四季崎と伊勢の模擬防衛戦 01
四季崎是空と仲間たちは、神秘的な内海へと足を踏み入れる。
内海は美しく穏やかな水面の下に魔獣が潜む危険な場所であり、マーメイド族の糸島泡沫の防御魔法『水霊の抱擁』に守られながら進む。
彼らは浮島を渡りながら、内海の不安定な地形と魔獣の脅威に警戒を怠らない。
野営の準備をし、伊勢は糸島の指導で魔法の扱いを学び成長していく。
翌朝、四季崎の冷静な指揮のもと、模擬戦が提案され、伊勢と糸島が防御役、四季崎が攻撃役として実戦訓練を開始。糸島の水の魔法が繰り出され、戦闘の緊張感が高まる中、仲間たちは互いの信頼と絆を深めていく。
内海の美しさと危険が交錯する中、彼らの旅は続き、過去の誤解や偏見を乗り越え、真実の歴史を正すための戦いが幕を開ける。
⬠(伊勢視点)
ボクは四季さんが離れていく背中を見送った。
(四季さんはボクが役に立つか知りたいんだ。もし、ここで失敗したら、見放されてしまう)
ボクは昨日の夜に聞いた話を思い出しながら、やる気に満ち溢れていた。
「伊勢くん?いいかね?」
糸島さんが申し訳なさそうに話しかけられ「ご、ごめんなさい」と謝った。
「お、あ。よかった。やる気は十分みたいだね。伊勢くんはさっき教えたことを活かしながら、《ルミリア》を使って守るんだね。その間にオラが彼に攻撃をして後退させる。大丈夫かい?」
ボクは大きく頷き、糸島さんが台に置かれたポーチの近くに立ったのを見て、ボクは彼の少し前に出た。
「四季崎!こっちはいつでもいいよ」
それを聞いた四季さんは背中から武器を取り出して伸ばした。
(そういえば、あんな武器はじめて見た気がするけど、遺物の一種なのかな?)
ボクが武器を観察しながら、そんなことを考えていると、一瞬のうちに視界から消えた。
心臓が高鳴る。咄嗟に詠唱を口に放った。
『光の聖域よ ボクを守れ!』
さっき、糸島さんに教えてもらったことを思い出す。
(「四季崎に魔法のことを教えくれたと思うけど、魔法を詠唱ありきで考えてはだめだね。詠唱はあくまで補助と考えた方がいいんだね。詠唱が長ければ長いほど、頭で考えなくても魔法は発動する。でも、実践ではそんな余裕はない。普段から魔法を具体的に想像していれば詠唱を短縮させて素早く発動させたられる」)
ボクは糸島さんに教えられたことを記憶に刻むように思い出し、魔法を溜めて周囲に目をやった。すると、右の方で四季さんが武器を構えて走り込んできた。
糸島さんは左手を四季さんにかざすと「いけ!」と叫んだ。すると、糸島さんの周りを泳いでいた水の魚が襲い掛かっていった。
四季さんは素早く踏み止まり、棍を振り抜く。水の魚たちが鋭く飛びかかるが、剣先が閃き、次々と弾き飛ばしていった。
打ち尽くした糸島さんは再び上に手をかざして詠唱を始めた。その隙に接近しようとした四季さんにボクは少し躊躇しながらも魔法を発動させた。
《ルミリア!!》
四季さんの前に光の壁が形成されると一瞬立ち止まってしまった。その隙に糸島さんが水の魚ばらまく様に一気に四季さんを襲わせた。
四季さんは一瞬の隙をつかれ、苦渋の表情を浮かべながらも、素早く後退。足音を響かせて元の位置へと戻った。
(「魔法はすぐに発動させずに手元に止めるやり方もある。時間があるときに詠唱して使えたいときに使う。この方法は防御する時に向いている。ただし、留めている間も魔力を消費してしまうから注意すること。」)
ボ魔法を留めた手をじっと見つめる。握りしめては開き、魔力の流れを確かめた。
(初めて魔法を使った時よりも魔力の消費が抑えられている気がする)
「糸島の座学が役に立っているようで何よりだ。じゃあ、次はもう少ししっかりと攻めさせていただこうかな」
四季さんは楽しそうにそう言うと今度もまた視界から消えた。
(なんで、四季さんはボクの視界から糸も容易く消えれるの!)
ボクの胸は焦燥で締め付けられ、手に汗がにじんだ。この理不尽に少し怒りを覚えながら、詠唱を唱え探した。
今度は左側に現れると四季さんは武器を構えて悠々と立っていた。
糸島さんがさっきと同じように水の魚を向かわせた。しかし、今度は武器で防ぐことをせず、魚を躱すように不規則な動きをしながらこちらに近づいてきた。
(四季さんの動きが全然わかんない。これじゃあ防ぎようがない……じゃあ、これなら!)
ボクは両腕を体の前に伸ばし、左右に大きく広げながら叫んだ。
《ルミリア!!》
すると今度はボクの前に広くで大きい城壁のような光の壁が生まれた。
(「魔法の形を意識したことはあるかい?……やっぱりないか。どんな壁を作るかをしっかり意識するといい。例えば小さくて硬いとか広くて大きいとか、想像すれば実現する」)
四季さんは《ルミリア》の前で鋭く足を止め、地面を蹴って後方へ跳躍。戻る勢いのまま、棍の先端で光の壁を軽く叩き割った。
《ルミリア》はいとも容易く砕け散り光の粒子になって消えていったが、その隙間から魚の群れが四季さんを襲い掛かった。
四季さんは後方へ鋭くバックステップを踏みつつ、飛びかかる水の魚を棍で次々と薙ぎ払った。
また最初の位置に戻ると背筋を伸ばした。
「いい選択でした。しかし、強度がいまいちでしたね」
「一度休憩を挟みましょうか」と言ってその場に座り込んだ四季さんは自分のポーチから水筒を取り出すと勢いよく飲み始めた。
僕もその場にへたり込み、疲れを見せない糸島さんから小さな瓶を渡された。中には透き通るような紫色の液体が入っていた。
「魔力水だね。失った魔力を補充しておくいい」
ボクは受け取りながら「糸島さんは?」と聞くと「オラはまだ余裕がある」と言って目を逸らしながらいった。
(これ前に四季さんにもらった回復薬に似ているけど、またまずいのかな?)
ボクは恐る恐る口をつけて一気に飲み干した。しかし、回復薬のよなまずさはなくそれどころか果汁水のように甘みを感じさせる味がしておいしかった。
「再会しよう」
そのあとも、2回の模擬戦あとに休憩を挟むことを繰り返してき、気づくと夕方になっていた。
「次が最後か……では、最後くらいは本気で行かせてもらおうかな?」
ボクが呆気に取られていると「糸島も本気でこいよ」とボクのことを意に返さず話を進めていった。
四季さんはいつもの位置に着くと、武器を取り出すとそこに何か水晶のようなものがはめ込むといつものように捻った。
「――可変式戦術棍『四季』。外装換装…」
「…赤き焔の輝きをもって、我を導け!戦術剣《蛍火》!!」
すると、棍自体が伸びることはなく、代わりに、そこから、まるで凝縮された炎が形を成しているような、しかし透明でありながら、眩しくも燃えるように美しい深紅色をしたエネルギー状の薄い光の刀身が、「シュイィィン!」という甲高い起動音と共に形成され、現れた。
「こっちはいつでもいいぞ」
糸島さんはボクの肩をポンポンと叩いた。
「前はオラに任せろ。守りに徹するだね。正直、四季崎の本気を止めるなんてオラには無理だ」
そう言うと腕を上にかざすといつもとは違う魔力を込め始めた。
『母なる大海よ ここに再現せよ……』
糸島が詠唱を始めると、空気が水を含んだかのようにじめっとしだした。
『……優雅に泳ぐ魚たちよ 畏敬を示す獣たちよ……』
空気中の水分が集まるようにして大小様々の水球を作り出していった。
オラが海だ出した海を優雅に泳げ!』
《アウディーロ クアーディン》
水球がいつものように魚の形を作り出していくが今回はそれだけではなかった。
今までは小さな魚の群れが生まれるだけだったが、今回は大きなサメが糸島さんを守るように泳ぎ、更に足元には大きなカメがどっしりと構えていた。
四季さんは剣を横に構え、鋭い眼差しでボクを睨みつけた。手を刃の上に置き、静かに力を込め始めた。
「我が血潮よ、燃え盛れ!イグニッション!」
叫びと共に、四季さんの身体を赤い炎のようなオーラが包み込み、まるで戦場の焔となった。
「今までの講義の成果を見せてください。伊勢さん」
私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。




