四季崎と伊勢の模擬防衛戦 02
四季崎是空と仲間たちは、神秘的な内海へと足を踏み入れる。
内海は美しく穏やかな水面の下に魔獣が潜む危険な場所であり、マーメイド族の糸島泡沫の防御魔法『水霊の抱擁』に守られながら進む。
彼らは浮島を渡りながら、内海の不安定な地形と魔獣の脅威に警戒を怠らない。
野営の準備をし、伊勢は糸島の指導で魔法の扱いを学び成長していく。
翌朝、四季崎の冷静な指揮のもと、模擬戦が提案され、伊勢と糸島が防御役、四季崎が攻撃役として実戦訓練を開始。糸島の水の魔法が繰り出され、戦闘の緊張感が高まる中、仲間たちは互いの信頼と絆を深めていく。
内海の美しさと危険が交錯する中、彼らの旅は続き、過去の誤解や偏見を乗り越え、真実の歴史を正すための戦いが幕を開ける。
もう恒例になりつつある四季さんの一瞬の消失に慣れてしまい、すぐに周囲を見渡したが今回はどこにも表れていなかった。
(四季さんが本当に消えてしまった!)
しかし、糸島には見えているか、手を前にかざすと「魚たちよ彼を追え」と指示を出すと小さな魚たちが小さな水の軌跡を残すように四季さんの後を追いように泳ぎ始めた。
(目で追えないほどの速さで動いてるってこと?)
糸島さんは《空魚の嵐游》と同時に《水霊の抱擁》を発動させた。
水霊の抱擁は移動中に見せた規模よりも小さく、二人を包み込む大きさだった。
その頃には四季さんを追っていた魚のほとんどがいなくなっており、糸島はすぐに補充するように魔法を発動させると空中に水しぶきを上げて現れた。
(こんなのどうやって勝つの?これじゃあ……)
ボクは戦意を失いそうになった時、糸島さんの言っていたことを思い出した。
(「オラたちが諦めちゃダメ。戦っている仲間がいる限りそんなみんなを守るのがオラたちの仕事だ」)
ボクは俯き泣き出しそうな気持ちに鞭を打つようにして潤んだ視線を上にあげた。
(糸島さんは諦めてない!だったら、ボクもできるのことはしないと!)
ボクは四季さんの進路を制限するように《ルミリア》を展開していったが、四季さんはまるで紙を切り裂くかのように剣の一太刀で一瞬で砕け散ってしまった。ボクの小さな気持ちの変化に汗だくの糸島さんは疲れながらもにっこりと微笑みそれに答えるように力を振り絞った。
「魔力は尽きた。ここが勝負どころだね!サぺ、四季崎に噛みつけ!」
糸島の声が鋭く響き、二匹の巨大な水のサメ大きな水しぶきを上げながらが猛スピードで四季さんへと突進した。
四季さんは鋭く踏み止まり、身体をひねって武器を横に振り抜く。水しぶきが飛び散り、サメたちの突進を一閃で切り裂いた。
一匹のサメが激しく水を上げ爆ぜた。衝撃で四季さんは後方へ吹き飛ばされたが、空中で身体を翻し、冷静に体勢を立て直して着地した。
(四季さん、すごい……!)
ボクの胸が高鳴るのを感じた。最後の一匹のサメが口を大きく開けよだれのような水しぶきを上げながら襲いかかってきた。
四季さんは迷わず武器を振り上げると、一瞬の静止の後、豪快に振り下ろした。斬撃が閃き、サメは真っ二つに裂け散る。だが斬撃は止まらず、そのまま糸島さんへと迫った。
(まずい!)
ボクは咄嗟に魔法を発動しようと構えたが、それを止めるように糸島が鋭く叫んだ。「タートテ!守りを固めろ!」と放った。
すると足元のカメがゆっくりと逆立ちをするように背中の甲羅を盾にした。更に糸島の発動させていた《水霊の抱擁》を吸収して甲羅の前面に水の障壁を展開した。
そんな強固な障壁をもって、斬撃を受け止めて砕け散った。
糸島さんはふらつきながらも、意地を見せて座り込んだ。
「久しぶりに魔力を使い切った……後は伊勢くん、頼んだね」
ボクは糸島さんの頼みを絶対に守れないと思い、ボクは震える手で首を振り、声を震わせて叫んだ。
「ボクには絶対無理!糸島さんでもダメだったのに!」
糸島は小声で、しかし確信に満ちた声で囁いた。
「四季崎はお前ができると信じてる。だから本気を出すんだね。口には出さないがな」
そして大声で笑いながら叫んだ。
「オラもできると思うよ!」
見守るように待っていた四季さんの顔を見てみると疲れが伺えた。
「さすがに疲れました。次で最後にさせてもらいましょうか」
(二人の信じる瞳が胸に刺さる。できるなら、絶対に応えたい!)
ボクは震える手で杖を強く握り締め、気合いを込めて構え直した。
その時、不意に下水路でも出来事を頭によぎった。
(小さな精霊様が言ってた。願えば叶うって……だったら、もう一度力をお貸しください!)
意識が……
……遠の……
……く気が……
………する……。
『我が聖域、ここに顕現せよ!……』
体中から溢れ出す膨大な魔力が炸裂し、伊勢の身体は神々しい光に包まれた。
『……あらゆる悪を拒み、聖域の民に安息と希望を……』
杖を持たぬ手を虚空に掲げると、掌に魔力の渦巻く複雑な文字が浮かび上がり、球体を形成した。
『……聖女である我が保障する聖域は絶対不可侵なり』
《……ルミリア……》
文字の渦巻く球体が重力に引かれるように地面へと落下し、接地と同時に眩い光の柱となって結界を築き上げた。
剣を握る男は一瞬たじろいだが、すぐに険しい表情に変わる。全身の力を込め、結界へと斬りかかった。
だが結界が強烈な光を放ち、男は弾き飛ばされて宙を舞う。
魔力の大半を失い、身体は重くなった。力尽きて膝をつき、そのまま意識の闇へと沈んでいった。
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