冤罪の烙印と聖女の偽死 01
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【号外】セントナーレ聖教徒速報 一面詳細記事
【号外】聖女、血に染まる平和!
四季崎是空、世界を導く聖女を白昼の祭祀場で弑逆!
昨日昼間、世界を永劫の平和へと導く我らが希望、聖女が、荘厳なる祭祀場にて、非業の凶刃に倒れられました。凶行に及んだのは、成人の儀の護衛に当たっていた一人、四季崎是空。白昼堂々と聖域を血で汚し、我らの信仰の象徴を冒涜したこの事件は、全聖教徒、否、全世界を深い悲嘆と絶望の淵に突き落としました。
差し込まれた画像には血で染まりきった祭祀場と血の海に横たわる司祭の姿や聖騎士の姿。さらに伊勢らしき女性が横たわっている姿が描かれていた。
【聖なる儀式に差したる凶刃】
昨日行われたのは、多くの若者に前途ある祝福を授ける儀式でした。朝日司祭様は、その清らかな声で新たな聖女の誕生を告げ、多くの若者がその場に立ち会えたことに歓喜しておりました。祭祀場は厳粛な空気に包まれていました。
事件は、儀式の終盤、司祭様が神の言葉を告げ終え、まさに若者たちに神聖なる光を宿さんとされたその瞬間に起こりました。突如、儀式に参加していた四季崎是空が壇上に駆け上がり、その手にした鈍く光る刃物(おそらくは儀式用の短剣か、あるいは護衛として携帯していた剣か)を、無防備な聖女様の御胸に突き立てたのです。
周囲にいた聖職者や衛士たちが駆け寄るも時すでに遅く、聖女様はわずかに呻かれ、その白い祭服は瞬く間に鮮血に染まりました。その御尊顔は、最後の最後まで我らの平和を祈るがごとく、清らかでありながらも、筆舌に尽くしがたい苦悶を浮かべておられたと伝えられます。
その後、聖女の亡骸をかばい無抵抗の聖騎士を惨殺し、取り押さえようとしたギルドの冒険者(かつての仲間か)すら、皆殺しにして最後には司祭を笑いながらいたぶり殺したとされている。
犯人・四季崎是空の素性
凶行に及んだ四季崎是空は、みなの知っての通り四年前に大冠輪廻の儀において不遜を働いた悪名高き異端者である。彼は三年の歳月をかけ、考えたのが今回の蛮行である。今回の事件の中からも、計り知れない恐るべき狂気が感じられ、その深奥は読み取ることはできませんでした。事件後、彼は脅威となる存在を全て殺したのち逃亡。現在、鋭意捜索中である。
犯行の動機については、いまだ謎に包まれています。一部では、彼が最悪の存在である魔王の復活を目論んでいると囁きもありますが、真偽は不明です。しかし、我らの信仰の象徴である聖女様を弑したる罪は、いかなる理由であれ許されるものではありません。
聖女の死がもたらすもの
聖女様が新たに誕生したことは実に数十年ぶりのことであり、その御力と慈悲深き御心によって、長きにわたり世界の混沌を鎮め、我々を平和へと導いてくれたことでしょう。彼女の存在そのものが、世界における希望の光であり、聖教徒たちの拠り所になっていたのでしょう。
今後の展望と聖教徒への呼びかけ
聖教団は、この未曾有の事態に対し、至急の方針を打ち出すべく、緊急の会議を開いております。四季崎是空の処遇については、聖なる法に則り、最も厳格な裁きが下されることは明白です。
全聖教徒よ、今こそ一致団結し、聖女様の御魂に安寧を祈り、この深い悲しみを乗り越えねばなりません。我々は、決して闇に屈することなく、聖女様が目指された平和な世界を、未来へと繋いでいくことを誓いましょう。報は入り次第、続報を速やかにお届けいたします。
現在、霊王が巡礼につき不在のため、カルマティア大聖堂にて霊王代行を務めている枢機卿より緊急のお言葉を頂いております。
「皆様も、新たな聖女になられるお方の霊名を知りたかったと存じ上げますが、若くして散ってしまった聖女への悲しみを鑑み、今回はお伝えを控えさせて頂きます。後日、大罪人の捕縛が叶い次第、新たな聖女になるはずだったその霊名を持って処罰することを約束します」
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四季崎はその記事を見て唖然とした。
(ふざけるな……!何だこの記事は!私が聖女や司祭たちを殺しただと……教会はついにそこまでの愚行を行うようになったのか)
四季崎はイリーネの怒りの理由が分かり、イリーネに渡された情報紙を握りつぶした。彼は怒りの感情がこもった視線をイリーネに向けた。
「イリーネさん、まさか、これを真に受けているわけじゃないですよね?」
四季崎が確認するように質問すると、イリーネは聖女である伊勢が生きていることを知っている私に聞きますかと言わんばかりに呆れたようにため息をついた。
「そんなわけないでしょう。仮に、四季崎さんが犯人でギルドを騙そうとしているのなら、もっといい方法があるでしょう。司祭様の伝言や羊皮紙を明確なものにして伊勢さんも殺害しているでしょうから……」
イリーネは四季崎から情報紙を返すように促し、受け取った情報紙を、くしゃくしゃになった状態を元に戻し、きれいに畳んだ。
「この誤情報には流石のギルド長も黙っているわけにはいかず、カルマティア大聖堂へ通信用魔道具にて、猛抗議をしている最中です。それと、これは発行前の試験印刷されたもので街には広まっていません。ご心配なく。それに四季崎さんはギルドの一員ですからね。守るのもギルドの仕事です」
四季崎を安心させるように、イリーネが答えたが、四季崎の内心は穏やかなものではなかった。
「ですが、教会がここまでの強行に出た以上、この蛮行を長く止めることができません。現場にいた四季崎さんなら知っていると思いますが、ギルドにも被害が出ています。このまま揉め続けると最悪、教会との全面的な闘争に繋がり、それこそ聖魔大戦以来の世界規模の事態に発展しかねません」
ここからが本題とばかりに、姿勢を整えると、しっかりと四季崎を見据えた。
「私の予定が大きく崩されてしまいました。そのため、早急な対処が必要です。早々に身支度をして、一階まで来てください」
足早に立ち去っていくイリーネを見送りながら、四季崎は服を着替えると急いで一階まで降りていった。
私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。




