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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
始まりの旅路、導きの歌と宿命の抗争

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美歌と麗舞の煌めく幻想郷 アンディール 02

四季崎との模擬戦で、伊勢は糸島の指導を受けながら魔法ルミリアを駆使し、防御と攻撃を試みる。

四季崎の高速移動と強力な斬撃に苦戦しつつも、仲間の励ましで諦めずに立ち向かう。

魔力を使い果たし意識を失うも、精霊の力を借りて結界を顕現させ、四季崎の攻撃を跳ね返す。

戦闘を通じて伊勢は自信と成長を実感し、仲間との絆を深めていく。

 四季崎はイリーネの不敵な笑みに、嫌な予感を覚えた。


「お二人とも、参加してみてはいかがですか?アンディールに来た記念として♪」


(予感が的中したか……こんなに目立つことを……)


 四季崎の内心をよそに、横から気合のこもった力強い声が響いた。


「いえ!ボクが優勝して、レガリアの大切さを皆さんに伝えます!」


(イリーネの狙いはそちらだったのか……)


「イリーネさん、私たちにはそんな……」


 四季崎が止めるより早く、伊勢はイリーネと手を繋ぎながら「受付してきます!」と言って駆け出していった。



 しばらくして二人が戻ってくると、イリーネは楽しげに軽やかに歩き、伊勢は気合のこもった力強い足取りだった。


「受付、済ませましたわ♪」


「そうですか。それで二人とも歌に参加するんですか?」


「え?何を言っているんですか。歌は伊勢ちゃん、踊りは四季崎さんに決まっていますわ?」


 イリーネは「当たり前のことを」とでも言うように首をかしげていた。


「私は踊りなんてできませんよ」


 四季崎は頭を抱えたが、イリーネは肩に手を置き、優しく言った。


「大丈夫です。踊りと言っても戦舞、つまり戦いですから。四季崎さんでもできますわ」


「私はその戦舞の基礎すら知らないのですが……」


 今度は伊勢が反対の肩に手を置き、力強く言った。


「四季さん、勉強は好きでしょう?今から勉強しましょう」


(この二人、楽しんでいるな。一人は確実に悪意を持って……)


 四季崎は逃げ道がないと悟り、小さく「分かりました」と承諾した。


 まずはギルドへ向かうため、イリーネの案内で進むことにした。


 ギルドはアンディールの二層目にあり、一層目とは反対側の大きな広場に面していた。


 アンディールのギルドは、大きな歌劇場に隣接するように建てられていた。


 歌劇場は重厚な石材で築かれ、荘厳な外観を誇り、巨大なアーチ型の入り口が印象的だった。


 外壁は堅牢な石で覆われ、時の流れを感じさせる風合いが漂っていた。


 高い塔がそびえ立ち、尖塔の先端には繊細な彫刻が施されていた。


 窓は大きく、細かな装飾の施された格子がはめ込まれ、内部の明かりが外に漏れ出しており、まるで夜空に輝く星のようだった。


 それに対し、ギルドは木造の質素な造りで、同じ都市のセントナーレと比べると見劣りする印象だった。


 伊勢は歌劇場の方を指差し、驚きを隠せなかった。


「アンディールのギルドは、まるで歌劇場のようなすごい作りなんですね!」


 四季崎はそんなはずはないと思ったが、イリーネは自慢げに「すごいでしょう♪」と言った。


 四季崎は驚き、イリーネを見つめ返した。


「なっ!イリーネさん、それはいつもの冗談ですよね?」


 しかし、それは冗談ではなく、本当のことのようだった。


「アンディールのギルドは歌劇場を含めてすべてですの。意外と皆さん知らないんですよね」


 イリーネは楽しげにそう言い、案内したのは歌劇場ではなく、その隣の質素な建物だった。


 中に入ると、多くのギルド関係者がひしめき合い、左側では食事と雑談を楽しむ賑わいが、右側では依頼を選ぶ仲間たちの相談や討論の声が響いていた。


 中央の受付にはテキパキと仕事をこなす受付嬢がおり、イリーネの姿に気づくと、イリーネは手を振って応えたが、すぐに視線を逸らして仕事に戻った。


「歌川ちゃん、何か手伝うことある?」


 イリーネが手を振りながら受付に近づくと、周囲の人々は憧れと尊敬の眼差しを向け、「今日は運がいい」「本物だ……」と口々に囁いていた。


 歌川はイリーネにもう一度だけ視線を向けるとすぐに逸らし、一言「ないです」と一蹴した。しかし周囲の者は「大変そうだよ?」「ちょっとくらいは?」と受付の周りをうろつき始めた。


 歌川は仕事を一通り終えると、両手で机をバンと強く叩いた。その音に周囲は一瞬驚き静まったが、すぐに元の喧騒に戻った。


「イリーネ先輩に仕事を任せたほうが正確でミスもなく、効率もいいので、任せるのが正解なのは分かります!」


 自分を褒められて悪い気はしないのか、嬉しそうに笑っていると、その姿を睨むように続けた。


「その代わり、仕事の途中でいなくなるし、気分や興味で仕事を選ぶし、自由すぎます。そんな人には任せられません」


 そう言うと、すぐに仕事に戻ろうとしたが、何かを思い出したように手を止めた。


「そういえば、滝壺さんから伝言です。『来るだけ来て仕事をしないのは認めません。そちらに書類仕事を送っておきました』とのことです。ですので、イリーネ先輩の部屋に置いてあります」


 それを聞いたイリーネは「えっー!」と声を上げ、まるで講義を始めるかのように話し始めたが、歌川が追い打ちをかけた。


「ついでにこの二日間で溜まった仕事もありますので、それもお願いしますね?」


 満面の笑みを浮かべた歌川は、仕事に戻っていった。


 イリーネは俯きながらぶつぶつと呟き、指を折って数え、最後には考え込んだ。四季崎と伊勢が後ろに近づくと、顔を上げて手を叩き、「まあ、なんとかなりますわ♪」と言った。


「応接室を借りますわね」


 鍵を勝手に拝借すると、「行きますわよ」と軽やかな足取りで受付の奥へ二人を案内した。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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