へ戻って少しの間、休息を取ることにした。
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