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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
始まりの旅路、導きの歌と宿命の抗争

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戦舞の幕開け

四季崎は大会予選に仮面をつけて参加し、熱気あふれる会場で多彩な参加者たちの中に身を置く。

実力者たちの滑らかな「清流の型」とは異なり、彼は激しい「瀑布の型」を選び、迫力ある舞で観客を魅了。

審査員の厳しい視線の中、ギリギリで予選通過を果たし安堵する。

予選後、修練を続ける四季崎は、怪しい男「冬兎」と再び遭遇。

男は冷ややかな態度で四季崎を警戒させるが、すぐに姿を消す。

冬兎の正体に疑念を抱きつつ、四季崎は警戒を強める。

ギルドに戻ると疲れ果てた伊勢と元気なイリーネの対比が印象的で、冬兎の謎は深まるばかりであった。

歌精と霊舞を決める大会本戦 一日目


    ❐ (四季崎視点)

 食堂まで降りると、伊勢が既に朝食を摂っているのが見えた。彼女は皿に盛られたサラダをおいしそうに食べながら、私が向かいの席に座るのを待っているようだった。


「四季さん、今日の試合は何時ですか? ボク、絶対に見学したいんですけど……」


 挨拶を早々に向かいに座ると、伊勢が開口一番に黄金色の瞳を輝かせて尋ねる。彼女の赤毛が窓から差し込む朝日に照らされ、羽毛のようにふわりと浮かんで見えた。


「残念ながら、私の試合は第四試合。君の出番と時間が重なるからそれは無理そうですね」


 私がそう告げると、彼女は肩を落としつつも拳を握り締めた。「じゃあ明日は必ず! 」と意気込んでいたが、明日も試合の時間が被った場合どうするつもりなのか少し疑問に思った。


 試合まではまだ時間があるため、私も料理を頼むと食堂で時間を潰していると、突然イリーネが駆け寄ってきた。しかし、歌川が素早く立ち塞がり、彼女の進路を遮った。


「先輩、いい加減にしてくださいよ! 昨日は一日中どこに行っていたんですか? 今日もまたいなくなったら、こちらが困ります!」


 目の前に歌川が現れたことに少しむくれたイリーネは後輩を叱るように話した。


「いいですか?わたくしは歌川ちゃんも知らないような重要な仕事を真っ最中なんですよ?」


 しかし、それでは納得のいっていない歌川にイリーネに鋭い視線を向けた。


「でも、それは先輩が勝手に引き受けた私用であって仕事ではないですよね?」


 的を射た答えに一瞬だけ言葉を失いながらも少し微笑みながら、歌川を見下ろすように言った。


「でも、じゃないわ。私がいなくても、あなたはしっかり仕事をしているでしょう? だからこそ、私も安心して動けるのよ」


 イリーネが自分を評価してくれている事に歌川は言葉に詰まり、眉をひそめながらも反論できない様子だった。


 イリーネはさらに柔らかく続けた。


「分かってくれたみたいね。それじゃあ、わたくしはちょっと街の方に出かけてくるわ」


 我に返った歌川は美しくターンを決めて去っていくイリーネの肩を掴んだ。


「私を言いくるめて逃げようとしないでください。仕事をさぼっている事実は変わりません!」


 イリーネは振り返ると可愛くし舌を出しながら、「ばれた♪」と可愛らしく言うと、そのまま受付へ連行させていこうとした。


 私が頼んだことといえ、さすがに不憫に思い、歌川に声をかけた。


「私が試合に参加している間、イリーネさんに警護をお願いしてしまって……本当に申し訳なく思っています。どうか、許してください」


 歌川が振り返ると、深いため息をつき、藍色の髪をかき上げた。


「四季崎さまのお気持ちは理解しておりますが、先輩に甘くなりすぎてはいけません。今回の件は身から出た錆ですので……」


「そうですか?」


「大会に出ることになったのは、先輩の軽い気持ちが原因です。そこから起こる全ての問題は、先輩が引き受けるべき自己責任です」


 そう歌川に言われて一昨日の出来事を思い返してみた。


(確かに……今回の出来事はリーネのお願い……というより思いつきだったか……)


イリーネが俯くのを見て、私は言葉を継げなかった。彼女は貝の髪飾りを弄びながらも小さな声で呟いていた。


「申し訳ないのですが、大会に出場しない間はギルドの中にいてください。それが一番安全ですし、先輩がまたふいに姿を消すこともないので……」


 歌川の完璧な敬礼に、伊勢は苦笑いで頷いた。彼女は藍色のワンピース揺らしながら、不安そうにしていた。



――こうして、私たちは異なる時間を過ごすことになった。


 私は自室に戻ると自前の本を持ち込んで食堂で読みふけっていた。その間、伊勢はじっとしていることが耐え切れなくなり、ギルドの中をうろつき始め、それでもやることはなくなると、受付に近づいていくと「手伝います!」と歌川に懇願していた。


 その提案に天からの救いが来てくれたかのように輝くような笑みを浮かべると、歌川は伊勢には申し訳なさそうに断った。その瞬間、再び地獄に突き落とされたかのように全身から陰鬱なオーラを放ちながら、黙々と仕事に取り組んではいるものの、仕事のスピードは歌川よりも速かった。


 気づくと、時間は昼を回っており、試合の時間がまじかに迫っていた。


 私は昼食を摂ると伊勢はどうするのか聞いた。


「ボクは歌に影響が出そうなのでやめときます」


 と言って、飲み物だけ注文していた。


 食べ終わると、それを合図にしていたようにイリーネが解放された。その瞬間、歌川から逃げるようにしてこちらに来ると伊勢の背中に隠れた。


 その状態のまま私たち三人はギルドを出ていくと、いつものイリーネに戻った。


 イリーネと伊勢はそのまま会場に向かうと言って、昨日と同じように互いに健闘を祈り、その場で別れることにした。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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