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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
始まりの旅路、導きの歌と宿命の抗争

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白煙と青海が織りなす街 02

異端者として生きる四季崎是空は、聖都へ向かう船上でトラブルに巻き込まれる。

参加した「成人の儀」で襲撃が発生し、犠牲の中、「聖女」と呼ばれる伊勢巫琴と出会う。

司祭の遺言と手際良い襲撃から、ウィスプ聖教内に内通者存在の疑惑が浮上。

伊勢が聖女の力を確認した四季崎は、仲間の助けを得て、追跡網の中、街から脱出。聖女を保護し、真実を探るため、ゴルゴナ大陸へ向けた二人の旅が始まる。

  ⬠ (伊勢視点)

ゴルゴナ大陸の港町ディーダに降り立ち、新たな一歩を踏み出したボクは、この五日間の船旅でずっと考えていたことを改めて胸に刻むように思い返した。


(司祭様は、ボクを『聖女』だと言った…。そして、法皇聖下に会え、とも。状況はまだよく分からないけど、もしそれが本当なら、ボクはこれからその法皇聖下にお会いしなければいけない。

 だとしたら、それまでに、『聖女』として恥ずかしくない様に、もっとしっかり振る舞わないと…。泣いてばかりじゃいられない!)


五日前、祭祀場での出来事と個別認識証で知らされた自らの驚くべき立場に、ボクの心はまだ驚きと戸惑いでいっぱいだった。


一方で、司祭や四季崎、そして自分の前に現れたあの光の存在のためにも、その運命に応えようと、ボクは自分にできることを精一杯頑張ろうと強く決意していた。


だからこそ、五日間の船旅の時間を使い、『聖女』として、一人の人間としてどうあるべきか、その答えを模索するために、船に乗っていた様々な立場や出身の人々と積極的に話し、見聞を広めようと努めていたのだ。


(……そうだ。聖女様かどうかは分からなくても、お父さんが教えてくれたように、まずは目の前で困っている人々に手を差し伸べること。それが今のボクの信じる『正しさ』だ。それを示さなくちゃ!)


そんな決意を新たにし、少し気が大きくなって高揚感に満ちていると、いつの間にか一人でどんどん先へ進んでしまっていたらしく、後ろから四季崎に「おい、あまり離れるなよ」と呆れた声で呼び止められた。


呼び止められ、我に返ると、ボクは「あ、ごめんなさい!」と慌てて四季崎の元へ戻った。


(いけない、いけない、浮かれてた…)


そう反省し、考えを振り払うように両手で自分の頬を軽くパチッと叩き、気持ちを切り替えて顔を上げた。


すると、そこで初めて、今まで気づかなかった光景――街のあちこちから白い湯気がもうもうと立ち上っている様子――に気づいた。


「わぁ…! 四季崎さん、見てください! 街のあちこちから白い湯気がたくさん立ち上っていますよ!」


ボクは、気になったことを好奇心のままに、ふと口に出してしまった。


すると隣で聞いていた四季崎は、少し呆れた顔をしながらも、ボクの純粋な疑問に応えるように、その湯気の理由を懇切丁寧に説明してくれた。


(四季さんは、本当に色々なことをよく知っているな。下水路での魔法のこともそうだったし。知識もあって、強くて、優しい……もし彼がこれからボクに力を貸してくれれば、法皇聖下に会うことも、もっと多くのことができるかもしれない……!)


そんな風にボクが考えている間にも、四季崎の説明は湯気の話からディーダの街の成り立ちや地理的特徴へと移り、熱心に続けられていた。しかしボクは、説明の内容よりもむしろ、四季崎の博識さと時折見せる楽しそうな表情に関心を寄せていた。


彼への期待や思考を巡らせていると、ふと四季崎の話が途切れ、不意に止まった。


「……あ、いや、すみません、長々と話してしまいました。興味のない話で迷惑でしたか?」


四季崎が照れくさそうに尋ねると、考え事をしていたボクは話をちゃんと聴いていなかったが、急に話を振られ驚いて一瞬肩をビクつかせた。


そのまま、思ったままの素直な気持ちを四季崎に伝えた。


「いいえ、全然です! すごく面白かったです! 四季さんは、本当に何でも詳しいですね!」


その素直な反応に安堵し、四季崎は少し照れくさそうに言った。


「…伊勢、四季崎は長いだろう。これからは『四季』と呼んでくれて構わない。」


「はい! 分かりました、四季さん!」


(しきざき、さん…じゃなくて、四季さんか…。うん、確かにその方が呼びやすいかも!)


呼び捨てを許されたこと、そして四季さんに仲間として認められたように感じ、ボクは嬉しくなった。


故郷の大陸モルフェア以外にほとんど出たことがなかったボクにとって、初めて訪れるディーダの活気ある街は、見るもの聞くものすべてが初めての体験だった。


新しい名前で呼び合い、少し打ち解けたことで、街を見ているうちにボクの好奇心はますます抑えられなくなり、次第にうずうずしてきた。


「では、四季さん! 少しはこのディーダの街を見て回れそうですか? きれいなものがいっぱいありそう!」


そんな彼女の言葉に何かを察したのか、あるいは彼自身も少し街を見たかったのか、四季崎が苦笑しながら提案した。


「…やれやれ、仕方ないですね。大丈夫でしょう。ただし時間はあまりありません。絶対に離れないこと、そして目立つ行動は避けるように気をつけてください。」


その願ってもない提案に、ボクは二つ返事で「はい! 行きます!」と目を輝かせて答えた。すると四季崎は念を押すように、再び釘を刺した。


「ただし、絶対に離れないように。いいですね?」


「分かってますって!」と少し頬を膨らませながらも、ボクは今度こそ四季崎から離れないよう意識し、彼の三歩ほど先をわくわくした気持ちを隠さずに歩き始めた。


改めて歩き出したディーダの白亜の街並みは、透き通るような青空と輝く海の鮮やかな色彩と対比し、強い陽光を浴びてキラキラと輝き、まるで美しい絵画の中に迷い込んだかのようだった。


それを一層実感させるように、街のあちこちから立ち上る白い蒸気が陽炎のようにゆらゆらと揺らめき、現実の風景を幻想的なヴェールで包み込んでいた。


街を少し歩いてみて分かったのは、ディーダの街が海辺の港から内陸の険しい岩壁へと緩やかに登る坂道になっていることだった。そのため、時折振り返るたびに、建物の隙間や道の先から広大で壮大なコバルトブルーの海が見渡せた。


しかし、統一感のある白亜の建物が入り組み、美しい迷路のように並んでいるため、方向感覚に自信のないボクはすぐに道を見失いそうになった。


だが、そのたびに隣を歩く四季崎が、

「おっと、そちらは行き止まりですよ」

「あちらが先ほど通った元の道ですよ」

と呆れつつも優しく案内してくれたため、今のところ迷子にならずに済んだ。


(…ふふ。四季さんは、ボクが迷うのを見越して、あらかじめ『離れるな』と言ったのかもしれないな。)


四季崎の言葉に込められた優しさに少し嬉しくなりながら彼の隣を歩いていると、いつの間にか街の外れ、切り立った岩壁の麓まで来ていた。


その岩壁には、上にある内海や首都へ向かうためだろうか、街の上へ人や物資を運ぶ巨大な歯車とロープで動く昇降機がいくつも設置されていた。乗り場から見下ろすディーダの街と港の景色もまた絶景だった。


絶景を眺めていると、太陽が真上に近づき、時間はちょうど昼に差し掛かろうとしていた。そろそろ空腹を感じ始めた二人は、昼食を取れる場所を探しながら再び街の中心部へと降りていった。


街を歩く途中、ふとどこからともなく、水晶のように透き通る澄んだ、魂を揺さぶるほど美しい女性の歌声が微かに潮風に乗って聞こえてきた。その不思議な旋律は、聞く者の心の奥深くに直接響くようだった。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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