美歌と麗舞の煌めく幻想郷 アンディール 01
四季崎との模擬戦で、伊勢は糸島の指導を受けながら魔法を駆使し、防御と攻撃を試みる。
四季崎の高速移動と強力な斬撃に苦戦しつつも、仲間の励ましで諦めずに立ち向かう。
魔力を使い果たし意識を失うも、精霊の力を借りて結界を顕現させ、四季崎の攻撃を跳ね返す。
戦闘を通じて伊勢は自信と成長を実感し、仲間との絆を深めていく。
⬠❐ (二人の視点)
「イリーネさん。すみません。伊勢に戦い方を教えるために、一日だけ島に滞在してました」
イリーネは疑いの眼差しをこちらに向け、腰にてお当てていた。
「イリーネさん!本当です。四季崎さんと糸島さんが色々と教えてくれました!」
伊勢は四季崎をかばうように一歩前に出た。その真剣な姿に、イリーネは少し呆気にとられ、驚きを隠せなかった。
「伊勢さん、何か変わりましたね。なんというか、輝いているように見えます」
イリーネが不思議そうに首をかしげていると、四季崎が伊勢の肩に手を置き、ゆっくりと一歩前に出た。
「それより、早く首都に入りましょう。久しぶりにベッドでゆっくり休みたいものです」
「それもそうですね」と伊勢は四季崎を見つめて頷いた。その様子を見て、イリーネは意味深な笑みを浮かべた。
「その前に、四季崎さんには外套をしっかりと羽織っていただきますね」
そう言うと、イリーネはためらう間もなく四季崎の頭にフードを掴み、軽やかに被せた。それを見て伊勢もフードをかぶろうとしたが、「伊勢さんは大丈夫ですよ」と制された。
訳が分からなかったが、伊勢は素直に従った。四季崎は無理やり被せられたフードの位置を直し、顔の表情を引き締めた。
四季崎と伊勢はイリーネの先導で、首都を覆う水の膜を静かにくぐり抜けた。
――美歌と麗舞の煌めく幻想郷 アンディール
首都の中は、ひんやりとした石造りの建物が軒を連ね、所々に温もりを感じさせる木材がアクセントとして用いられていた。
まるで海上に浮かぶかのように、家々は水面すれすれに建てられ、その間を小さな石造りや木製の橋が繋いでいる。
二層に大きく分かれた都市は、高くても三階建ての建物が並び、時折、楽しげな歌声や軽快な踊りのリズムが響いてくる。この街の人々は歌と踊りをこよなく愛し、日々の暮らしの中で自然に音楽が生まれているようだった。
頭上には巨大な岩の柱がそびえ立ち、その圧倒的な存在感を放っている。周囲を包む水の膜は音を優しく反響させ、街全体を穏やかな音色で満たしていた。
橋の上では人々が輪になって歌い踊り、その笑顔は陽光よりも明るく輝いていた。静かで美しい石造りの街に、喜びの歌声と踊りのリズムが絶えず響き渡っている。
――ゴルゴナ大陸の歩き方 より抜粋
四季崎と伊勢は、水の膜を越えた先にある都市の水たまりに足を踏み入れそうになった。
その様子を楽しむかのように、イリーネが手招きした。「こっちですよ」三人は石造りの橋を進み、途中で歌う人や踊る人とすれ違うたび、伊勢は立ち止まり戸惑いを見せていた。
街の人々はイリーネを見るたびに手を振り、「今度の公演、楽しみにしてるよ」と声をかけていた。イリーネはそのすべてに楽しそうに応じていた。
やがて三人は街の中央にある大きな広場にたどり着いた。そこには何かの催し物のためか、大きな舞台が設けられ、多くの人々が集まっていた。
「期限は今日までです!これを逃すと次は一年後になりますよ!どなたでも参加できます!」
舞台からその声が響いてきた。
「イリーネさん。これは何の催し物何ですか?」
伊勢は広場の中央で立ち止まり質問した。四季崎もそれに釣られて足を止め、舞台を見つめた。
(こんな時期に珍しい催しだ。いったい何だろう?)
四季崎も知らない催しに興味を持ち始めていた。
「あれはここ数年で新しく始まった大会ですわ。名前は確か……《歌精と霊舞を決める大会》だったと思います」
まだ新しい大会のためか、イリーネ自身も完全には把握していない様子だった。
「この大会は歌と踊りの優勝者を決めるものですわ。ちなみに、優勝者に与えられるものは何だと思います?」
イリーネの声には怒りにも似た憤りが含まれていたが、二人は戸惑いながら「さあ?」と答えるしかなかった。
「優勝者に与えられるのは《レガリア》ですわ」
「!!」
「えぇ!」
その言葉に二人は驚きを隠せなかった。最初に口を開いたのは伊勢だった。
「《レガリア》って、あの……ゴルゴナでは《純粋な泡沫》と呼ばれるものですよね?そんな神聖なものを与える大会なんでしょうか?」
「「そんなわけがありませんわ。だって、誰でも参加できる大会ですもの」
「しかし、あれは莫大で純粋なマナの塊です。そんなものが他国の人間に渡る危険は計り知れません」
四季崎は驚きと呆れが入り混じった表情を浮かべていた。
(イリーネはこの事態を危惧し、怒りを感じているのだろう。何十年も戦争が起きていないからといって、平和に慣れすぎだ)
「わたくしどもギルドも政府に何度も申し入れていますが、『我らが負けるはずがない』と一点張りで、まったく聞き入れてもらえませんわ」
すると、イリーネの表情がぱっと明るくなり、振り返って目を輝かせながら提案を始めた。
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